連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第17週「運命のひと」第98回 7月25日(火)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:黒崎 博
「ひよっこ」98話。誕生日に失恋、みね子のハッピーエンドはどこに
イラスト/小西りえこ

連続朝ドラレビュー 「ひよっこ」98話はこんな話


みね子(有村架純)は、失恋した日に20歳の誕生日を迎え、初めてお酒を飲んだ。

「いつかハッピーエンドになればいいでしょ」


恋なのか、よくわからない気持ちは、クリームソーダで(第6週「夏の思い出はメロン色」)。
はじめての恋の終わりは、涙の味のマルガリータで。


「みね子の恋、終わったようですね」とナレーション(増田明美)が言ったあと、共同炊事場で早苗(シシド・カフカ)が、「はいはいはい、終わった(洗面が)」と言う重なりが面白悲しい。

みね子の恋の終わりは、時子(「この子は私が守る」ってかっけー!)によって、さっそくみんなに報告される。
その時のリアクションは人それぞれで。
がっかりする新田と坪内(岡山天音、浅香航大)、立ち聞きしながら「そういう終わりか つまんない」と言う富(白石加代子)。
早苗の場合は、「たかが恋がひとつ終わったくらいで 人生に決着がつくわけじゃないだろう」「いつかハッピーエンドになればいいでしょ」と自分にも言い聞かせるように、名言を吐く。
これには、65話では省吾(佐々木蔵之介)が「人間はやられっぱなしでは生きていられないんだよ」と言っていたことを思い出した。

これはいわゆる「禍福は糾える縄の如し」


当のみね子は、悲しみを引きずらない(ように努めている)。
恋の終わりをどう報告しようか逡巡しているところを、すずふり亭のみんなが見ている場面は、コントと言うか演劇と言うか・・・。
そこへ、高子(佐藤仁美)が、奥茨城の角谷太郎(尾上寛之)の元へ嫁に行くことに決まったと、すずふり亭のみんなに電撃報告。
みね子はすかさず、すっかり盛り上がったところに紛れるようにして、恋の終わりを報告する。
「泣くのはいやだ、笑っちゃおう」精神がすっかり根付いてしまっているみね子に、鈴子(宮本信子)は「いいよ そんなに強くならなくても」と、どこまでも優しい。

結婚という吉事と、恋の終わりという凶事が、同時に起こって、まさに“禍福は糾える縄の如し”という有名な言葉のような世界が繰り広げられた。

岡田惠和は、喜びも悲しみも等価に、すずふり亭の店内に並べて見せる。
「いつかハッピーエンドになればいいでしょ」「人間はやられっぱなしでは生きていられないんだよ」という台詞も合わせて、人間が多面体であるのと同じく、出来事も多面体で、良いとか悪いとか簡単に決められない。

高子は、奥茨城にも挨拶に行き(いつの間に! 店が休みの日に行ったのか!)、米屋で出稼ぎしている三男(泉澤祐希)の元にも、ひとりで挨拶に行き、さおり(伊藤沙莉)との結婚を勝手に許してしまう。
ああ、このまま、三男は、米屋の婿になってしまうのか。「ちょっと待ってくださいよ おかしいでしょう もうなにこれ〜」と悲鳴をあげるが、これだって、悪いことばかりじゃないかもしれない。

さて。ここで、にわかに浮上してきたのが、ヒデ(磯村勇斗)の存在だ。
98話の終わりの彼は、なんだか機嫌が良さそうに見える。みね子の恋の終わりの話を聞いたとき、目がかすかに揺らぐ瞬間、カットが切り替わってしまい、表情がわからなくなったが、その目がちょっと動いたところに、ヒデの想いを想像すると、楽しい。

みね子のハッピーエンドはどこにあるのだろうか。
(木俣冬)
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