第6週「夏の思い出はメロン色」第44回 5月23日(火)放送より。
脚本:岡田惠和 演出:渡辺哲也

44話はこんな話
海水浴に行くために、各々水着を買う乙女たち。
楽しいはずなのに、みね子(有村架純)は時々、浮かない顔をしていて・・・。
「ごめんなさい」
ちょっと大胆なツーピースを購入する、時子(佐久間由衣)と幸子(小島藤子)。
豊子(藤野涼子)は、水着も堅め。「これが限界ですよわたしの」と。
「人生で1番高い買い物だったかもしれないよ」と澄子(松本穂香)。
紫色のけばけばしいツーピースを買っていた。大丈夫か・・・。
「磐城の父ちゃん赦してくれな」と懺悔する澄子に続き、
みんなそろって「ごめんなさい」と手を合わせる。
なんかもう、水着ごときで、こんなに真面目に考えるなんて、まさに“乙女”である。
時子もみね子も、実家に、お盆に帰れないと手紙を書き、「ごめんね」と添えている。
「あんたらを連れていってやりたいけど自分だけごめんね」という意味だと解釈する美代子(木村佳乃)だが、
大胆な水着で海に行くハレンチな娘でごめんね、という意味も含まれているのかも。
お母さん、あなたの知らないところで、娘は変わっていくのです って感じでしょうか。
「素敵じゃないか、人のいい警察官なんて」
前作「べっぴんさん」のオトコ会も、楽しいアクセントになっていたが、「ひよっこ」では、
巡査の正義(竜星涼)とコーラスの先生・高島雄大(井之脇海)のコンビが面白い。
雄大は、正義に、またもラーメンをおごってもらう。
雄大「前に一度君にはおごってもらったことがあるからね、さすがに二度目は僕の口から言えないなあと思ってな」
正義「なんだよそれ いいよ食おうぜ」
雄大「そうかいいのか」
正義「いいよ」
雄大「コーラスは」
正義「やんない」
前に一度君にはおごってもらったことがあるからね、今日は僕が・・・と言うのかと一瞬思ったが、言うわけなかった。
「なんだよそれ いいよ食おうぜ」「そうかいいのか」「いいよ」で終わらせるとふつう過ぎるが、「コーラスは」「やんない」が加わるだけで、ふたりの世界が膨らむ。←脚本を書きたい人はみならって。
で、また、この後のふたりの会話がいい。
雄大「素敵じゃないか、人のいい警察官なんて」
正義「なにが素敵だよだめなんだ、それじゃ。警察官がみんなそんなだったら成り立たないだろ社会は」
雄大「そうだろうか」
正義「・・・」
雄大「なんでだまってるんだ」
正義「言い返すといやな感じになって、せっかくこうやって話せるようになったのに、できなくなるからな」
雄大「いいやつだな。話題を変えよう」
ものすごく矛盾をはらんだ社会のなかで、対立するはずのふたりが、折り合いをつけて並んでラーメンを食べている。なかなかないことで、これもまた、祈りだと思う。
正義という名前だけど、あまり優秀な警察官じゃない、正義と、
雄大という名前なのに、おごってもらってばかりのせこい雄大、という、2人が名前に見合ってない未熟な人物であることも効いている。水着も青春だが、これもまた、青春。
「お姉さんとしては」
みね子がちょっと楽しむことに罪悪感をもってることに気づいた時子は、心配する。
「それじゃ恋もできない」と。
「ちょっと心配なの、お姉さんとしては」と時子。
「誰がお姉さんだ」とみね子。
こうして、みね子はやっと少し楽になる。
それから、茨城から手紙が来て、みね子と乙女寮の仲間たちが、水着で海にいる絵が描いてあって、
みね子の気持ちはさらに晴れる。
同じ部屋のお友達の特徴を茨城宛の手紙に書いていたのだろうか。微妙に似ていて、微笑ましい。
さて、岡田惠和のヒット作「ビーチボーイズ」(97年)のような、開放的な海のシーンはあるのか!
正義と雄大でビーチボーイズになってたら笑う。
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