昨年の連続ドラマでは、いろんなことにぶつかって悩んで、成長したんだかしてないんだかわからぬまま、でも視聴者には爽快な気持ちを残して終わった坂間正和(岡田将生)、山路一豊(松阪桃李)、道上まりぶ(柳楽優弥)の三人、「ゆとり第一世代」の面々。

イラスト/小西りえこ
ゆとりVSさとり、勃発?
正和は会社を辞め、兄とともに家業の坂間酒造を継ぐも、経営は厳しい。そんななか、酒蔵の土地にモノレール延伸計画が持ち上がった。莫大な立退料に目がくらむ家族に一人反対し、酒蔵を守ろうとする正和。とはいえ先行き不安で、人材派遣会社にも相談している。
派遣会社の営業、富田はマニュアル通りの感情のこもっていない笑顔を貼り付けながらも、自分はさとり世代だと語る。「(正和は)会社の利益より、個人のスキルアップを優先する世代ですよね?」「そういう失敗例を見て、悟った世代なんです」とばっさり。
この派遣会社営業・富田を演じるのがここ最近の宮藤作品のミューズとも言える清野菜名だ。映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」では地獄の住人として派手なメイクでベースをかき鳴らし、昨年の舞台「サンバイザー兄弟」では桁外れにバカな娘を演じた。宮藤作品には必ず愛すべきバカが登場するが、今回の清野もバカゆえにずばずばと正和の痛いところを突いてゆく。
三人それぞれの行き詰まり
酒蔵の存続をめぐって窮地に追い込まれている正和だが、妻・茜ちゃん(安藤サクラ)との関係も、決してよくない。というか、正和が茜ちゃんの誕生日も忘れ、妊娠したのにもまったく気づかないという体たらく。そりゃ茜ちゃんも怒るよ! 1年ぶりに居酒屋「鳥の民」で再会した友だち、山路に「(茜が結婚して入ったのが)家庭って思ってるのは坂間君だけだよ。茜ちゃんにとっては社会だ」とまったくの正論で指摘されるが、ほんと、ここまでの正和はぜんぜんダメな男なのだ。
しかしそんな山路も、学年主任に昇格するも年上の教師に反発されるなど中間管理職ならではの悩みにぶち当たり、かつて想いを寄せていた教育実習生の悦子(吉岡里帆)にはのらりくらりと誘いをかわされ、行き詰まっている。
ちなみに本放送から1年、人気と知名度をもっとも伸ばしたのは、間違いなく吉岡里帆だろう。「カルテット」(TBS)では人々を手玉にとる女を好演し注目を浴びたが、そういえば「ゆとり」でもつかみどころなく、山路を翻弄し続けていた。前編での登場は(多忙ゆえか)わずか1シーンだったが、その翻弄っぷりも心なしか1年前より堂に入っているように見える。
11浪して大学に入ったまりぶは、本編でさんざん正和を追い詰めたゆとりモンスター・山岸(太賀)のもとをOB訪問で訪れる。相変わらず口先だけの山岸をやりこめるまりぶ。彼だけはブレずに人生を歩んでいるようだ。しかし「バイト代より延長保育代のほうが高いヨ、日本死ね!」と叫ぶ妻・ユカには勝てそうにない。
「タイガータイガーじれっタイガー」な展開となるか? 蒼井優登場
それぞれに忙しく、1年会っていなかった3人のゆとり。久々の再会から間もなく、一豊が学校をやめたらしいとまりぶからの連絡を受け、「社会に出たことないくせにえらそうなこと言うな」と一豊に暴言を吐いていた正和はショックを受ける。一豊は故郷・福島県郡山に帰っていた。そこで同級生の久美(蒼井優)と再会する……。映画「フラガール」以来の蒼井の福島弁が少しうれしい。
さて、「タイガー&ドラゴン」から12年ぶりの宮藤作品参加となる蒼井がどんな活躍を見せるのか、まったく成長していない3人はいったいどうなるのか。本日22時30分、「ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編」後編!
(釣木文恵)
後編レビューへ