本日放送の『24時間テレビ 愛は地球を救う』。注目はマラソンランナーの発表……ではなく、夜9時頃から放送されるドラマスペシャル『時代をつくった男 阿久悠物語』だ。
その生涯で5000作に及ぶ歌をのこした稀代の作詞家・阿久悠を亀梨和也が演じる。

『24時間ドラマ』のドラマスペシャルといえば、難病や障害を抱えた人にスポットをあてた物語がほとんどであり、今回のように著名人の一生をテーマにしたドラマは初めて。
亀梨和也はどう似せるか「24時間テレビ」ドラマSP「時代をつくった男 阿久悠物語」スター誕生!

今年は阿久悠の生誕80年、作詞家活動50年、没後10年という節目の年であり、さまざまなメディアで追悼特集が組まれている。TBSでは先日、『あなたが聴きたい歌の4時間スペシャル~阿久悠特集~』という音楽番組が放送されたばかり。河出書房新社からはムック本『阿久悠』が発売されている。

スーパークリエイター・阿久悠


都はるみ「北の宿から」、小林旭「熱き心に」、八代亜紀「舟歌」、ピンク・レディー「ペッパー警部」「UFO」、岩崎宏美「ロマンス」、石川さゆり「津軽海峡・冬景色」、沢田研二「勝手にしやがれ」、山本リンダ「狙いうち」、和田アキ子「あの鐘を鳴らすのはあなた」、ささきいさお「宇宙戦艦ヤマト」……と、阿久悠が作詞した曲をほんのちょっと挙げただけで昭和の歌謡曲の歴史を紡ぐことができる(曲名は『東京人』特集「阿久悠と東京」表紙より抜粋)。

歌謡曲、演歌、アイドル歌謡曲、フォークソング、コミックソング、アニメソング、CMソングと幅広いジャンルで作詞を行った阿久悠だが、彼の活動はそれだけにとどまらない。
小説『瀬戸内少年野球団』は直木賞候補になり、映画化されて大ヒット。『悪魔のようなあいつ』では漫画家の上村一夫と組んで原作を務め、沢田研二主演でドラマ化された折は主題歌「時の過ぎゆくままに」を作詞した。野球を愛し、スポーツ新聞に「甲子園の詩」という詩を27年にもわたって連載していた。月刊紙『you』というフリーペーパーを責任編集していた時代もある。

多岐にわたる阿久悠のクリエイター活動の中で、特筆すべきなのは伝説のオーディション番組『スター誕生!』の企画だ。

『スター誕生!』とスターたち


『スター誕生!』から生み出されたスターは、森昌子、桜田淳子、山口百恵、岩崎宏美、ピンク・レディー、石野真子、小泉今日子、中森明菜、岡田有希子などなど枚挙に暇がない。そういえば小泉今日子は『あまちゃん』の中で、若い頃、オーディション番組に出ていたことになっていた。


当時の芸能界は、沢田研二、ドリフターズ、キャンディーズらを擁する渡辺プロダクションが「ナベプロ王国」と呼ばれる黄金時代を築いていたが、それに対抗する新興プロダクションのホリプロ、田辺エージェンシーらが新たなタレントを発掘するために仕掛けた番組が『スター誕生!』だった。そこに企画者、審査員として深くかかわったのが阿久悠である。ピンク・レディーはプロデュースも手がけていた。当時の経緯は阿久悠・著『夢を食った男たち 「スター誕生」と歌謡曲黄金の70年代』(文春文庫)に詳しい。
亀梨和也はどう似せるか「24時間テレビ」ドラマSP「時代をつくった男 阿久悠物語」スター誕生!

『スター誕生!』で発掘されたタレントは、同局の『紅白歌のベストテン』に出演して文字通りスターになったのだが、これを面白く思わないナベプロは同時間帯に歌番組をぶつけ、日テレとナベプロの間で“ナベプロ戦争”と呼ばれる事態が勃発した。それほど影響力のある番組だったのだ。


松下奈緒から感じる『ゲゲゲの女房』感


ドラマ『時代をつくった男』では、広告代理店のサラリーマンだった阿久悠こと深田公之(亀梨)が雄子(松下奈緒)と出会って結婚。その後独立し、作詞家として多忙な日々を過ごす中で、日本テレビのプロデューサー・池沢(八嶋智人)に声をかけられて『スター誕生!』を制作するところまでが描かれる。タイトルは重松清のノンフィクション『星をつくった男 阿久悠と、その時代』(講談社文庫)からインスパイアされたのだろう。
亀梨和也はどう似せるか「24時間テレビ」ドラマSP「時代をつくった男 阿久悠物語」スター誕生!

偉大なクリエイターを松下奈緒が支えるという物語は、ほんの少し『ゲゲゲの女房』感が漂っている。同じ日テレということで『スター誕生!』の制作の経緯に重きが置かれているのも間違いない。キャスティングを見ると、『トットてれび』のように当時のスターを再現することはなさそうなのが少し残念だが、劇中でどんな曲が流れるのかが楽しみだ。


あのスマートなイケメンの亀梨和也が、ゴツい阿久悠の姿(神無月のモノマネを思い出してほしい)をどう再現するのかも見ものだ。スチールの亀梨和也は一見しても亀梨和也と気づかないレベルまで持ってきている。広告代理店時代の同僚で漫画家の上村一夫を田中圭、イケメン作曲家の都倉俊一を加藤シゲアキが演じている。こちらのイメージはぴったり!

本日だいたい9時頃から。それにしてもマラソンランナーは誰なんだろう……?

(大山くまお)