「明日の約束」(火曜21時〜 カンテレ制作)第9話。

「明日の約束」というタイトルは一見ポジティブだ。
マイナス要素が一つもない。しかし、このドラマがスタートしたとき、「明日の約束」が毒親・尚子(手塚理美)が幼少期の日向(井上真央)を縛り付けるためにつけていた交換日記の名前だったと明かされ驚いたのを覚えている。だが、最終回を終えてこのタイトルがもう一度すごい。
「明日の約束」最終話 タイトルの意味がもう一度凄かった、自殺した圭吾が本当に求めていたもの
イラスト/Morimori no moRi

「明日の約束」なんて良いタイトルなのだろう


物語が進んでいくと、圭吾(遠藤健慎)の自殺を乗り越え、キャラクターたちが少しずつ前を向いていく姿が描かれていった。事件を他人のせいにするのではなく、自分自身と向き合い、自分の闇を吐き出して消化することで、前を向ける。明日を生きる約束が出来ると。明るいタイトルかと思ったら暗かったけど、やっぱり明るい意味だったのだ。


最終回は、主人公・日向がついに闇を吐き出す。今まで希美香(山口まゆ)や、香澄(佐久間由衣)など様々な人物の心の闇を受け止めてきた。、それに感化されたのか、日向がついに前を向こうとしたのだ。

その闇を吐き出す相手は、一番相容れなかった圭吾の母・真紀子(仲間由紀恵)だった。日向は、尚子の手が不自由になった経緯を、おそらく人に初めて話した。圭吾が自分に告白したこともすべて話した。
真紀子は自分の過ちを受け入れ、前を向くために、自殺をやめた。

もう一人、日向が闇を吐き出した相手は母・尚子だ。手を不自由にしてしまったことを謝り、自分の意志を言葉にして、尚子の愛情の押し付けを指摘した。唇を震わせながらも、しっかりと眼を見て、「もういらない」と。しかし、尚子には伝わらない。いつもの調子で日向を罵った。


ここがすごい。最終回としては、ここで尚子が泣いて謝ればきれいに収まるはず。だが、尚子は謝らない。尚子はそもそも日向の話を聞かないのだから、そう簡単に心に響くわけがないのだ。

じゃあ、この親子関係はバッドエンドだったのだろうか? 全十話の結果としてはそうだろう。だが、ここでこのドラマのタイトル「明日の約束」という言葉の意味が効いてくる。


希美香とその毒親・麗美(青山倫子)は距離を置いたことで、関係を見直すことが出来た。真紀子は圭吾を失ったことで、圭吾への愛情を見直し、英美里(竹内愛紗)との関係を修復させる兆しを見せた。同じように日向は、最終的に家を出ていくことで、尚子との関係を見直すことにしたのだ。

日向は、「距離を置いて、もしできたら、いつか謝ってほしい」、そう尚子に伝えている。これは約束だ。尚子は受け入れなかったし、一方的なものになるが、日向にとってこれは「明日の約束」なのだ。
現時点で上手くいかなくても、きっといつかはわかりあえる。なんて良いタイトルなのだろう。

圭吾の告白


圭吾はなぜ死んでしまったのだろうか? それは結局ハッキリとしない。そして、日向に告白した理由もわからなかった。本当に日向のことが好きだったのだろうか?最後に自分の意志で行動したかっただけなのだろうか?もしかしたら、同じ毒親持ちという匂いをかぎ取ったのかもしれない。いずれにしろ、圭吾は明日生きる理由、生きる約束が欲しかったのではないかと、今さら思う。(沢野奈津夫)

『明日の約束』動画は下記サイトで配信中


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『明日の約束』キャスト、スタッフ、主題歌


【キャスト】井上真央 及川光博 工藤阿須加 白洲迅 新川優愛 佐久間由衣 ・ 青柳翔 羽場裕一 手塚理美 仲間由紀恵

【スタッフ】
脚本:古家和尚
音楽: 眞鍋昭大
主題歌(オープニング曲):東方神起「Reboot」(avex trax)
プロデューサー:河西秀幸 山崎淳子
演出:土方政人 小林義則 池辺安智
制作協力:共同テレビ
制作著作:カンテレ