海外では鶏むね肉のほうが高いらしい、実際に見てきた


主婦の節約レシピなどでよく取り上げられる「鶏のむね肉」。チーズやしそを挟んでフライにしたり、サラダの具にしたりと美味しく食べられるレシピはあるが、もも肉と比べると人気はどうもいまいちの感がある。


ネットの口コミなどを見てみても「もも肉のほうがジューシーで美味しい」という意見はやはり多い。むね肉が評価されない理由は「ヘルシーだが味が淡白でパサパサしている」というもので、中には「むね肉を料理する時は皮の部分を別に買って混ぜると美味しくなる」なんて、もも肉化を強要する意見まである。

ところが、イタリアではもも肉よりもむね肉のほうが人気があり、スーパーでも高級なものとして売られている。それってどういうことなのだろうか。むね肉の名誉と尊厳を守るために、ちょっと見に行ってきた。

価格差は1.5〜2.1倍、イタリアのむね肉は高級品


まずはむね肉のほうが高く売られているという事実を確認するべく、近くのスーパーに足を運んでみた。早速精肉コーナへ行ってみると、もも肉が1kgあたり6.29ユーロ(およそ817円/1ユーロ=130円で計算)に対し、むね肉は9.69ユーロ(およそ1,259円)で、その価格差はおよそ1.54倍だ。

海外では鶏むね肉のほうが高いらしい、実際に見てきた
もも肉、1kgおよそ817円

海外では鶏むね肉のほうが高いらしい、実際に見てきた
むね肉、1kgおよそ1,259円


東京市場の2017年10月のむね肉の平均卸価格が1kgおよそ322円前後、もも肉の卸値が584円前後。その価格差が1.81倍であることを考えると、だいたい日本におけるむね肉・もも肉の立場と逆転しているといえるだろう。

念のためいくつか別のスーパーも訪れてみたが、もも肉は1kgあたり5.48〜6.62ユーロ(およそ712〜860円)で、むね肉は9.69〜13.99ユーロ(およそ1,259〜1,818円)、価格差は1.54〜2.11倍となっており、いずれの店でもむね肉のほうが高く売られていた。

日本は例外?欧米諸国ではむね肉の人気が高い


実をいうと、この価格の逆転現象はイタリアに限ったことではなく、アメリカやイギリスなど、むね肉のほうが高いという国は少なくない。その理由には、そもそも欧米では脂肪分の多い肉が好まれないという背景がある。

もも肉はむね肉に比べ、加熱してもジューシーでしっとりした食感を保つことができるが、その秘密は脂肪分の違いにある。脂肪分の多いもも肉は加熱しても肉が縮みにくく、水分も流れ出にくいためしっとりジューシー。
それに対して、脂肪分の少ないむね肉は加熱すると肉が縮みやすく水分が流れ出るため、パサパサと固い食感になりやすいのだ。
ただ、欧米では脂肪分が多い肉はヘルシーでないというイメージが強く、需要が少ない。結果として、今回のようにもも肉よりもむね肉のほうが高級な部位として扱われることになる。

ちなみにこの肉の好みの傾向は牛肉や豚肉でも同じで、脂身が少ないほうがおおむね価格は高い。以前、筆者がイタリアの肉屋でステーキ肉を購入した時は、脂身の部分を丁寧にカットして赤身のみの状態で渡されたことがある。その脂身が美味しいのに……。

最近では日本でもコンビニのサラダチキンがブームになるなど、むね肉が注目される機会は増えてきている。ただ、その売り文句が「むね肉とは思えないほどしっとりしている」だったりすることを考えると、やはり日本人の肉の好みは「しっとりジューシー」なのだろうなと思う。


もも肉のようにしっとり!むね肉を美味しく食べる小ワザ


スーパーによってはもも肉の半額ほどの値段で売られていることもあるむね肉。しっとりジューシーに美味しくいただくには、どうすればいいのだろうか。

肉をしっとりさせる小ワザはいくつかあるが、特別な材料を必要とせず手軽にできる方法としては「ブライン液」を使った方法がおすすめ。ブライン液の作り方は以下の通り。


・水:100cc
・塩:5g
・砂糖:5g

たったこれだけ。どこの家庭にもあるうえ、塩と砂糖が同量というのも覚えやすい。ジップロックなどの袋にブライン液とむね肉を入れて30分程度、できれば一晩漬け込んでおくといい。塩はタンパク質を分解して肉を縮みくくし、さらに砂糖はそのタンパク質と水分を結びつけるため、加熱しても水分を保持しやすくなる。ちなみに、むね肉を1枚まるごと漬けてしまうと液が中まで浸透しにくくなるため、あらかじめ小口に切ったり、開いておくことをおすすめしたい。

余談だが、実は旨味成分であるイノシン酸はもも肉よりもむね肉の多いのだとか。そう言えば噛めば噛むほど味わい深いのはむね肉のような気もする。日本にいるからこそ手軽に味わえるむね肉。ひと手間かけることで「しっとりジューシー」になるなら、食卓の主役になれる日もそう遠くはない?

(鈴木圭)
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