ルールはいたってシンプル。ホストや元暴走族総長といった腕自慢の素人4人が、1人ずつ亀田とボクシングルールで対戦し、勝利すれば賞金1000万円をGETできるというもの。
結果は、大方の予想通り亀田の全勝。しかし企画中、2試合目終了時に「もうしんどいです。帰ってええですか?」と冗談めかしていうなど、弱気な一面も。気づけば今年で31歳と、ずいぶん年を取りました。
今から10年ほど前、挑発的なパフォーマンスで世間の顰蹙を買っていた時代が懐かしく感じます。
人を食った態度だった現役時代の亀田興毅
現役時代の亀田といえば、傲慢不遜で生意気そのものでした。対戦相手を露骨に威嚇したり、あからさまに小馬鹿にしたりと、やりたい放題。
もし圧倒的な強さを兼ね備え、強敵たちを次々とマットに沈める絶対王者だったら、誰も文句はいえなかったことでしょう。けれどもそうではなく、タイトル戦は判定勝ちばかりだったことなどもあり、賛否両論を巻き起こしていました。
物議を醸したランダエタ戦での「疑惑の判定」
とりわけ、非難が殺到したのは、2006年8月2日のWBA世界ライトフライ級王座をかけたファン・ランダエタ(ベネズエラ)戦。
亀田は初回にダウンを奪われ、終始劣勢を強いられながらも、なぜか2-1で判定勝ち。
この一連の騒動で矢面に立たされたのは、興毅のトレーナーを務めていた、亀田三兄弟の父親・亀田史郎氏。
ランダエタ戦の後に度々メディアの前に姿を現すようになるのですが、そんな折に実現したのが、かねてより“アンチ亀田”を公言していた漫画家・やくみつるとの討論……というよりも口喧嘩でした。
やくみつるが挑発! 亀田史郎が「オモテでやろか?」と激怒
戦いの舞台となったのは、2006年8月7日に生放送された情報番組『スーパーモーニング』(テレビ朝日系)。生出演した両名のうち、先制攻撃を仕掛けたのはやくみつるでした。
やくは突然「みやげがあるんだ、今日は」と言い出し、おもむろに懐から『金亀印のしつけ糸』を取り出します。そして「これで、亀(興毅のこと)縛っとき」と一言。
このときのやくの恰好は、サングラスに胸のはだけたシャツ、派手なネックレスという出で立ち。「腹立つやろ? アンタの倅はこれと同じことやっとるんや!」「俺はそれを見せつけるためにこういう恰好してるんや!」と、東京生まれ東京育ちなのに関西弁でまくしたてます。
さらには「(興毅の試合を指して)やっすいドラマはいらん!」「ワシャ、今日、オッサン(史郎氏)の教育に来とるんや!」などと、やくの口撃は止まりません。
これに、史郎氏は当然のごとく激怒。「戦うんか俺と!」「あとでオモテで、きっちり話したるわ!」と激怒します。結局、最後までかみ合わないまま、両者のやり取りは終了しました。
常識人・ガッツ石松が“漁夫の利”を得る形に
この討論において、唯一勝者がいるとすれば、このバトルに同席していたガッツ石松をおいて他にいません。
やくの出過ぎたパフォーマンスを「この場でやるべきではない」と冷静にいさめつつ、感情的になる史郎氏へ論理的な切り返しを連発するという、普段のバカキャラが嘘のような常識人としての一面を披露して見せたのです。
まさに、漁夫の利。やくと史郎氏のバトルによって、ガッツの評価が高まるとは……。番組の担当者も視聴者も、誰も予想していなかったに違いありません。
(こじへい)
※文中の画像はamazonより亀田興毅 天下無双―その軌跡と生き様