2017年10月20日(金)放送の金曜ドラマ『コウノドリ』(TBS系列)2話。
子宮頚部腺がんを患った妊婦とその家族の決断を描き、視聴率は11.8%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)だった。

「コウノドリ」2話「3人の人生だよ」こどもと夫に命を捧げる献身的な母親を美談にしなかった
TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』公式ガイドブック (ヤマハミュージックメディア)

2話 あらすじ


産婦人科医・鴻鳥サクラ(綾野剛)が勤めているペルソナ総合医療センター。診察に訪れた妊娠19週の妊婦・久保佐和子(土村芳)は、そこで子宮頸部腺がんであると診断される。
がんを治療する際、赤ちゃんの成長を優先して32週まで佐和子のお腹の中で育てた方が良いと考える四宮(星野源)。治療を早く開始するために、28週で手術をしたいと考えるサクラ。医師たちの間でも、意見が対立する。
手術をする場合は、子宮を全摘出しなければならない。今回が最後の妊娠となるため、治療と出産のタイミングについて、久保夫婦に難しい決断が迫られる

献身的な母親に幸せを探させてくれる夫


佐和子「28週で産んでも、私は死ぬかもしれないんだよ。だったら、お腹の中でできる限り育てたい。
ちゃんと育てて、慎ちゃんに迷惑かけないようにしたい。慎ちゃんが1人でも大丈夫なように、私がお腹の中でちゃんと育てるから……」

自分の命よりも、お腹の中の赤ちゃんや夫の慎吾(福士誠治)のことを優先したいと言う佐和子。母親が自分の身をなげうってでもこどもと夫に尽くすことを「美しい」「そうあるべき」と考える人も多い。献身的な母親の死は、美談にされがちだ。
しかし、慎吾はそれを許さない。

慎吾「1人じゃないよ。
この子は、佐和子と俺の子だよ。2人で育てるんだよ、俺たちで育てるんだよ。俺たちの子だよ。3人の人生だよ」

朝ドラ『べっぴんさん』(NHK)でも母親役を演じていた土村芳は、「献身的」とか「気丈」と言われるような女性を演じるのが上手い。
佐和子は、質問をするときは相手の顔を見るが、自分の意見を言うときは相手を見ずにうつむいたり遠くを見たりしている。慎吾に「慎ちゃんに迷惑かけないようにしたい」と話すときも下の方を見ている。
慎吾を説得するために話しているのではなく、自分の死と赤ちゃんの命に直面している自分を奮い立たせるために、声に出しているようにも見えた。

献身的な態度は手放しに良いことのようだが、自分の人生の利益や幸福を考えないということでもある。相手の顔を見ながら意見を言えないのは、その言葉を自分に言いきかせているから。自分の人生にとって良いことや自分の幸せを考えたときの本心は、もっと別なところにあるかもしれない。
他者のために自分を犠牲にする人が搾取されることもある世の中だ。献身的過ぎる女性を簡単に肯定せず「自分の幸せを考えて」と言って軌道修正させてくれる人の存在は尊い。
救われる。慎吾のような人がたくさんいてくれたらいいのに、と思わずにいられなかった。

夫への失望「うちのインティライミ」


「コウノドリ」2話「3人の人生だよ」こどもと夫に命を捧げる献身的な母親を美談にしなかった
ナオト・インティライミ「夢のありか」(Universal Music)

第1話に登場したキャリアウーマンの佐野彩加(高橋メアリージュン)が、第2話にも登場した。
四宮の「ちゃんと眠れていますか?」という質問に、食い気味で「大丈夫です」と答える。笑顔が顔に張り付いていて明らかに精神的に追い詰められている様子だが、それを隠している。育休を取らなかった夫の康孝(ナオト・インティライミ)が、育児に非協力的なのだろう。


それを受けて、Twitterでは「#うちのインティライミ」というハッシュタグが作られた。母親たちが、育児に対して当事者意識が低く非協力的な夫の問題点や、夫への失望感をツイートしている。
悪いのは康孝でありインティライミではないので「うちのインティライミ」というタグはちょっと不憫。絶対に嫌われる役柄だとわかっていただろうに、母と子をないがしろにする康孝役を引き受けたインティライミに感心した。

スポーツと音楽でこどもたちの体と心を強くする「ドリームキッズプロジェクト」を手掛けているインティライミは、本来はこども好きな人柄だと思われる。彼がどんな気持ちで康孝を演じているのか、聞いてみたいものだ。

本日10月27日(金)よる10時から放送の第3話では、彩加と康孝の問題が明るみに出る。

11月24日には、公式ガイドブックが発売予定の『コウノドリ』。
第2話は、TBSオンデマンドAmazonビデオTVerで配信中だ。

(むらたえりか)

金曜ドラマ『コウノドリ』(TBS系列)
出演:綾野剛、松岡茉優、吉田羊、坂口健太郎、宮沢氷魚、松本若菜、星野源、大森南朋、ほか
原作:鈴ノ木ユウ『コウノドリ』(講談社「モーニング」連載)
脚本:坪田文、矢島弘一、吉田康弘
企画:鈴木早苗
プロデューサー:那須田淳、峠田浩
演出:土井裕泰、山本剛義、加藤尚樹
ピアノテーマ・監修・音楽:清塚信也
音楽:木村秀彬
主題歌:Uru「奇蹟」(ソニー・ミュージックレーベルズ)