眉を隠す長めの前髪に、サイドのレイヤーを外ハネして後ろに流す、デビュー当時の松田聖子由来の「聖子ちゃんカット」。
80年代アイドルを象徴するヘアとして多くの女性が真似したこの髪型は、2013年のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』で、春子(小泉今日子)の娘時代を演じた有村架純が聖子ちゃんカットを披露するなど、再び脚光を浴びている。


聖子ちゃんカットの生みの親


女の子が誰でも可愛く見える「聖子ちゃんカット」の生みの親として知られるのが『HAIR DIMENSION(ヘアーディメンション)』の創業者でオーナー、飯塚保佑(いいづか やすすけ)氏だ。

『HAIR DIMENSION』は、アメリカで修業した飯塚氏が帰国後に設立した美容室で、青山、四谷、表参道など東京の一等地で美容室を展開し、多くのカリスマ美容師を輩出してきた。飯塚氏はカリスマ美容師ブームの中心的存在となり、『HAIR DIMENSION』には藤原紀香や浜崎あゆみら有名人が通い、予約のとれない美容室としても知られていた。

しかし、約30年の間に“カリスマ”は去り、『HAIR DIMENSION』は店舗統合、閉店で業務を縮小、運営会社である『ヘアーディメンションホールディングス』は今年4月に倒産、破産申請を行った。

カールスモーキー石井がMCを務めたカリスマ美容師対決番組


そもそも“カリスマ”とはギリシャ語の新約聖書の中で使われた言葉で、超人的資質、非日常的資質を有する者を指す。
カリスマ美容師の後には、カリスマ店員、カリスマモデル、カリスマシェフ、カリスマ主婦という言葉が生まれたが、きっかけはやはりカリスマ美容師だろう。当時のカリスマ美容師はタレント並みの人気で、一時は高校生の「なりたい職業」の上位にランクインしていた。

そのカリスマ美容師ブームに火をつけたのが、1999年~2000年にかけてフジテレビ系で放送されていた深夜番組『シザーズリーグ』だ。原宿周辺の人気美容室の美容師が、美容室のプライドをかけ、て1対1で腕を競う対決番組で、いわゆる『料理の鉄人』の美容師版。

司会はカールスモーキー石井(石井竜也)が「石井ビューティー」という名義で務め、青山の美容室『Aqua』の代表の野沢道生氏とともに実況中継しながらDJ風に解説。
一般視聴者をモデルにテーマを決めてカット技術を競い、一般女性の投票数で勝ち負けを決めた。ガチの勝負が面白く、「美の格闘技」と話題になり、深夜番組ながら視聴率も高かった。

カリスマ美容師の無資格問題が発覚


しかし、番組の常連だったカリスマ美容師3名が、美容師免許をもっていなかったことを週刊誌にすっぱ抜かれた。これが問題となり、プロデューサーの解雇にまでつながったのだ。
その後『シザーズリーグ』はリニューアルなどテコ入れを行ったものの、約1年で幕を閉じることとなった。

番組自体はかなりの短命で終わってしまったが、無資格美容師問題や、カリスマ美容師の登場によって、全国の美容師、美容業界全体に多大な影響を与えたのは間違いない。技術向上や意識改革にひと役買った『シザーズリーグ』、聖子ちゃんカットほど流行するヘアスタイルがまた出てくれば、いつか復活するかもしれない。

(佐藤ジェニー)
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