連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第22週「ツイッギーを探せ!」第130回 8月31日(木)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:渡辺哲也
「ひよっこ」130話。終盤に来て、気になる点もいくつか
イラスト/小西りえこ

連続朝ドラレビュー 「ひよっこ」130話はこんな話


ヒデ(磯村勇斗)は、休みの日に、佐賀へ島谷(竹内涼真)に会いに行っていた。

ここがへん? その1


「おはよう日本」のキャスターの皆さんのお洋服が、秋色になってきた。「ひよっこ」カラーじゃなくなっていて(いつもそうだったわけではないが)、ドラマの終わりが近づいているのを感じる。

奥茨城村から東京に出稼ぎに来た女の子の日々の生活を描いたドラマを、毎朝、楽しみにして、毎日せっせと、良いところを取り上げてきたが、たまには、ちょっとだけ、気になった点について書いてみたい。

1ヶ月ごとに、だんだん高いメニューに挑んできたみね子(有村架純)が、ついにハンバーグ230円に到達。
いつのまにか、実も宗男も大好きだった、ハヤシライス220円はクリアしてしまっていたようだ。
せっかく、美味しい、楽しい場面なのだが、「ひよっこ」で珍しく、疑問に感じてしまったのは私だけだろうか。
自分が働いている店のメニューをほとんど食べたことがないなんて。
もっとビジネスライクな店ならそういうものかもしれないが、すずふり亭でのみね子は、家族のようなものだし、また、お客さんにふるまうのに、味を知らないままより、知っていたほうがいいと考えそうなものではないか。
「おいしいですよ」と実感なく、お客さんにおすすめしているのかと思うと、ちょっぴりさみしい気分。

もちろん、みね子が、東京に出てきたときの目標だからと頑なに拒否していたのかもしれない。

ただ、自分の勤務するショップの、とってもお高い靴やバッグを、いつかお給料で買うっていう夢とは、性質が違うような気がするのだけれど・・・。
お給料で、好きな洋食屋さんのメニューを制覇目標は、主人公の職場とすずふり亭が別だったからこそ生きたエピソードだった気がする。

ここがへん? その2


由香(島崎遥香)が、柏木堂で働き始めた。
ここにいること、鈴子や省吾に内緒だと口止めするが、明らかに、鈴子たちに気づいてほしいという意味らしい。
鈴子(宮本信子)も滅多に前を通らないと言うけれど、こんな狭い商店街で、しかも、あかね荘の様子を見たって、なんでもかんでも情報がすぐに伝わる地域性だと思われるため、一日で、バレるだろう。

由香にとってはそれこそ好都合なのかもしれないけれど、リアリティーはない。リアリティーなんて最初から目指してないと言われたらそれまでだが。

ヤスハル(古舘佑太郎)と由香、それぞれのエピソードは、おもしろく工夫されているとはいえ、古舘伊知郎と秋元康への気遣いコーナー疑惑が拭えない。
岡田惠和が、主人公が描いた漫画のキャラクターが実際生きていたら、を描いた「泣くな、はらちゃん」にヤスハルと由香がいたら、自分たちの立ち位置についてなんと言うだろうか。

ここはへんじゃない 


とりたてて、大きな夢も目標もないまま東京に暮らすみね子ではあるが、すずふり亭全メニュー制覇をささやかな目標に生きてきたことが、ひとつ、生きるとしたら、世津子(菅野美穂)への共感だろう。
100話で世津子が、みね子に、演技するとき、ギャラで買いたいものを想像するのだと言っていた。そんな素朴さをもつ世津子の気持ちが、みね子には理解できたし、同じような人がいると嬉しくもなったのかもしれない。だからこそ、世津子のことがずっと気になるのではないだろうか。
……ということで、薬局で、世津子のポスターがはがされてしまったことが、みね子は気になって……つづく、は巧い流れ。
そういえば、薬局の名前はトキワ。トキワ荘からとっているのかな。

あ。


すっかり、書くのを忘れかかった、ヒデが島谷に会いに行ったエピソード。

みね子に語られず、ヒデの心の中だけにしまっておくエピだったとは。
みね子を好きだと宣言して、男の友情のけじめをつけにいったら、島谷は、左手の薬指に指輪をしていて、
ヒデの視線は、それに気づくも、とくに聞かない。
「結婚したのか!」と聞いて、島谷が、家を守らなくてはならない男の苦悩を吐露して、えーんと泣いて、ヒデがカホコのように「よしよし」してあげたら、神回だったのに。

NHKは、昔の佐賀の風景のアーカイブをもっていそうなので、ワンカットくらい挿入してもいいのでは、と思うのだが、そういうことはできないんだろうか?  でもきっと、応接間の美術が、佐賀っぽいのだろうと思う。

131回も楽しみです!
(木俣冬)
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