第14週「俺は笑って生きてっとう!」第84回 7月8日(土)放送より。
脚本:岡田惠和 演出:川上剛

84話はこんな話
日曜日、すずふり亭に、乙女寮のみんなが遊びに来ることになった。
久しぶりの再会に胸いっぱいになる乙女たち。
そこへ、突如、女優の川本世津子(菅野美穂)が入って来て・・・。
女の大河ドラマ化
まずは、83話で途中まで語られた、すずふり亭のある場所が、縁起のいい場所であるという説明を、すずふり亭の人たちに似ているのか似てないのか微妙なイラストで、しっかり紹介。
戦国時代、本能寺の変が起こり、政情が一変したとき、徳川家康が身を守るために、京都から三河へ、いわゆる“伊賀越え”して戻った途中、助けてもらったことに由来するという。
伊賀越え(神君伊賀越え)といえば、昨年の大河ドラマ「真田丸」で描かれたものが秀逸で、未だ記憶に鮮やかに残っているが、イラストには、今放送中の大河ドラマ「おんな城主 直虎」の直虎ふうの増田明美が描かれた。「直虎」の曲もかかった。
直虎が、井伊家を守るために、養子にした直政が、のちに、この伊賀越えで活躍する。その日が楽しみですね。
商店街からすずふり亭の中庭に続く路地裏にひっそりとある“すずふり稲荷”は、実際、赤坂にあって、そこは赤坂すずふり横丁という場所。TBS のそばである。
ちなみに、岡田惠和ドラマには、神社がよく出てくる。
朝ドラ「ちゅらさん」(01年)にも「おひさま」(11年)にも、登場人物の生活圏内に鳥居や祠や、ついでに言うと道祖神などが出てくる。
「最後から二番目の恋」(12年)にも、主人公の家と駅の間に神社がある。峯田和伸が主人公だった「奇跡の人」にも。
現実世界でも、街には神社が意外とたくさんある。そして、人は、なんとなく、おりにつけ、ふらっと立ち寄り、手を合わせてしまうものなのだ。
早苗のヤキモチ
お食事会のことが楽しみで、みね子は、漫画家君ふたりや島谷や早苗に、耳にタコができるくらい、何度もその話をして聞かせていた。
早苗は9回、聞いたといい、島谷は10回と言う。それが悔しいのか(悔しくはないと言ってるが)早苗の焼いている餅が膨れる。
当初、早苗と島谷が意外とお似合いと思っていたが、あっさり、みね子と島谷がいい感じになってしまった。
早苗は、島谷よりみね子のほうが気になるみたいだ。
ナレーションが説明しすぎじゃないか
元マラソン選手の増田明美が、視聴者に向けて親しみをこめて状況を解説してくれるのが、初回から楽しかったが、服を選んでるみね子(有村架純)に「まさかデート?」、言葉数少なくいつも意味深な表情をしている島谷(竹内涼真)に「あ、島谷くん、君はいつ、みね子に告白するのかなあ」などと、84話はとりわけ全力でツッコんでいた。
こういう演出は、Twitterに書き込むひまあったら、テレビに集中してほしいという制作サイドの思いの表れのような気もしてしまう。
実際、筆者は、書きこんでいる間に見逃していることだってあるはずと言うスタッフの声(朝ドラでもNHKでもない。念のため)を聞いたことがあり、確かにそれも一理あると思っている。ただ、本当に面白いものは、自然に手が停まって、画面に見入ってしまうものでもあるとも思っている。
乙女寮の仲間たちとの再会
旧友たちとの再会は、省吾(佐々木蔵之介)のはからいで、一人前でない元治(やついいちろう)とヒデ(磯村勇斗)が、練習として料理を作ることで、無料でお食事をさせてもらえることになった。
相変わらず、みね子のまわりは優しい行為に満ちている。
岡田の朝ドラ第一作「ちゅらさん」も、家族や隣人を愛するのは当然というふうな、善意に満ちた世界が描かれていたが、ヒロインに、お母さんが「あなたは運がいいんだよ いい人ばっかりに巡り会えて」と、けっこう厳しい言い方で、自覚を促すこともあった。だが、「ひよっこ」にはそういうこともない。
そろそろ、恵まれてきた反動が来てもおかしくない気もするが、15週も、恋のエピソードらしく、ヒロインの幸運はまだまだ続くのだろうか。すずふり稲荷様、どうかお守りくださいね。
(木俣冬)