この時のミスチルといえば、前年の1996年に『名もなき詩』がオリコン年間チャート1位(230万枚)を獲得するなど、破竹の快進撃を続けていた時期。そんな絶頂期ともいえるタイミングで、まさかの休業宣言。ミスチル並びにJポップファンは大いにざわつきました。
そんなMr.Childrenが休業に入った直後、彗星の如く登場したのが、『MOON CHILD』でした。同じ4人編成で、名前まで何となく似ていて、おまけにミスチルの元サポートメンバー・浦清英がプロデュースを手掛けていたこともあり、当時は“ポスト・ミスチル”の名を欲しいままにしていました。
1996年にデビューしたMOON CHILD
MOON CHILDは、1995年に、佐々木収(ボーカル&ギター)、渡邊崇尉(ベース)、樫山圭(ドラム)の3ピースバンドとして誕生。下北沢を拠点にライブ活動を続ける中で、avex traxからスカウトされ、1996年にメジャーデビュー。同年、秋山浩徳(ギター)が加入し、以降は4人体制で活動を展開していきます。
彼らを語るうえで欠かせないヒット曲といえば、『ESCAPE』をおいて他にありません。同曲は、日本テレビ系の土曜9時に放送されていたドラマ『FiVE』(ファイブ)の主題歌に起用されたことで、一躍脚光を浴びました。
ドラマ『FiVE』のダークな雰囲気にハマってた『ESCAPE』
『FiVE』は、何かしらの問題を抱えるアウトローな少女たちが、犯罪組織との戦いに巻き込まれていくというサスペンステイストの作品。ともさかりえ、鈴木紗理奈、篠原ともえ、遠藤久美子、知念里奈、榎本加奈子など、当時人気の若手女優を多数起用していたことでも知られています。
同作は全体的にダークな雰囲気を醸しており、その作風に『ESCAPE』はベストマッチ。暗闇を走り抜けるかのような疾走感あふれるメロディーライン、色気とカッコよさを併せ持ったボーカル、メッセージ性はないものの「裸の太陽」「綱渡りのevery day」などキャッチ―なフレーズだらけの歌詞……。
今聴いてもまったく古臭さを感じさせない、名曲中の名曲です。
『ESCAPE』が売り上げ60万枚の大ヒット
こうした楽曲そのものの魅力もあり、じわじわと人気を博していった『ESCAPE』は、オリコンシングルチャート登場3週目にして1位を獲得。最終的には売り上げ60万枚という、MOON CHILD最大のヒット曲となったのでした。
この『ESCAPE』以降も、花王『サクセス育毛トニック』のCMソングに起用された『アネモネ』(オリコン最高13位)、サッポロビール『冬物語』のCMソングだった『Hallelujah in the snow』(オリコン最高16位)などをリリース。ヒットチャート的にはゆるやかに下降線を辿りながらも、まだまだ活動を続けていくものだろうと思われたのですが、しかし……。
解散原因は、佐々木の負担が大きすぎたため?
1999年1月に11枚目のシングル『STAR TOURS』をもって、MOON CHILDは解散してしまいました。
当時解散理由は「すべてをやりきったから」とされていましたが、作詞・作曲担当だった佐々木が後に語ったところによると、どうやら、ストイックに曲作りへ励む彼と他のメンバーとの間には温度差があり、それが別々の道を歩む一番の原因だったようです。
結局、“本家”ミスチルにとって代わるほどの活躍はできなかったMOON CHILD。しかし、彼らの楽曲、特に『ESCAPE』の素晴らしさは、この先も色あせることはないでしょう。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonよりESCAPE