脚本:岡田惠和 演出:黒崎博
2話はこんな話
1964年、茨城県の奥茨城村で生まれ育った高校生・谷田部みね子(有村架純)。高校3年生だから進路を決めなくてはならない。
初回の視聴率は19.5%。
初回が20%を切ったのは久しぶりだそうだが、前作「べっぴんさん」が後半失速していて、その流れを受けてのことなだけ。「ひよっこ」の内容が充実していれば、挽回は可能だろう。
視聴率に一喜一憂するのは民放で、NHKはスポンサーがいないから平気なんじゃないか。
だが、「ひよっこ」昼の再放送のあとに放送される情報生番組「ごごナマ」でゲストの古舘伊知郎が「NHKの民放化」を何度も強調していた。主に番組の編成や作り方に関してで、その論調は肯定的なものだ。
民放化と言われるやり方には視聴率への意識が感じられる。
民放の番組はスポンサーで成り立っているから、視聴率がよければCMを見る人も多い、宣伝になる。だから視聴率を上げなくてはいけないという使命がある。その点、スポンサーがいないNHKは視聴率を気にしないで良いものを作れるという印象があったし、そういうことを言う人も実際いた。
視聴者を釘付けにするために『ひよっこ』も工夫している。
まず、増田明美のナレーションで視聴者に話題を提供する策に出た。
朝ドラには変なおじさんがよく出てきますよね、なんででしょうね
みね子の叔父・小祝宗男(峯田和伸)がバイクに乗って登場すると、増田明美が「朝ドラには変なおじさんがよく出てきますよね、なんででしょうね」と語りかけ、たちまち視聴者は反応。
『べっぴんさん』ではSNSのツッコミ待ちするかのような投げっぱなしの台詞や場面が登場したが、それを意識しているわけではないと制作サイドは言っていたが、『ひよっこ』は、完全にナレーションで話題を先導する意思を見せる。1話のレビューで引用した「ふだんマラソン解説で選手ひとりひとりのエピソードをお話しているような“小ネタ披露風”のナレーション」が2話でさっそく披露された。
それも、なんででしょうね、あとは皆さんで考えて、と正解を出さない塩梅が秀逸である。
みね子だよ(涙声)
お父さん、親友・・・と好きな人が東京に行ってしまい、「私は少し東京が嫌いです」と寂しいみね子。
そんな時、東京の建築現場で事故が起き、地方からの出稼ぎ労働者が亡くなったというニュースが!
さすがにこのヘヴィーなエピソードを次回に引っ張ることはせず、お父さん(沢村一樹)は無事であることがわかってホッとなる。15分の間に盛り上がりが用意されているところが手堅い。そして、そのシークエンスによって、みね子の家には電話がなくて、必要なときは借りに行くという、1964年の田舎の状況が解説されるようにもなっている。さすが、テレビ朝日新人シナリオ大賞の選考委員などもつとめるだけはあるベテラン脚本家・岡田惠和。
それにしても、可愛すぎる、有村架純。「みね子だよ(涙声)」がもうたまりません。
公開中の映画「3月のライオン」で、被ねて大人びた色気も滲む役を演じている俳優と同じとは思えない。
5キロ増量して素朴感を出す、デ・ニーロ・アプローチする女優、かっこ良すぎる。
タヌキ顔で愛嬌がありながら、時々、陰りも見え隠れする有村架純は、たくさんの視聴者を魅了するはず。
(木俣冬)