その安室と比較され、何かと話題になるのが、1990年代後半にアイドル、アーティストとして10代の少女の人気を二分した歌姫である浜崎あゆみだ。
10代のファッションリーダー
1998年にデビュー(歌手デビュー)した浜崎はメッセージ性の強い歌詞が同世代の女子に支持され、信者的ファンが多く存在した。浜崎はファッションでは大きいサングラスやヒョウ柄、迷彩柄、ネイルアートのブームをつくり、女子高生のカリスマとして注目を集めた。
「アムラー」が社会現象となった安室とともに、90年代後半のファッションリーダーであり、時代を代表するアーティストだ。
アラフォーになり正反対の道を選んでいる2人
そんな安室奈美恵、浜崎あゆみも40代。歌番組が少なくなった今も知名度は絶大で、長年のファンがフォローし続けている。
安室は黙々とステージを中心に活動し、2016年にはシングル『Hero』がNHKリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック放送のテーマソングになるなど、音楽シーンで変わらず注目されてきた。
安室のその潔い引退宣言が美談のように語られる一方、昨今の浜崎は劣化、インスタの投稿などがよく話題になり、歌手活動は低迷している。
それでも、左耳の聴力を失ったことを告白したときに「ボーカリストであり続けたい、右耳がいけるところまで、限界まで歌い続ける」と語り、現役で歌い続けることにこだわる信念の強さを支持するファンは多い。
宇多田ヒカルと『世紀の歌姫対決』
そんな“折れないあゆ”も引退を考えたことがあったという。2001年3月28日、初のベストアルバム『A BEST』をリリースしたときのことだ。この日は宇多田ヒカルのセカンドアルバム『Distance』と発売日が重なり、売上枚数でデッドヒートを繰り広げた。
浜崎の『A BEST』の初回出荷枚数は350万枚、初日の繰越注文は50万枚。一方、宇多田の『Distance』の初回出荷枚数は315万枚、初日の繰越注文は85万枚で、両作品とも出荷枚数の累計が400万枚で同じだった。
初週の売上は『A BEST』が約287万枚、『Distance』が約300万枚と、宇多田ヒカルが初日からややリード。
最終的に両アルバムは400万枚を超え、歴代CDアルバム売上ランキングは『Distance』が4位、『A BEST』が6位である。
「あのときはとにかく離れたかった」と告白
リリースから3年後、出演したテレビ番組で、浜崎は「私が思ったかたちでリリースすることができなかった。初のベストアルバムを『いつか私も出せるかな』ってすごく夢見ていて、憧れていたのに、ある日突然『何月何日にベスト盤をリリースします』と決まっていて、すごいショックでした。浜崎あゆみという一個人であり人間であり女だと思っていたのが、大きな組織の一部であり、エイベックスの中の大事な商品なんだと解釈しました」と告白。
「だから、それで終わりにしようと思った。引退というかたちなのか、具体的には決めていなかったけど、とにかく離れたかった」と発言した。
自己プロデュース力に長け、意志が強い浜崎だからこそ、1位になれなかった悔しさより、自分が意図しないかたちで意図しない対決を仕掛けられ、自分の意志がどこにもない悔しさで落胆したのではないだろう。
そのとき、どのように気持ちを切り替えたかはわからないが、これからも強い意志を貫いて歌い続けてほしい。
(佐藤ジェニー)
※文中の画像はamazonよりA BEST