そんな邦楽ポップス界の流行の波にあらがうことなく、爆発的にブームとなった音楽があったのをご存じだろうか。
いまでは誰もが知っている、あの曲の元祖とは?
当時、スウェディッシュポップの広がりは世界的にもブームになっていたが、日本で流行したきっかけといえば、やはり1995年に発売されたThe Cardigans(カーディガンズ) の「LIFE」というアルバムに収められた「Carnival」という曲だろう。
切なく囁くようなガールボイスと軽快なバンドサウンドは、当時の音楽好きならずとも、オシャレ女子やファッション好きな者ならば、石を投げれば聴いている者にあたるほど、と言えるレベルのブームだった。
The Cardigansは翌年にも「♪ラブミ~、ラブミ~」というフレーズで有名な 「Lovefool」 という名曲をリリース。こちらも映画「ロミオ+ジュリエット」で使用されるなど世界的なヒットを果たす。
この時期に巻き起こったスウェディッシュポップの流れは、もちろんその後の日本のポップスにも波及していった。
The Cardigansや同じスウェーデンのバンドCloudberry Jam(クラウドベリージャム) などの音楽プロデューサーとして一躍有名となった人物、スウェーデン在住のトーレ・ヨハンソンは日本でも知名度を上げ、数々の日本人アーティストをプロデュースしている。
トーレ・ヨハンソンが手がけた日本人アーティスト
トーレ・ヨハンソンのプロデュースによって人気を広めたアーティストで真っ先に思い浮かぶのは、BONNIE PINK(当時Bonnie Pink) かもしれない。
まだ無名のアーティストだった彼女をスウェーデンのスタジオに呼び寄せ、アルバム制作をおこない、真っ赤な髪のビジュアルイメージと共に登場したことで話題になったのは有名だ。パンチのあるボーカルとビジュアルで、BONNIE PINKは一気に人気を広めた。
また、記憶に残るのは、歌手・原田知世のプロデュースだろう。
原田知世といえば、デビュー時代に歌った「時をかける少女」などのイメージが強かったが、ウィスパーボイスがトーレヨハンソンの北欧サウンドにマッチしたこともあって、リリースした曲「ロマンス」は大ヒット。彼女の歌手活動の転機にもなったと言える。
最近では、その原田知世がこの「ロマンス」を自身のデビュー35周年の記念にセルフカバーとしてリリースしたことがニュースになった。
その他にも、トーレ・ヨハンソンはプロデューサーとして、つじあやの、レミオロメン、Le Couple、カジヒデキなどの日本人アーティストにも次々と関わっている。
現在では、確立されたひとつの音楽ジャンルとして呼ばれるようになった「北欧サウンド」というジャンルだが、当時は北欧スウェーデンからの緩やかでどことなく新しい雰囲気の音楽で、みな心躍らせて聴いていたポップスだった。
振り返ってみると、90年代のファッションブームととても相性が良かったと思われる面もあり、流行るべくして流行ったのかもしれない。当時の懐かしい楽曲を今聴き直してみると、また違った新しさを感じることができそうだ。
(空町餡子)
※文中の画像はamazonよりHeaven's Kitchen[UHQCD]