
キラキラネームとも、ネットの一部ではDQNネームとも言われる、要するに珍しい名前。
これ、ベトナムでは、二種類あるんです。
どういうことなのか、ベトナム人の友人に聞いてみました。
私 「どういうことなの?」
友人「親が変わった名前を付ける場合がありますよね」
私 「うん、それがいわゆるキラキラネームだよね」
友人「それとは別に、生まれてすぐの頃にあえて汚い名前を付ける慣習があるんです」
私 「汚い名前を…あえて、付ける??」
昔からのベトナムの慣習で、生後100日間は名前を付けず、その代わりに汚い名前で呼ぶ。これによって、悪霊や亡くなった先祖が子どもを気に入って連れ去ることを回避できると考えられているそうだ。ただし最近になると、迷信めいているということで、とくに都市部の方では減ってきているらしい。
私 「汚いと言ってもいろいろあるでしょ、たとえば?」
友人「思いつく限りでいいので言ってみてください」
私 「うーん、『うんこ』『小便』『ブス』…とか」
友人「全部ありますね」
私 「全部あんの!?」
しかしながらこの慣習、2005年からは国の規制によって生後60日間以内に出生届を出すことが国民に義務付けられることになり、それを親が忘れたままその汚い名前が実名になってしまう場合もあるとのこと。
私 「最悪やんそれ」
友人「最悪ですよ」
ここで、実際に存在したニックネームを挙げてみよう。
ベトナムのキラキラネーム(ニックネーム編)
※ベトナム語はアルファベットに声調が付いていますが、表記上省略しています。
・Tun(プッ(オナラの擬音))
・Uc(ブー(豚の鳴き声)
・Cu(フクロウ)
・Nam(きのこ)
・Trau(水牛)
・Duc(オス)
・Cai(メス)
・Den(黒い)
・Tom(エビ)
・Eo(死ぬ)
・Cho(犬)
・Meo(猫)
私 「意味がまばらすぎる、もはや思いつきじゃないのか」
友人「汚ければなんでもいい感じです」
私 「犬や猫もあるけど…」
友人「人によっては汚いという認識なんでしょう」
私 「赤ちゃんに『死ぬ』がすごいな、昔日本でも話題になった『悪魔ちゃん』を思い出すよ」
ベトナムのキラキラネーム(実名編)
私 「実名でもキラキラネームがあるって話してたよね」
友人「ありますよ」
私 「教えて!」
※ベトナム語はアルファベットに声調が付いていますが、表記上省略しています。
・Tran Lua(騙す)
・Le Boi Phan(裏切り)
・Le Truong Han(恨む)
・Nguyen Thi Bo(置き去り)
私 「いきなりすごい重いんだけど」
友人「これは父親に捨てられた人の名前ですね」
私 「母親が付けたってこと?」
友人「そうです」
私 「捨てる父親もヤバイし、名前の由来にネガティブな感情を持ってくる母親もヤバイ」
・Phan Thi Du Lam(「Du Lam」=「超怖い」)
友人「子どもの頃に性格が荒かったので父親が名付けたそうです」
私 「範馬勇次郎かな」
・Mai Phat Sau Nghin Ruoi(明日6,500ドン罰金)
・Vo Xin Thoi(もうやめます)
私 「どういうこと?」
友人「ベトナムでは30年頃前まで食料不足解消のため3人目の子どもに罰金を課していたんですよ」
私 「ほう」
友人「それに恨みを抱いた父親が名前に付けて…」
私 「さっきから恨みを名前に落とし込みすぎだろ!」
・Ro Nan Do(ロナルド(サッカー選手))
友人「ベトナムはサッカーが盛んなので」
私 「これは日本でもギリギリありそう」
・Nguyen Dac Minh Tri Thien Hoang(明治天皇)
私 「なんで?」
友人「日本が好きだったのでは」
私 「チョイスが斜め上すぎるぞ」
・Lo Vi Song(電子レンジ)
私 「なんでだ?」
友人「なんでだ?」
ほかにもこのようなキラキラネームがありました。
・Nguyen Thi Nghia Trang(墓地)
・Ho Han Tinh Doi(恋愛を恨む)
・Phan Ba Dao(覇道)
キラキラネームは世界中に存在している
いかがでしたでしょうか?ベトナムのキラキラネーム!
珍しい実名はこれからいつの時代でも存在していそうですが、昔からあった慣習としてのキラキラネームは、その当時の世相をあらわしているのかもしれません。
以前、農村地方へ取材に行ったときに、家長のお父さんに悩み事を聞いたところ、「家族が病気にならないこと」だと答えてくれました。ベトナムの農村地方では現在もなお、病気や怪我が大敵であり、医療費を払えない場合は生死に関わります。それが一昔前ならもっと、とくに免疫の付いていない生まれたばかりの子どもは死亡率も高かったはず。そういった環境もあって、少しでも死を遠ざけたいという思いから汚い名前…キラキラネームを付けていたのではないでしょうか。あえて汚い名前を付けるという発想から考えると、むしろクソクソネーム(?)とでも呼んだ方が正しいのかもしれませんね。
(ネルソン水嶋)
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