助詞一文字で意味が変わる
句会の宗匠を務める立川志らくを抑えて、パンサー・尾形貴弘が見事才能アリ、70点、一位を獲得した。
チャイム鳴り駆け出す子らに春一番
小学生の頃、休み時間が一番好きだった尾形が、チャイムと共に校庭に掛けだした子達に向かって春一番が吹き付ける所を想像して詠んだ句だという。すごくわかりやすい、尾形らしい句だ。この句に対して、夏井先生は助詞を1文字だけ変える必要があるかもしれないと語った。
それは「に」という助詞の部分だ。句の本当の意味を考えた時にここが果たして「に」で良いのか、と夏井先生は考える。

チャイム鳴り駆け出す子らや春一番
「や」にすると、子供達に焦点が強まり、春一番が別カットとして登場する。校庭に子供達と春一番が別々に存在している句だ。
チャイム鳴り駆け出す子らへ春一番
こうすると子供達に春一番が向かって春一番が吹いてくる句になる。
3つのパターンと、尾形の解説を踏まえて元の「に」で正しいと、夏井先生は判断した。しかし、ちょっと待って欲しい。「に」と「へ」の違いがよくわからない。
「に」と「へ」の違いをなんとか補足する
そこで少しだけこっちの想像で補足してみる。まずは、尾形が詠んだ「に」という場合。こちらの場合は、校舎から掛けだしてくる子供達に、待ってましたとばかりに春一番が吹き付ける。だが、子供達はそれに負けずに元気に遊ぶ姿を詠んでいるように思える。春一番に意思が見えるのだ。
「へ」の場合。こちらも駆け出す子供に吹き付けるのは同じだが、春一番には意思が見えない。突発的に、もしくは偶然に、校庭全体を含めて子供達の方向へ吹いているだけに見える。ただ吹いた。そんな光景を謳っている句に感じる。
助詞1つで大きく変わることもあれば、微妙な違いしか出ない事もある。
(沢野奈津夫@HEW)