真紀子(仲間由紀恵)側に過剰な加担をしてきた週刊誌記者の小嶋(青柳翔)は、今回、日向(井上真央)たち学校側に有力な情報を提供してきた。
このドラマの大きなテーマの一つ“毒親”。日向の母親・尚子(手塚理美)は、ずっと怖い母親として描かれていた。
「ママに無断で男の子を好きになったりしない」「ママが良いと言ったお友達以外とは遊ばない」など、幼少期の行動を縛るために日向に強制的に書かせていた「明日の約束ノート」はその代表例で、今でも小さなことで怒り狂い、キツイ言葉を日向にぶつけている。日向も彼氏の和彦(工藤阿須加)に「あの人は良い母親なんかじゃないよ」とハッキリ言い切っている。

やばい、あんなに悪い奴だったのにかわいそうに見えてきた!
しかし、第4話(11月7日放送)辺りから尚子の母親としての良い側面が見えるようになる。高校生の日向が神社の石段から転げ落ち、それをかばったことが原因で、尚子は今でも腕が不自由だというエピソードが明かされたのだ。さらに今話、日向は風邪を引くと優しくしてくれる尚子の姿を思い返した。
尚子は毒親だ。絶対的に悪い部分をもっている。「明日の約束ノート」にしろ、日向への言動にしろ、絶対的に悪い。
今話、日向は和彦からのプロポーズを受けた。「学校のことは落ち着いてからね」と条件付きではあるが、日向はこれを受けることにする。
嫌な母親だけど放っておけない理由はある、そんな母親と一緒に新婚生活を送ることになったら今度は和彦がかわいそう。こうして日向は、事件とはまた別の大きな悩みを持つことになってしまった。
「そこにもう一つ、何かしらの問題を和彦が持ち込みそう」というのはさておき、この問題に着地点があるとしたら、今までの言動全てを反省した尚子が日向から子離れを果たす“成長”くらいだろう。そうなると、尚子は最終的に良い人物として、描かれることになるはずだ。
真紀子もただの悪い奴ではないはず
じゃあもう一人の毒親、真紀子はどうなるのだろう?現時点で悪い部分しか見えてきていないし、これからもドンドン悪事が発覚しそうな真紀子だが、こちらだけ悪い人として最後までいくということはさすがにないはず。何かしら“同情の余地”が描かれるはずだ。
そこで「真紀子もかわいそうな人なのね」「真紀子、一人で頑張ってたんだね。かわいそう」となるような良い感じのエピソードやシーンが出てきたら、尚子・日向の関係と同じく、めでたしめでたしといった雰囲気になりそうだが、真紀子の場合そうはいかない。なぜなら、圭吾(遠藤健慎)が死んでしまっているからだ。
つまり、真紀子かわいそう、かと言って死んだ圭吾はもっとかわいそう、巻き込まれたみんなもかわいそう、やっぱり真紀子が悪い、みんな少しずつ悪い、というとてつもなくやりきれない形で最終回を迎えそうな雰囲気がすごくするのだ。
いっそのこと、真紀子が完全に悪者でいてくれたら、答えがハッキリして観ているこっちも楽なんだけど、どうやらそれは許してくれなそう。
小嶋を清々しく感じてくる
バスケ部キャプテン長谷部(金子大地)の暴行動画を流出させた犯人として、現在、霧島(及川光博)が怪し過ぎるくらいに怪しい。本当に霧島が犯人だとしたら、おそらく「圭吾の自殺を、自分のクラスではなくバスケ部におしつけたい」が理由だと思うが、そこにはまた、やり切れない動機が隠れていそうだ。ただの悪い人物として描くのには、怪し過ぎる。
それと辻先生(神尾佑)と今話のラストで長谷部を襲った犯人、これも何となく怪しい人物はいるが、絶対にやり切れない理由なのだろうという伏線がビンビンに貼ってある。いろいろな人物の感情に寄り添ってみると、週刊誌記者・小嶋の悪っぷりがホント清々しく感じられる。小嶋みたいのばっかりだと薄っぺらくなっちゃうけど。
(沢野奈津夫)