「嵐」の櫻井翔が主演のドラマ『先に生まれただけの僕』(毎週土曜 後10:00/日本テレビ系)、今日(2017年11月11日)後10:00から第5話放送だ。
第4話平均視聴率は7.7%。
少し下がった。

第4話、櫻井翔が演じる鳴海校長の怒涛のロングスピーチがクライマックスで炸裂した

前回成功した島津先生(瀬戸康史)のアクティブ・ラーニング型の授業。
これを他の先生もやろう!ということになる。

鳴海校長は全校生徒の前で
「一年生と二年生の授業を変えていこうと思います。面白いっておもえる授業に」
と大発表。
しかも、市村先生(木南晴夏)、矢部先生(森川葵)、真柴先生(蒼井優)、鳴海校長、みんなのアクティブ・ラーニング型の授業がうまくいって、なかなかいい調子。
生徒も授業が楽しいと感じ、先生も手応えを得ている。

ところが!
上手くいった喜びを共有している先生たちの前に、三年生三人がやってくる。
「わたしたちの授業は変わらないんですか」
そうなんである。
三年生は、受験も迫っていることもあり、抵抗勢力三人組が三年生担当ということもあって、いままで通りの授業をやっていたのだ。
「計画の中にわたしたちは入ってないんですか」
「ぼくたちは見捨てられるんですか」
「切り捨てられたんですか、わたしたちは」

これをきっかけに三年生の不満が爆発。
学校でさまざまな問題が起こって、鳴海校長の10分を超える名スピーチへと突入する。

櫻井翔「先に生まれただけの僕」3年生爆発「ぼくたちは見捨てられるんですか」校長のスピーチは届いたか
イラスト/米光一成

これが凄いスピーチだった。
三年生を改革プランから切り捨てたまま、スピーチでどうにかしてしまうという荒業が繰り広げられるのだ。

三年生たちの要望をまとめると以下のようになるだろう。
1:つまらない授業は嫌だ。三年生の授業もおもしろいものにしてほしい。
2:三年生も改革プランにいれてほしい。
3:ぼくたちを見捨てないでほしい。

スピーチ冒頭で、まず要望1と2を拒絶する。
「みんなに謝ります。僕は、この京明館高校を改革するために校長として赴任して来ました。でも、その改革プランにみんなは入っていません。卒業が近い3年生だから仕方がなかった」

改革プランに三年生が入っていないことを認めて、真正面から謝罪である。

しかも、理由は“卒業が近い”というだけ。

もちろん三年生は納得しない。
「もうどうでもいいんじゃない?」

鳴海校長は、続ける。
「ただあえて言わせてもらいます。こんなこと社会に出れば普通にあります。社会では、人は公平に扱われません。
必ずどこかで線引きされ、評価され、誰かが選ばれ、誰かが落とされ、そうやってそれぞれの居場所が決まって行くんです」

さらにこうも言う。
「社会に出たら、理不尽なことがたくさん転がっています。いま君は、君達は、僕に腹立ててるかもしれないけど、社会での理不尽なんてこんなもんじゃないよ。それは、覚悟しておくべきです」

正直に思ったことを書こう。これは卑怯な論法ではないか?

三年生の三人は、校長先生に直訴した。
それは、そうとうな覚悟だったはずだ。

にもかかわらず、「社会での理不尽なんてこんなもんじゃない」という。
将来の理不尽がもっと酷いからといって、いまの理不尽を甘んじて受けなければいけない、なんてことはない。

鳴海校長は、それぞれの進路の生徒たちに、心をこもったアドバイスを続ける。
就職する人たちには、社会の理不尽さが待ち受けていることを説く。
専門学校へ進学する人たちには、専門学校で習うことは「基礎中の基礎」で「仕事で必要なスキルは現場で学んでいく」のだと話す。
大学に進学する人たちには、もっとも大胆に鳴海校長は語る。
「今の京明館高校のレベルで、まぁつまり、みんなのレベルで入れる大学は、決して就職に有利と言える学校ではありません」
大学が、もはや高学歴ではなく重学歴となることを指摘する(参照→「大卒はもはや邪魔? 重学歴という罠」)。
三年生の「つまらない授業は嫌だ。三年生の授業もおもしろいものにしてほしい」という願いに関しては全く触れない。

櫻井くん演じる鳴海校長は、いままでと同じ姿勢で挑んだ。
生徒を子供扱いせず、対等に腹を割って話す。
これは、スピーチのとき彼が立った場所で明確に示されていた。

朝礼のときは壇上の高い位置から話していたが、今回は生徒たちと同じ高さの場に立って話した。

そして、自分の言葉で、自分の体験を、隠し事せずに話す。
「そんなに、脅かさなくっても…」「(そんなこと言って)いいんですか?」と先生たちが思わず言ってしまうようなことまで語った。

三年生の3つの願いのうち、鳴海校長が拒絶しなかったことは、ひとつだけだ。
3:ぼくたちを見捨てないでほしい。
このスピーチで鳴海校長は、「ぼくは君たちを見捨てない」と伝えたかったのだ。

鳴海校長は、いくつも間違いをおかす。
アクティブ・ラーニングにしないまでも三年生の授業も改善すべきなのに、反対派の説得をあきらめて、いままで通りで良いことにしてしまった。
心配して連絡をくれた恋人(多部未華子)に「まあ、仕事のことだし、さとに説明してもしかたないから」と、相手を認めない一方通行のコミュニケーションをとってしまった。
三年生の不満が出ることを予測できず全校生徒に「面白い授業にする」と言ってしまった。
アクティブ・ラーニングの捉え方も一面的だ。

だけど、いつも、生徒を子供扱いせず、自分の言葉で、まっすぐ話すことで、どうにか踏ん張る。

「ぼくは君たちを見捨てない」と伝えるのだ。
ついに、第四話で、学校の改革がはじまった。
先生たちも変わり、生徒たちも変わってきた。

こうなると、ドラマ的には、ボス戦に駒を進めるだろう。
高嶋政伸が演じる加賀谷圭介専務である。
櫻井くんのスピーチのときに、仰々しく入ってきて、ただ威圧して、何も言わず出ていった男。

鳴海校長がスピーチで「社会での理不尽なんてこんなもんじゃない」と語ったとき、脳裏に浮かんだのは、加賀谷専務が高笑いする姿だろう。
予告編で、加賀谷専務が唇をねじりにねじりながら「俺を飛び越して社長にぃぃぃ」と激怒しているシーン、郷原先生(荒川良々)を褒めて籠絡しようとしているシーンがあった。

社員バッチを外した鳴海校長は、加賀谷専務という社会の理不尽とどう戦うのか。その覚悟を見せることができるのだろうか。第5話、楽しみです。

公式サイト「先に生まれただけの僕」
公式Twitter「先に生まれただけの僕」
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米光一成)
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