連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第25週「大好き」第145回 9月18日(月)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出: 福岡利武
「ひよっこ」145話。早苗、永遠の25歳の謎が明かされる
イラスト/小西りえこ

145話はこんな話


早苗(シシド・カフカ)が、長らく秘めていた恋の話をする、

“面倒くさい”人に


「おはようございます。増田です。
明美です。」と、愛子(和久井映見)ふうに語るナレーション(増田明美)。
そこに挟まれる、咳払いする愛子のカット。
意味あるのだろうか、これ?
「ひよっこ」の登場人物は、好感度をあげようと気遣い過ぎた結果、“面倒くさい”人になる。
これが、残り2週間まで来て感じた結論である(といって、それを良くないとは言っていません)。

早苗が「溜まっていた」のは、他人の事情が見ていられないのもあっただろうが、自分の長年の成就してない恋のことでもあったようだ。
堰を切ったように、東京に出てきて初恋を体験した話をする早苗。

「聞いてください」とわざわざ言うところに、「これから〜〜の話をします」とまず言うチェルフィッチュの芝居を思い出した。チェルフィッチュの作家が岡田利規と岡田つながり。

生まれてはじめてのエレベーター


まずは、早苗の生い立ちから。
ディテールに凝っていて、早苗らしさが散りばめられている。
ここでも、モノマネ(今度は富さん)が登場した。

さて本題。
18歳。
はじめて東京に就職で来た日。初出社の前に、デパートに行き、屋上に上がるエレベーターで、
25歳くらいのかっこいい、ドラマーの男とふたり、5時間閉じ込められた話。
その間に、お互い、恋してしまうという、舞台だったら、こういうのだけで、一本成立しそうだ。
その間、
えー!
あー!
ふーん!
きゃー!
と、かしましく相槌を打ち続ける、みね子(有村架純)、愛子、世津子(菅野美穂)、邦子(白石美帆)。
この演技、大変だなあ。

恋に落ちた二人は、再会を約束。

彼がアメリカに音楽修業に行って帰ってくるのを、25歳まで待つと言った早苗は、ずっと25歳と言い続けていたのだった。
「なんていつまででもって言わなかったんだろうって」
25歳を超えて、5年ほど経ったというから、30代か。12年ほど待っていることになる。長い。健気だ。
彼が知っているのは、早苗の名前と住所や職場だから、動けない(引っ越せない、転職できない)っていうところも、健気だ。

月時計から部屋に戻って、「人にしゃべってしまった」と、ドラムスティックもってベッドに転がっているときの早苗は、その健気さが外に出まくった完全“乙女”であった。恋の話をしているときの横顔も、柔らかった。
ずっと健気な乙女をうちに秘めていたのだなあ。

大人の乙女たちの恋は・・・


愛子は「頑張って振られるのはやだな」と、シェフ様(佐々木蔵之介)の似顔絵を見ながら、もやもやする。

早苗の話に「すごい恋だねえ」と、しみじみ言う世津子。
きっと、自分の体験を思い出していると思う。

みね子と一緒の部屋になった世津子は、なんでも言い合おうと約束するものの、実こと雨男(沢村一樹)と過ごした時間について、誰にも話すつもりはない。
私だけの思い出、と言う。
うんうん、言わなくていいと思う。なんでも、言えばいいってものじゃない。うちに秘めてることもあっていい。
そこに、2年半のふたりの記憶のカットではなく、奥茨城村で、何かを考えながら、ふと子供を見つめる実のカットがインサートされるところが、世津子にとっても、みね子にとっても、おそろしく残酷な描写だった。

愛子と世津子、ふたりの想いはどうなるんだろうか。


麦茶だったお酒



たくさんしゃべった早苗がお酒をぐーっと飲む干すと、それは麦茶だったと邦子が舌を小さく出す。

「え、お酒の味が・・・」と動揺する早苗。これは、撮影ではお酒はウーロン茶や麦茶などを使っていることを逆手にとったギャグなんだろうか。

(木俣冬)