
オ~~ガ!!!!!(挨拶) ニュースサイト『スマダン』の「“現代女性に愛される”スマートな男性になるための情報を発信」というコンセプトを聞いたとき、私は「つまり、『刃牙』シリーズの話をする媒体ってことか!」と理解しました。間違ってませんよね? 『グラップラー刃牙』、『バキ』、『範馬刃牙』、『刃牙道』と続く、板垣恵介による格闘漫画シリーズ。
死んだら棺桶に『刃牙』シリーズを入れてほしいと思っている私ですが(既刊100巻を超えるので死体がへし折れそう)、このごろ心を痛めているのです。なぜなら、インターネットでは『刃牙』シリーズがすっかりネタ扱いされているから。毎週『週刊少年チャンピオン』に最新話が掲載されるたびに一部のシーンがまとめブログなどで茶化されているのを見て、「なんだか『刃牙』は“ネタ枠”になってしまったらしい」と見切りをつけて読むのを止めてしまったという人も多いのではないでしょうか。嘆かわしい。確かに名勝負として取り上げられるのは、『グラップラー刃牙』、『バキ』までの闘いばかり……。
そんな人のために『範馬刃牙』、『刃牙道』での名試合をご紹介します。『刃牙』シリーズは変わらず熱いんだぞ!
愚地克巳vsピクル(『範馬刃牙』より)
“空手界の最終兵器”と呼ばれながらも、かませ犬的なイメージが強い克巳が、ピクルとの死闘で見事に名誉挽回してみせました。ピクルとの闘いを前に、克巳は、「俺でいいのか?」と葛藤し続けます。それでも周囲の助けを借りて、ついに奥義が完成。「俺でいい」と己の存在を肯定できるようになった彼は、地下闘技場へと向かう――。愚地克巳vsピクルとは、克己の成長物語なのです。
考えてみれば、『刃牙』の登場人物たちはあまり成長しません。
範馬刃牙vs範馬勇次郎(『範馬刃牙』より)
ついに史上最強の親子喧嘩が実現。『範馬刃牙』から作者・板垣恵介の“よくわからないけど、とりあえずスゴそうなことを言う”作風が先鋭化していきましたが、物語のテーマとなる闘いだけあって、勇次郎の父親・勇一郎が出てきたり、父子がエア味噌汁を囲んだりと無茶苦茶の連発。『範馬刃牙』以降のシリーズを楽しめるかどうかには、板垣恵介の繰り出すこういったハッタリがハマるかどうかというところが大きい気がします。
ところで、これまでシリーズを読んでいて「刃牙が強すぎて萎える」と感じる読者も多かったことでしょう。他の登場人物たちが足や腕まで失って敗北した強敵相手に、刃牙は美味しいところをさらってしまうんですから。私もまた「主人公補正もいい加減にしてくれ」とモヤモヤを感じていたのですが、範馬刃牙vs範馬勇次郎では、最強ゆえの孤独や退屈も描かれました。“勝ってしまう”というのも、また範馬の血の呪いなのかも。今までのモヤモヤが、刃牙への同情へ変わった瞬間です。
本部以蔵vs宮本武蔵(『刃牙道』より)
本部といえば、強キャラ然とした佇まいのわりに、最大トーナメントで早々に力士に負けて「お前はなんだったの?」と読者全員を呆れさせたオヤジ。そんな彼が突然「俺が守護らねばならぬ」と言い出して、勇次郎さえもしのぎそうな実力の持ち主である宮本武蔵に挑んだのだから、ネット上では猛烈にネタ扱いされました。
しかし、プロレス好きなだけあって、板垣恵介という作家は、闘いの“テーマ”を決めるのがバツグンに上手い! 武器の扱いに長けた本部は、現代で唯一、武蔵の生きた戦国時代に使用された“殺してOKな闘い方”に精通した人物と言えましょう。
ところで、『範馬刃牙』で史上最強の親子喧嘩が決着してしまったせいで、今の『刃牙道』は物語のゴールが明確に提示されないまま進んでいます。自分は勝手に、刃牙が「己のワガママを押し通す力」以外の強さの在り方を学ぶ展開になるのではないかと予想しています。そのための“守護キャラ”本部の登場だったのでは……? 武蔵の孤独も示されたわけですし。刃牙が、父親とは異なる強さの捉え方をできるようになるまでの物語になるのではないでしょうか。
『刃牙』から学ぶ、男子のモテテクニック♪
……「女性ライターが『刃牙』の話をするのは面白いんじゃないか」という話になったため今回『刃牙』の話をしてみましたが、これで正解なのか不安になってきています。本当に私が『刃牙』の話をしているだけでいいのか……?
最後に女性ライターらしく、「『刃牙』から学ぶ、男子のモテテクニック♪」みたいな話をしたいと思います。花山薫も刃牙もおこなっていたことから、どうやら『刃牙』世界で一番ロマンチックな行為は、「凄まじい握力で花束を握りつぶし、生絞りの香水を作る。そして、その香りがついた手のひらで相手の頬を包み込む」のようです。これを意中の相手に実践すれば、確実にモテるはず。モテるために、握力計で計れないほどの握力を身に付けような!
(原田イチボ@HEW)