“SNSでの出会い”は本当に危険なのか? Twitterきっかけに結婚した女性に聞く

神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件で、白石隆浩容疑者がTwitterを通じて被害者と接触していたことが判明した。SNSを通じて人と会うことの危険性が話題に上っており、政府が再発防止のためTwitter規制を検討するとの報道もある。
しかし、SNSでの出会い=危険と断じていいものか――。Twitterをきっかけに夫と出会って結婚した未衣子(https://twitter.com/315meow)さんに話を伺った。

<未衣子(みいこ)>
執筆陣が全員既婚女性の同人誌『奥様通信』で編集長を務める。11月23日に東京流通センターにて開催される「第二十五回文学フリマ東京」に個人サークル「さいたま養豚場」で出店予定。

「SNSでの出会いは最低限の警戒をされるべき」


未衣子さんはTwitterをきっかけに知り合った夫と結婚2年目。落ち着いた雰囲気がお似合いで、筆者の知る中でも大変仲睦まじいカップルだ。しかし、さすがに未衣子さんも初めて相手と会うときは「もしかして騙されているかもしれない」という不安を抱えていた(後に夫も同じ不安を感じていたことがわかったそうだ)。

「でも交際が始まって、彼の友人や実家と関わり人としてのルーツを知るようになってからは、徐々に一般的な恋愛と変わらない状態になったと感じます。したがって、交際から結婚にかけては、SNSを通じて出会ったからといって、とくに不安を感じたことはありません」

未衣子さんはSNSを通じた出会いの長所を「相手の人間性がシンプルに見えてくるところ」と考えている。とくに匿名性の高いTwitterは、ユーモアのセンスから言いにくい本音、悩みまでも言葉にされやすい。夫のことも、言葉の裏に見える人間性に興味を持った。しかし、彼女はかといって「SNSでの出会いは素晴らしい」と言いたいわけでもない。

「SNSでの出会いは最低限の警戒をされるべきだとも考えます。
耳触りのいい言葉や気持ちのいい言葉ばかりを使い、その裏で他者を傷つけるような人物からは、自分の身を守らなければなりません」

彼との初対面のとき、未衣子さんは自衛のため、人通りの多い駅の近くにある明るい雰囲気のカフェを指定した。また、相手のTwitterアカウントは本人の呟きだけでなく、どんな友人がいるのか、同性の友人が多いかどうか、友人から信頼されていそうな人物かどうかまで確認したそうだ。

“最低限の警戒の仕方”の共有を


未衣子さんは、SNSでの出会いについて「基本的に警戒心を持って然るべきだと思います」と前置きした上でこのように指摘する。

「ただし、それは単に『ネットで人に会うのは危険だから止めましょう』という意味ではありません。わたしたちの世代は、すでにSNSを通じて人に会うことが必ずしも危険でないと知っています。それでも、“危険を回避するために持つべき最低限の警戒の仕方”については周知されていないのではないでしょうか」

SNSでの出会いは一概に危険なものではないが、一概に素晴らしいものでもない。だからこそ警戒心は怠るべきではないというのが彼女の考えらしい。

「明るいことばかりつぶやく方が明るい人物でなく、素敵なことばかりつぶやく方が素敵な人物でなく、ネガティブなことばかりつぶやく方がネガティブな人物でないのは、Twitterを始めとしたSNSの醍醐味です。インターネット上の出会いを特別視も軽視もすることなく、身の回りにある人間関係と同じ程度に、他者を警戒し、あるいは他者を信じてみるべきだと考えています」

……未衣子さんの発言の中で、「“危険を回避するために持つべき最低限の警戒の仕方”については周知されていない」という指摘はとくに重要なものだろう。マッチングアプリも流行し、いまやインターネットを通じて知り合った相手と実際に会ってみることは当たり前のことになっている。それにも関わらず、オフ会での自衛の仕方というのは、確かに認知・共有されている印象がほとんどない。ネットで検索するにしても、なんと検索するのが正解なのか思いつかないくらいだ(「オフ会 自衛」で検索したら、自衛官とのオフ会情報ばかりヒットした)。


SNSを通じた出会いが一般的になった現代で、いくら「オフ会は危険だ」と訴えたところで世の流れは変わらない。それよりも未衣子さんの言う通り、“危険を回避するために持つべき最低限の警戒の仕方”を皆で考えて共有していく方が現実的かつ建設的なのかもしれない。

(原田イチボ@HEW)
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