毎週木曜19時放送の「プレバト!!」(MBS制作)。先週は特別回、今までに生まれた俳句で二択問題を作り、どちらが才能アリかを特待生のFUJIWARA藤本敏史とフルーツポンチ村上健志が予想するという企画だ。

今夜「プレバト!!」キスマイ対決、横尾と千賀どっちが才能アリ?
イラスト/米光一成

Kis-My-Ft2


まずは、特待生になる前のKis-My-Ft2横尾渉と千賀健永の作品

横尾渉の句

夏帽子夜行列車の網棚に

ひまわり畑で遊び疲れた少年が、お気に入りの麦わら帽子を夜行列車の網棚に置き忘れてしまうという夏の思い出を呼んだ句。

千賀健永の句

海鳴りも凍る夕暮れ雪列車

荒々しい冬の海の海鳴りさえも凍ってしまうほどの寒さであるということを呼んだ作品

これは横尾の句が才能アリ。上五の「夏帽子」という明るくて活動的なイメージから、中七の「夜行列車」という夜の場面への切り替え、そして最後の下五の「網棚に」で、夏帽子をもう一度思い浮かばせる。場面の切り替わりが鮮やかだと、夏井先生は語っていた。最初と最後の夏帽子の映像の印象が違う所が詩的だ。

対する千賀の句も良い句に見えるが、無駄な部分があり凡人査定。「凍る」と「雪」の意味が重なってしまい、損をしているという。さらに「海鳴りも」の「も」も、いらないという。海鳴りが凍っているのなら、ほとんどの物が凍っているのがわかるという理由だ。「も」は「の」にした方が姿がキレイになる。余計な情報が減るからだろう。そして、添削後がこちら。

海鳴りの凍れる夕暮れの列車

こうすれば文句無しの才能アリだと夏井先生は言うが、五七五を崩した破調の型は、いくら千賀でも特待生になる前の時点ではさすがにハードルが高い気がする。


大和田兄弟


先日直接対決をした大和田獏と大和田伸也の作品

大和田獏の句

傷心の旅の車窓にチューリップ

傷心旅行をしている最中に、車窓から見えるチューリップに励まされる光景を詠んだ句だ。

大和田伸也

秋風に七輪の熱幸運び

独り身の年配の男性が、さんまを焼きながら昔を思い出しているところを詠んだ句

才能アリは、大和田獏の句だ。夏井先生は「傷心の旅の車窓」という響きが良いと。しかし、「に」の部分が整える為において感じがして散文臭がすると言う。「の」にすれば、傷心の旅、車窓、チューリップと光景が広がるワンカットの映像になる。「や」にすれば、「傷心の旅の車窓」で区切り、チューリップに移り変わるツーカットの句になるという。大和田獏は、ツーカットが良いと「や」を選択した。

大和田伸也の句は凡人査定だった。夏井先生は「秋風」という物悲しさがあるイメージのあとに「幸」が来るとよくわからなくなると説明。しかし、語順を変えて明確に説明するだけで簡単にクリアしてしまう。

独り身に幸あり秋風の七輪

先に幸せだと説明する事で、「幸」と「秋風」のギャップが上手く活きている。秋風の物悲しさも受け止めた上で幸せを感じることが出来る独り身の懐の広さを感じられるようになった。


この句も破調の型だ。千賀と同じように大和田伸也もこの形を作るのは少々ハードルが高いようだ。しかし、夏井先生はそれでも破調の型を使って添削している。これは「五七五を壊して自由にやれ」というメッセージなのか、それとも単純にそうしないと直せなかったのかはわからない。だが、千賀と大和田伸也が作った二句が可能性に溢れた句だった事に違いはないだろう。

(沢野奈津夫@HEW)
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