
5月に開店したばかりの大型店だ
深夜まで多くの客で賑わう不夜城「ドン・キホーテ」に大きな「変化」が訪れようとしている。それは、ドンキ内への「コンビニ導入」だ。
ドンキとファミマの提携 大きな目的は「スーパー再生」
そもそも、ドンキ内にファミマを導入する背景にあるのは、8月24日に発表された「ドンキホーテHD」(目黒区)とスーパー・コンビニ大手「ユニー・ファミマHD」(豊島区)との業務資本提携だ。
もともと、この提携はユニー・ファミマHD傘下の「ユニー」(愛知県稲沢市)が運営する総合スーパー「アピタ」「ピアゴ」の再生のために結ばれたもので、かつて大手スーパーだった「サンバード長崎屋」を再建させるなど全国各地で総合スーパーの再生に成功した実績のあるドンキのノウハウを活用することで事業を立て直す計画。さらに、両社は販売データの総合活用などをおこない、仕入れや物流の合理化なども進めるほか、電子マネーの共通化なども検討するとしている。
ドンキへのコンビニ導入は、こうした業務資本提携のなかで生まれたもので、ドンキのなかでも大型店を中心に実施。導入されるコンビニは必然的に「ファミリーマート」となる。

写真の「ユニー・ピアゴ七尾店」(石川県)は今年2月に閉店、現在は他社が出店している。
深夜のドンキで浮かび上がった問題点
あらためて店舗のようすを見てみようと筆者が向かった先は、都内にあるドンキ。ファミリーマートの出店が検討されていると考えられる駅チカの大型店だ。
時間は終電が近いころで、ちょうどドンキとコンビニ双方の稼ぎどき。遅い時間ながら、店舗は多くの客でごった返していた。
しかし、ほどなくしてその「混雑の大きな原因」が分かった。夜間は稼働しているレジが少ないのだ。とくに上層階ではそれが顕著で、多くの客が下層階のレジへと集中。しかし、レジの列はなかなか進まない。
やはり、これではドンキでコンビニのように「パパっと買い物を済ませたい」という需要を満たすことは到底不可能であり、改めて「コンビニ導入」の必要性を実感した。
実はトレンドになりつつある大型店への「コンビニ導入」
実はここ最近、こうした大型商業施設へのコンビニ導入は他の大手流通グループでもおこなわれるようになっており、イオングループの「イオンモール」の一部には系列の「ミニストップ」が、セブン&アイグループの「アリオ」の一部には系列の「セブンイレブン」が出店するなど、一種のトレンドにもなりつつある。
それらは巨大モール内や駅チカ商業ビルへの出店が中心で、わざわざ食品売場などに向かうことなく「パパっと買い物を済ませたい」という需要を満たすために設置されたと考えられるものがほとんどだ。

建物内の別の場所にはイトーヨーカドーがあるものの「パパっと買い物したい」という需要を満たす。
また、現在のコンビニには、チケット発券などをおこなう店頭端末、マルチコピー機などが設置されており、公共料金の支払いなど従来のスーパーマーケットでは行われてこなかったサービスも提供されている。そのため、スーパーやショッピングセンター内へのコンビニ導入はそうした「コンビニならでは」の各種サービスに対する需要を満たすことができるという側面もある。ファミリーマートでは、ユニーと経営統合後の2017年3月よりユニーが運営する総合スーパーの店内にコンビニならではのサービスを提供することに特化した「ファミマサービススポット」の開設を進めており、スーパー内で公共料金の支払いなども行えるようになった。
ドンキのコンビニ導入も、こうした「商業施設が大型化していくなかで生まれた弊害」を解消するとともに、「ドンキでは行われていないコンビニならではのサービス」に対する需要を満たすためのものといえる。

今後はドンキ約50店にファミマ出店へ
8月24日に行われたユニー・ファミマHDとドンキホーテHDによる記者会見によると、ファミマは今後ドン・キホーテ大型店のうち約50店へのテナント出店をおこなうほか、郊外型ドンキの平面駐車場内への単独出店も検討。また、共同での新商品開発なども進めていくという。
コンビニを介したドンキ内でのチケット購入や公共料金の支払い――流通大手同士のコラボレーションによって実現する新サービスは、顧客の利便性を大きく向上させるとともに、競争が激化するディスカウントストア業界に対しても大きなインパクトを与えることになりそうだ。
(都市商業研究所)