90年代中期、音楽・ゲーム業界は上り調子にあった。新しいものが続々誕生し、ジャンルは多様化、消費も右肩上がりだ。
しかし、ブームを支えるのは若者のみといったイメージが強かった。

しかしそんな中、アラサーやアラフォーの青春時代を呼び起こすコンテンツが続々登場。おっさん、おばさんが歓喜したリバイバル・ブームが巻き起ったのだ。

過去の名盤を安価で復刻!「Q盤キャンペーン」


92年、70年代末から80年代初頭にかけてブームを呼んだゴダイゴのCDの復刻版が発売された。『ガンダーラ』『モンキー・マジック』『銀河鉄道999』など、大ヒット曲満載のベストアルバムだったこともあり、これが20万枚を超える大ヒットを記録。

この人気を受け、94年春には日本レコード協会(当時27社加盟)が、70~80年代のヒット曲を中心にCDを続々と復刻。通常の半額近い価格で販売する「Q盤キャンペーン」をスタートさせた。
「Q」は「Quality Music」の「Q」であり、「旧盤」の「旧」も意味する。

オフコース、大滝詠一、ザ・タイガースなどなど、レコード時代の名盤が格安で手に入るとあって、レコード店離れが進んでいた30~40代の消費者もこぞってCDを買い求める形で大人気となった。

「CD文庫」「CD選書」「音蔵」など、レコード会社ごとにシリーズ名は異なっていたが、そのシリーズの総称が「Q盤」だ。94年末には1,400枚を超えるラインナップが登場し、一大市場を築いている。

名曲が現代アレンジでよみがえったトリビュート盤


94年、アメリカやイギリスでは、アーティストに敬意を表して作成するトリビュート・アルバムの発売が相次いだ。
ボブ・ディラン、ジミ・ヘンドリクス、マイルス・デイビスなどなど、大物アーティストの名曲の数々が複数のミュージシャンによりカバーされ、新たなスタイルでよみがえった。

この動きはすぐに日本にも飛び火し、様々な企画ものが登場している。

キッスのトリビュート盤には、当時のロック界の中心アーティストが集結。結成20周年を記念して自ら企画したとあって、キッス愛にあふれるアレンジの効いた一枚となっている。
カーペンターズのトリビュート盤では、畑違いとなるオルタナティブ・ロック系のアーティストが参加。ジャンルを超えたアーティストだからこその妙味が味わえるのもトリビュート盤ならではの醍醐味だ。

97年には、日本の大物たちのトリビュート盤が数多くリリースされた。60歳を記念した加山雄三、デビュー25周年を記念した西城秀樹、13回忌をしのぶ坂本九など、何かしらテーマが設定されていたのが面白い。

スーパーファミコンで懐かしゲームの移植&リメイクブーム


94年、ゲームの世界にもリバイバル・ブームは到来。ゲーム文化黎明期を支えた名作がいくつも復活している。
当時の主力ゲーム機は任天堂のスーパーファミコン(SFC)。往年の人気アーケードゲームが、SFCのスペックなら完全移植ができること、またプラスして、SFCのスペックを活かしたアレンジでリメイクできたことも大きかったと思われる。

代表となるのは、70年代末に空前のブームを巻き起こした『スペースインベーダー』。テーブル筐体を設置する喫茶店が続出し、ゲームセンターが乱立するほどの社会現象を巻き起こしたシューティングゲームの元祖的存在だ。


94年の復活劇は、発売元タイトーの創立40周年とスペースインベーダーシリーズ15周年アニバーサリーの一貫でもある。
セロファンを使った当時の筐体のカラー表現やバグ技も再現するなど、往年のファンを泣かせる忠実な移植は元より、2人用の対戦プレイモードも加えた仕上がりで、人気を集めている。

また、ナムコはこちらも大ブームとなった『パックマン』をリメイクした『ハロー!パックマン』をリリース。こちらは新機軸を打ち出しており、いわゆる「ドットイートゲーム」ではなくアクションゲームだった。
他にも『リブルラブル』『ギャラクシーウォーズ』『Mr.Do!』などなど、ゲームセンターを賑わせた名作が移植&リメイクされている。

興味を失ってしまった層の購買意欲をかきたてるリバイバルの魅力。青春の日々の思い出はいつまでも色あせないのである。

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