
今や世界的レベルで人気の日本のラーメン。もちろんニューヨークでも、一風堂や一蘭、せたが屋といった日本の有名ラーメン屋が営業しており、米国発のラーメン屋と競いながら現地でのラーメンブームをけん引している。
NYの家系はその名も「E.A.K.(イーエーケー)Ramen」
2017年5月、ニューヨークに家系ラーメンが上陸した。その名も「E.A.K. Ramen(イーエーケーラーメン)」。家系と言えば神奈川を中心とした関東圏では知名度が高いコシの強い太麺と、豚骨しょうゆベースのスープが特徴のラーメンだ。こんなローカル色の強いラーメンが、米国展開できるご時世になったとは。あの恐ろしく強い麺のコシと、弱った胃腸にはきつい豚骨しょうゆベースのスープが、実際に現地で再現できているのかと思い突撃したら……サーブされたのは見まごうことなき本物の家系ラーメンだった!
スープを一口含んだ瞬間、凝縮された豚骨ベースのうまみとしょうゆの風味が口の中に広がる。家系ラーメン特有のややとろみのある柔らかい舌触りも健在だ。海外生活の長い日本人なら感動すら覚えるであろう本物の味。家系特有の豚骨としょうゆ、脂の三すくみ状態のスープは現地人に受け入れられるのかと周りを見渡すと、日本人客は自分だけ。店があるのはおしゃれなカフェやレストランなどが多いグリニッチ・ビレッジ地区にある。ニューヨーカーの懐の広さを感じざるを得ない瞬間だった。
新感覚・うにマッシュルームラーメン
E.A.K.ラーメンが生粋の日本の味を再現するラーメン屋であるならば、「JUN-MEN RAMEN(ジュンメン・ラーメン)」は日本の枠を超越したラーメン屋だ。マンハッタン・チェルシー地区にある同店の看板メニューとして掲げられているのが、まぜそばの「うにマッシュルームラーメン」である。

ラーメンにウニだって? しかもキノコ? 恐る恐る注文してみると、確かに麺の上にはウニとキノコが。他にはネギ、フライドオニオン、ほのかにトリュフオイルが香る。日本でもとりあえずウニを何かに載せてみる風潮はあるが、しかしラーメンに載せてしまうとは……。ラーメンとウニというクールジャパンの融合は、非常に複雑な味を作り出していた。
スープのない混ぜ麺というスタイルとトッピングされる具材を見ると、ラーメンというよりはパスタの印象が強い。しかし麺は完全なる中華麺を使う。こんな和洋折衷の具材を、うまくまとめて料理として成立させてしまう所に、中華麺の実力を感じざるを得ない。新感覚ヌードルの誕生だ。
ニューヨークのど真ん中にある田端と日暮里ラーメン
山手線の中でも決してメジャーとは言えない田端駅。その田端駅の名を冠したラーメン屋「TABATA(タバタ)」が、ニューヨークの中心部タイムズスクエアの目と鼻の先にある。なぜタバタなのかを同店で聞いたところ、同店を営むミャンマー人店主が、昔、田端駅近くのラーメン屋で修業していたからだそうだ。

店の名前を冠した看板メニュー、タバタラーメン(ニッポリではニッポリラーメン)は、スタンダードな卵麺を使い、スープはココナッツミルクベースで仕立てられている。添えられたパクチーは店主の故郷であるミャンマーのエッセンスを感じる。筆者が田端(東京都内の方)近辺で食べたラーメンとは随分と趣は異なるが、これはこれで癖になる味である。エキゾチックな味に慣れない人、または興味がない人向けに作られた普通のラーメン(しょうゆ、塩、みそなど)もレベルは高かった。同店主は、日本では11年間もラーメン屋で働いたとのこと。日本での頑張りがニューヨークで花咲いたと言える。

市民と店の強い探求心でニューヨークでは続々と新しいラーメン屋と味が育っている。すべてのラーメン屋のレベル高いわけではないけれども、そこには日本の懐かしさと新しい発見が常にあるのだ。
(迷探偵ハナン)