テレビで見なくなった状況がしばらく続いただけで、死亡説が流れた有名人は数多い。

ネット環境が一般化していなかった90年代、「テレビに出ない=消えた存在=もしかして死んでる?」の飛躍した発想は、今以上にまかり通っていたのは事実である。

理不尽にも一度は「死んでしまった」有名人たち。あなたはこれらの死亡説を耳にしたことがあるだろうか?

志村けん、北関東で死す!?


もっとも有名な例は、志村けんで異論はないだろう。死亡説が世間を騒がせたのは96年秋頃になる。

「群馬県のゴルフ場で急性心筋梗塞を起こし急死」
「尾瀬を観光中に尾瀬沼に落ちて溺死」
「煙草の吸い過ぎが原因の肺ガンにより栃木県のがんセンターで死亡」
「栃木県の国道で交通事故死」


バリエーション豊富な死亡説は妙に具体的な内容ばかりで、信じてしまう方は多かった。
どうやら、北関東在住の同姓同名の「志村けん」と言う方の訃報が志村本人と混同されたのが発端のようだ。そもそも、志村の本名は「康徳」なのだが……。

この時期、ゴールデンタイムのレギュラー番組がすべて終了し、看板番組は深夜枠に移動。
他の番組へのゲスト出演もなく、世間的には「終わった感」を持たれてしまっていた志村。
露出が激減したことから「落ちぶれたことを悔やんでの自殺」といった内容の噂が出始め、そこに同姓同名の方の死亡が重なり、本人が死んだことにされてしまったようだ。

志村がインタビューで健在をアピールしたことで騒動は沈静化。その後はバラエティで自らの死亡説をネタにして、見事に笑いに変えているからさすがである。

自身の死亡説を皮肉った槇原敬之


歌手の槇原敬之も96年頃に死亡説が流れている。前年に喉のポリープで入院し、目立った活動がなかったことから生まれたようだ。

マッキーは、この説を皮肉る意味合いを込めて「まだ生きてるよ」と言うシングルをリリース。
ジャケットもスポーツ新聞の見出し風になっており、「槇原敬之 生還」の文字がタイトルよりも大きくデザインされていた。実にシャレの効いたアンサーである。

意外とリアルな死亡説だった!? 久保田利伸


同じく98年頃に死亡説が流れたのが、歌手の久保田利伸。ニューヨークを拠点にし、日本のメディアから露出が減ったことがきっかけのようだ。

広まったのは、ギャングの抗争に巻き込まれて射殺されたという噂。
当時、ヒップホップアーティストの2pacやノトーリアス・B.I.G.が立て続けに射殺されており、それらのショッキングな事件が噂の背景にあったと思われる。ありえない話じゃないのが怖い……。


子どもならではのユニークな死因が飛び交ったチョーさん


現在、Eテレ『いないいないばぁっ!』の「ワンワンの中の人」(記事はこちら)や、アニメ『ワンピース』のブルック役で活躍中のチョーさん。
大人気だった子ども向け番組『たんけんぼくのまち』終了後には、やはり死亡説がささやかれている。

「収録の時に崖の上を自転車で走っていたところ、運転を誤って海に転落して死亡」
「マンホールを探検していて行方不明に」
「甲冑を着て自転車に乗っていたら滝つぼに落ちて溺死」


『たんけんぼくのまち』での役柄のイメージそのまま。おっちょこちょいな死因ばかりだ。
2009年放送の復刻『たんけんぼくのまち』では、この噂を吹き飛ばすように「やあ!チョーさんは生きてるよ!」と元気に挨拶。成長した元ちびっ子たちを安心させている。

高橋名人は逮捕→死亡のコンボ!


ファミコンブームで一世を風靡した高橋名人も死亡説が流れた一人。

まず広がったのが逮捕説。一日警察署長を務めたところ、「高橋名人が警察に行ったこと」だけが広く拡散され、それが「なぜ警察に?」→「悪いことをしたからだ」→「逮捕されるの?」→「逮捕された!」と連想ゲームのごとく悪い方向に変化してしまったようだ。子どもの想像力ってたくましい!

「16連射のためにコントローラーにバネを仕込んだことによる詐欺罪」
「16連射のために腕に電極を仕込んだことによる詐欺罪」
「握手で子どもの手を握りつぶしたことによる傷害罪」
「脱税」


ファンタジーからリアルまで幅広い悪事の妄想が並んだが、中には「16連射のために非合法な薬物を使っていた」なんて噂も登場。その噂がさらに変化し、薬物中毒で死亡にまでたどり着いてしまったようだ。
また、「連射のしすぎでコントローラーが爆発して死んだ」なんてトンデモ説もあったが、意外と中国辺りで本当にありそうで怖い……。

今回紹介したみなさんはもちろん健在!
高橋名人の逮捕&死亡説は未だに信じている方がいたりするので、名人直撃世代としては今回の記事で誤解が解ければ幸いです!

※文中の画像はamazonより志村流―金・ビジネス・人生の成功哲学