spoon.2Diはアニメの話題に切り込むフットワークが軽い上に、デザインセンスが毎回よいので、見ごたえあります。

もう一つ今話題になっているのが、Super Groupiesの『おそ松さん』コラボイヤリング&ピアス。
テーマは6つ子の自意識。「キャラをイメージ」じゃないあたりのひねくれ、大好きです。

分かる人にだけわかるネタの盛り込み方がうまい。
チョロ松のライジングした自意識(1期参照)とサイリウムのデザインがちゃんとオシャレなのは見事。
松原秀節全開の十四松と彼女ちゃん
Bパート「十四松とイルカ」。ツッコミがゼロな怪作だ。
イルカショーを見て感動した十四松は、イルカになりたいと決意。
みなの反対を押し切ってわがまましていたところを、彼女(本名不明)に拾われ、イルカになる訓練をすることに。
彼は特訓を繰り返し、イルカショーにゲリラ参加する。
ラストは他のイルカと一緒に、全裸で海に行ってしまう。デカパン館長もなぜか大喜び。
辻褄とかまるで無視な展開だ。
脚本を書いている松原秀は、元々はナイナイのオールナイトニッポンの常連ハガキ職人。
そこから「エンタの神様」などの構成作家を経て、『秘密結社鷹の爪』『銀魂°』などで脚本を手がけている。
この経歴を見ると、序盤の「イルカになりたい」「いやむりだろ!」というコント的なやりとりも、ラストでかかった挿入歌「イルカになった青年」の「ぶらぶらぺちぺち」などのシモネタのルーツも見えてくる。
曲調と歌詞は思いっきり城みちるの「イルカに乗った少年」のパロディなので、聴き比べてみてください。
Bパートは、冒頭で「松倫」の文字を入れ、映画風に演出。いつもパラレルだけど、特に今回は本筋から離れていますよ、という念押しをしている。
そのせいもあって、十四松だけは本人なのに、他の5人はじょし松さん(1期の六つ子女体化。ここでは十四松もガングロギャルだった)として登場。
十四松が1期9話で出会った、自殺しかけていた「彼女」が、イルカ志望の十四松担当トレーナーになっているなど、劇中劇的な作りになっている。
なので性格やキャラ設定は大きく異る。
十四松は元々、ドブ川をバタフライで泳ぐくらい水泳が得意なのに、こちらではカナヅチだ。
再登場した彼女の存在感
「彼女」が出ているのがとても引っかかる。
というのも、『おそ松さん』での彼女の存在は非常に大きく、2期でも「唯一恋人的な位置になった存在」として引き合いに出されているほどだからだ。
ファンに愛され続けているキャラで、十四松とセットのグッズが公式から出ているほど。

1期9話の「恋する十四松」で登場した彼女。
自殺寸前と思われるところで十四松に出会い、彼女は救われた。
すっかり仲良しになった二人。
中盤、おそ松はAVコーナーで何かを発見し、十四松と彼女の恋に口を出さなくなる。
後半、十四松の告白を断り、彼女は実家に泣きながら帰ってしまう。
電車の中。左手首に巻いていた包帯は無くなり、十四松のリストバンドをしている。
これを踏まえた上で、今回のイルカ回を見るとどうも気になるシーンが多い。
十四松の「イルカになりたい」という夢は、叶いようのない、ありえない夢だ。
「努力すれば絶対どうにかなる」という思想を真っ向から壊すところからはじまる。
1期の彼女は、かなり遠い田舎から上京してきたようだった。ということはそれだけの何かがあって、頑張ってきたのだろう。
だが彼女は、自殺するほどに追い詰められた。叶わぬ夢はあるのだ。
彼女が自殺しようとしていた崖近くに夫婦岩が出てくるが、縄は切れていた。
今回、水族館の近くには、縄で結ばれた夫婦岩がある。
イルカになった十四松は、全裸で泳いでいた。恥じることのないその技に、多くの観客が感動した。
1期の彼女は、AVに出ていたのかもしれない。いわばこれも、裸だ。
「イルカになった青年」では、限界を感じた時に海に出て名前を呼べば、十四松はすぐにとんできてくれる、と歌っている。
それは「君と笑うため」であり、落ち込むのはばからしいと伝えるため、らしい。
限界だった1期の彼女に寄り添い助けたのは、十四松の笑ってほしいというひたむきな思いだった。
1期9話で起きたやり取りの裏にある、あまり具体的に描かれなかった二人の心のアンサーとしても見られる回だ。
彼女がイルカ十四松を応援して「行け!」と叫びながら泣いているシーンは、絵的にだいぶ間抜け。
だが、都会にでて挫折した彼女のことを重ねて考えると、イルカ十四松が夢をかなえて思い切り飛ぶ解放感は、救いに近い。
イルカになって飛び跳ねた十四松をおそ子とカラ子が笑顔で見ているのも、1期で落ち込んだ十四松を励ましたシーンを思い出す。
にしても、彼女がいい活躍をした後のCパートで、1期24話で火花を散らしたトト子とにゃーが、チビ太の屋台で女の戦いを繰り広げるあたりの泥臭さが『おそ松さん』らしい。
今回はまだ接触したばかり。続くらしいので、これは非常に楽しみ。血で血を洗え!
(たまごまご)
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