水原希子さんプレモルCMにヘイト殺到、あなたも他人事ではない

女優・モデルの水原希子さんを起用しているサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」の公式Twitterアカウントの投稿に対して、たくさんの差別・ヘイト投稿が寄せられていることが発覚して、問題となっています。

水原さんは、父親=アメリカ人、母親=韓国人で、アメリカテキサス州ダラスに生まれて、兵庫県神戸市で育った方とのことですが、レイシストにはそのようなバックグラウンドが気に食わないのか、「エセ日本人」「日本人を起用しろ」等の差別・ヘイトを飛ばす人が後を絶ちません。
あまりに酷いのでリンクを張るのは避けますが、中にはサントリーに対して不買運動を宣言する人まで出ており、非常に醜い状態を晒しています。

ですが、それらの差別的投稿へのTwitter社の削除対応が追いついていないのか、今でも普通に見ることができてしまいます。これは大変由々しき事態と言えるでしょう。日本のTwitterは以前から差別・ヘイトの温床と言われていますが、一刻も早く削除とアカウント凍結を実行するべきです。


グローバル企業になりたいならヘイトと戦え


サントリーも2014年に米ウイスキー大手のビームを買収して、グローバル企業への脱皮をゴリゴリと進めている段階です。ですから、当然このような差別・ヘイトに怯んではいけません。むしろTwitter社に対しても広告主の立場から苦情を言う権利があると思います。

また、日本ではブランドイメージを気にして「リスクのあるタレントはCMに起用しない」という決断をする企業も少なくはないと思うのですが、それは差別・ヘイトに屈したことの証であり、絶対にやってはいけないことです。当然しないとは思うのですが、万が一サントリーCMの担当者が今回の一件で水原さんの起用をやめる愚行を犯せば、先月炎上した「頂」のCMの比ではない批判が殺到することでしょう。

一方、とても意外なことなのですが、今回の差別・ヘイトが起こったことで、逆に水原さんを起用しているザ・プレミアム・モルツに対する好感度が上がった人が少なくないようです。検索してみると、おそらく水原さんのファンではない方々が、ザ・プレミアム・モルツを買って応援する等の内容の投稿をしているのをいくつか見かけます。このような副次的効果も決しては見逃してはいけないでしょう。


水原さんのエンパワーメントは素晴らしい


冒頭で紹介したように、水原希子さんは、日本社会ではまだ珍しいグローバルなバックグラウンドがあるため、人とは違った苦労もしてきたのだろうことは想像に難くありません。ですが、彼女は単に自分が苦労しただけに留まらず、自分の感じた苦悩を他の人には味わって欲しくないという強い意志を持っているように見えます。


たとえば、2016年10月14日放送の「アナザースカイ」(日本テレビ系)で、「いろんな差別がなくなればいいのにって心から思っています」「自分だけにしかない魅力を皆さんに見つけてほしい。早く差別のない時代になって欲しいし、そのために私は強く生きてる姿勢を見せなきゃ」と述べたとのことです。

苦悩を味わう人はたくさんいます。でも、「自分が感じた苦悩を他の人は味わって欲しくない」という想いから、その社会的課題を解決することを自分の使命のように捉えて、新しい社会的ビジョンを掲げて人々に向けて発信し、人々のエンパワーメントをできる人は本当に稀です。そういう人が真の「リーダー」だと思うのです。

一連の発言を見る限り、水原さんは超売れっ子の「スター」であるに留まらず、「リーダー」の素質もあるように感じました。最近、私のことを応援してくださる人から彼女のファンだという声を聞くことが少なくないのですが、今回水原さんの過去の発言等を調べてみて非常に納得しました。彼女が日本の芸能界にとって稀有な存在であることは間違いなさそうです。


差別・ヘイトは決して他人事ではない


今回のケースは明らかな差別・ヘイトであるため、ごく一部のTwitterユーザーだけの問題のように感じるかもしれません。ですが、社会学の分野で「Pyramid of Hate」が指摘されているように、犯罪とヘイトと偏見は基本的に地続きです。偏見を放置すればヘイトが生まれ、やがて犯罪やテロも生じることが今や通説となっています。今回のようなケースも決して他人事と捉えるのではなく、もっと身近な問題として捉える必要があります。

引き続き、水原さんの事例で考えてみましょう。
国内芸能人第2位のフォロワー数を誇る水原希子さんのInstagramは、度々ネットニュースに「過激な投稿」として取り上げられるような写真も多く、世間一般からは「破天荒(常識破り)」というイメージで受け止められているようです。

ですが、彼女のInstagramを拝見してみると、むしろ「自然体」という印象を強く受けました。実際、2017年09月12日放送の『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ系)でも、「(Instagramを)日記みたいにやっている」「投稿して言われて後から気づくパターンが多い」と述べていました。おそらくそのような自然体の姿勢が、多くのファンの共感を得ているのだと思われます。

逆に、水原さんの投稿が「破天荒」に映る人は、水原さん側の問題のように感じているのかもしれませんが、むしろそうと感じる自分側の問題だと思うのです。確かに芸能人はファンタジー的要素のある存在ですが、あまりに作り込んだ「人工物的要素」に慣れ過ぎてしまっているために、彼女のある意味“加工しない”投稿をに違和感を覚えるのではないでしょうか?

さらに、SNSの投稿なんて共感できなければスルーすれば良いものに過ぎません。それなのに、自分の感覚に合わないからと言っていちいち負の感情を吐露するのは、多様性を受け入れられていないことの証左です。そして、そのような多様性を受け入れられない土壌こそが、「Pyramid of Hate」において、差別・ヘイトを生み出す土壌であると言えます。

ヘイトは言わずとも、「他人の勝手」に過ぎないことをスルーできず、自ら干渉して、「〇〇はアリ!」「〇〇はナシ!」と他人をジャッジする人は少なくありません。集団を重視して「個」を軽んずる日本文化の良くない部分です。でも、そういう「排除の姿勢」こそが、ヘイトや差別と地続きであることをもっと明確に意識するべきですし、やめるよう心掛けるべきだと思います。差別・ヘイトは決して他人事ではないと思うのです。



経営者はヘイト労働力不買運動をせよ


ヘイト問題に話題を戻しますが、ではどうすれば特定の人種・性別等に対するインターネット上のヘイトを抑止できるのでしょうか? 海外ではヘイトを放置した場合、SNSの事業者に対して罰金を課す国もありますから、ぜひ日本でもそのような政策を取り入れるべきでしょう。

また、個人的には、良識ある経営者たちが集まって、「ヘイト労働力不買運動」を展開することも効果的ではないかと考えています。つまり、ヘイトをする労働者は一切採用しないという強い姿勢を打ち出し、労働者のヘイトが発覚したら場合によっては解雇も辞さない強い態度を示すのです。

もちろんTwitterでヘイト発言をする大半は匿名アカウントですが、アカウントが特定されれば勤務先を解雇になる可能性もあると分かれば、かなりの抑止力になることは間違いないと思うのです。政府の動きが遅い中で、そのような良識ある企業が率先して出てくることを強く望んでいます。
(勝部元気)
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