でかい! きれい! かわいい! ヒルにもいろんなヒルがいる
ペット用のヒルを主にネットで販売している『蠢くものたち』の代表・吉田一貴さんにお話を伺いました。
ヒルは日常的にはあまり見ないので「田んぼや沼地などで、身体にくっついてくる小さな黒いやつ」という印象しかない人も多いでしょう。ジャングル探検のマンガやテレビ番組でしか見たことない人もいるかもしれません。

しかし、そんな先入観はいきなり吹っ飛びます。いきなり出てきたのは、片手でわしづかみにしないと持てない巨大なヒル。こちらは「ネッタイツスイヒル」という種類で死んだものを保存しているそうですが、体長は30センチほど。ここまで大きくなるものは少ないとのことですが、生きているネッタイチスイヒルも10センチくらいはあり、なかなかの大きさ。そして、よく見るとそれぞれ微妙に色が違ったり、背中に模様があったりと個性があります。

小さいヒルもいました。医療用ヒルは、ドイツなどでは認可を受け再生医療などに用いられているのだとか。医療に用いられるので、生まれたときから無菌状態で育てられており、とても清潔です。

「トウモンチスイビル」はオレンジの模様が特徴のヒル。日本にはいない種類で、輸入されることもまれなため、通称にあたる和名は吉田さんが名付けたのだとか。国産のチスイビルは日本の田んぼなどにも棲んでいる種類。これもよく見ると模様があって個性があります。

ここまでは水辺に棲み動物の血を吸うタイプのヒルをご紹介しましたが、次は少し違ったタイプです。「ヤツワクガビル」は陸に棲む種類。ノドビルと呼ばれる仲間で、強力な吸引力でミミズなどを丸呑みにするそうです。色も鮮やかです。

都会の小さな部屋にぴったりのペット
昔の日本では「悪い血を吸わせる」など、民間療法でヒルは用いられていました。しかし、最近はペットとして飼う人もいるだそう。
ヘビやトカゲといった爬虫類をペットとして飼う人が増えているのはよく知られた話です。イヌやネコに比べるとエサも少なくて済み、吠えたり暴れたりせず、嫌な臭いもしない。
ヒルも同じ理由で飼うのにあまり手間のかからないペットで、爬虫類のよさを知った人の中にはヒルの方に流れてくる人も多いのだとか。体にたくさんピアスをするようなボディサスペンションをしている人とも妙にうまが合うそうです。
小さなヒルは色や模様が鮮やかなものが多く、縮んだり伸びたりする姿がかわいらしく、大きなものになると、腕に這わせたりして肌のコミュニケーションができるようになるのでペット感が強くなります。イヌ・ネコに比べればずっと原始的な生き物なのに、不思議といろんな感情を持っているように見えてくるのだとか。

血を吸うと聞くと「エサはどうするの!?」と思う人もいるかもしれませんが、金魚などを与えればOK。ホームセンターでは100円くらいで売っているのでエサ代はかかりません。1回食事をすれば1ヶ月以上は食べなくても平気なので、旅行の間に死なせる心配もないそう。
あとは数日に一回、水を替えてあげるだけの手間のかからないペットです。水替えの際に体温を嗅ぎつけて手にペタペタ貼付くようになったら、お腹が減ったサインなのだそうです。
マニアックな人になると、自分の腕から血を吸わせて育てる人も多いのだとか。ヒルが大きくなると、自分の血を分けた子どもが育つように感じて、ヒルへの愛着が深くなるのだそうです。
ただし、血中のアルコールやニコチンはヒルにとっては猛毒です。なので、エサやりの数日前から酒タバコを断つ必要があり、そのためにかえって健康になる人もいるようです。もちろん、金魚などをエサにしても問題はありません。
お部屋のインテリアにもヒルを
中学生のとき、本で読んでヒルに興味を持ったという吉田さん。高校生のときに通販でヤマビルを買ってから、ヒルを飼い始めました。
転機となったのは、吉田さんが育てて大きくした冒頭の巨大なネッタイチスイビル「ギガス」。それまでは、ヒルに興味を持っている人などまったく周りにはいなかったのですが、ギガスの写真をツイッターに上げたところ意外にも多くの反響がありました。
その後、YouTubeに上げた動画も好評に。ヒルを愛好する人が世の中にもたくさんいることを知り、それをきっかけに本格的に海外からヒルを輸入してペット用ヒルの販売を行うようになったとのこと。

「気持ち悪い」という先入観から嫌っている人も多いですが、吉田さんがイベントなどで実際にヒルを見せるとたくさんの人が興味を持ってくれるそうです。
世話に手間がかからず、近所迷惑にもならない、都会の部屋で飼うにはぴったりのペット。水槽の中に水辺の様子を再現しアクアリウムのようにして飼えば、部屋のインテリアにもなります。

(山根大地/イベニア)