
お題は、「菜の花と自転車」。菜の花畑の横に置かれた自転車の写真で、どういった俳句が生まれたのだろうか。
結局、日本語が上手くないといけない
まずは、Kis-My-Ft2宮田の句。
ペダル踏み菜花の香りなびく髪
サイクリングをしていて、菜の花と彼女の髪の香りがしてくるという句だ。若者らしくて爽やかだ。しかし、夏井先生いわく菜の花は意外と臭いらしい。そうなると、句自体が成立しないような気もするが、そこはご愛敬。問題点は、平凡な発想といらない部分があるという事だった。凡人、3位、47点。添削後がこちら。
ペダル踏む髪に菜花の香り来る
“来る”と表現することで香りが漂っている映像が明確になった。いらなかった部分というのは、“なびく”というところ。
続いては、名女優・美保純の一句。
春の里母雲見つけし結ぶ靴紐
故郷に帰り母のような雲を見て自分の靴紐がゆるんでいる事に気付く、というストーリーのある一句。しかし、下五はともかく、真ん中七音で収めるところが字余りになっていると、リズムが悪くなると説明。それでも、凡人、2位、50点。春の里、母雲、靴紐の取り合わせが良いという。
靴紐を結ぶ母雲はるの雲
思い切って里を雲に代え、リフレインが気持ち良い句に変身。だが、またしてもいるいらない問題が発生していた。すでに見つけているから母雲を登場している、つまり「見つけし」がいらないとのこと。やはりこの判断が難しい。もう一つ、春ををひらがなしたことには驚いた。
靴紐を結ぶ母雲春の雲
確かに重い。言葉の響きや意味だけでなく、文章としての見た目も大事ということだ。
初めての俳句で、自分を天才かもしれないと自画自賛した新納慎也の句
寒明けの立ちこぎ止める菜の花よ
仕事や学校に向かっているが、菜の花を見て思わず止まってしまう一句。「立ちこぎ」の一言で、春の爽やかさと他に目的地がある事を表現している。しかし、評価は、凡人、4位、45点。理由は、この句だと菜の花につられて止まったのか、立ち塞がれて止まったのかがわからないからだという。
寒明けの立ちこぎ菜の花に止めん
“に”という一文字で、立ちこぎを自分の意志で止めている様子が読み取りやすくなった。夏井先生が「将来性のある凡人」という言葉を残しただけあって、やはり世界観や発想が良かった事が伝わってくる。
いる言葉といらない言葉があり、語順によって読み手に誤解を生じさせる事がある。俳句というと、カッコ良い雰囲気ばかりを想像してしまうが、結局は日本語が上手くないといけないということがわかる回だった。
(沢野奈津夫)