96年、一世を風靡した『テトリス』を模したキーホルダー型の携帯ミニゲーム機がブームとなったのをご記憶だろうか?

ゲーム内容はどう見てもテトリスだが、版権許諾を得た正規品ではない。どうやら、数年前に中国の海賊業者が製造販売していたものが、日本の輸入代理店を通じて流通したものが爆発的に広まったようだ。

一番メジャーなのが『ミニテトリン』。他にも数多くの海賊版が登場している。

多くの中毒者を生み出した空前のテトリスブーム


テトリスの大ブームが始まったのは80年代末。セガのアーケード版が火付け役だ。
続いて登場した任天堂のゲームボーイ(GB)版は携帯できる上に、専用ケーブルでの対戦プレイを可能にし、大ヒットに。GBソフトの中でも歴代1位となる400万本超えのセールスを記録している。

中毒性のあるパズルゲームであり、いわゆる「落ちゲー」の元祖。

「落ちてくるブロックを積み上げる→一列並べると消える→最上段まで積み上がるとゲームオーバー」
シンプルながら完成されたシステムは、数限りないフォロワーを生み出した。また、テトリス自身もルールやモードにアレンジを加えてシリーズ化。ありとあらゆる家庭用ゲーム機に登場し続けている。

『ミニテトリン』はなぜヒットしたのか?


ミニテトリン系のミニゲーム機に共通するのは、単純明快なシンプルさだ。
プレイステーションやセガサターンなど、「次世代ゲーム機」と呼ばれる高性能の家庭用ゲーム機が登場する中、ゲームのグラフィックや表現力は格段に進化を遂げたが、操作性やゲーム内容の複雑さが遊び手を選んでしまっていた。
そんな中、手軽に遊べるスタイルがゲームから遠ざかっていた人々を引き付けたようだ。

もちろん、携帯できる手頃なサイズ感や、千円ほどの値段の安さも受けた。
子どものおねだりにも手が出しやすいこともあり、書店やCDショップ、スーパーなど、様々な店頭で特設コーナーを目にするようになって行く。
最初から入っている電池はすぐ切れてしまうため、ボタン電池「LR44」と一緒に買い求めるのがお約束である。

『たまごっち』のヒットは『ミニテトリン』あってこそ!?


ミニテトリンのブームが沈静化し始めた96年11月、バンダイから画期的な携帯ミニゲーム機が登場する。正しくは「携帯ペット」。そう、『たまごっち』の登場である。
可愛いデザイン、ペットを育てる感覚が女子高生を中心にバカ受けし、瞬く間にブレイク。発売翌年の春ごろまでは品薄状態が続き、その飢餓感がさらなる購買意欲をそそる。
結果、人気が社会現象化したのはご存知の通りだ。

このブレイクの影には、ミニテトリンが携帯ミニゲーム機の市場を切り開いた功績が大きいと思うのだが、どうだろうか……?

類似品の粗製濫造によりブームは終息…


ミニテトリンはその後『テトリン55』に進化している。テトリスタイプのゲームを含む55種類ものシンプルゲームを詰め込んだのだ。もっとも、実質的には4種類のゲームのアレンジばかりなのだが……。

その後、テトリスの著作権を持つ会社からの訴訟を受け、『ピコリン55』に改称。しぶとく販売を続けている。
また、正規ライセンスを受けた『テトリスJr』も別メーカーから登場している。
この頃には、テトリス以外のゲームをモチーフにした同様の類似品も大量に出回ったが、市場は完全に飽和状態。このピコリン55のスマッシュヒットを最後にブームは終息して行った印象だ。

ブーム末期、こういった携帯ミニゲーム機は『UFOキャッチャー』のようなプライズ機やガチャガチャの景品にもあふれかえっていた。ワゴンセールで叩き売られる光景も何度も目にしている。
当時は冷ややかな目線で見送っていたが……今となってはあの時買っておくべきだったなぁ……。


※イメージ画像はamazonよりテトリスJr