風呂好きによる風呂好きのためのトークライブ「いいふろまつり2017」が、11月26日「いい風呂の日」に東京・渋谷の東京カルチャーカルチャーで開催。
牛乳石鹸社員によるトリビアトークショーをはじめ、現役の銭湯絵師によるライブペインティングなど、お風呂に徹底的にこだわった企画がくりひろげられました。
ウェルカムドリンクならぬ「ウェルカム石鹸」

銭湯といえばせっけん!? ということで、会場入り口では巨大な牛乳石鹸の箱がお出迎え。
せっけんと記念写真を撮れるコーナーまで。

モニターには工場で石鹸がイチから作られる様子を記録したVTRまでながれています。
工場見学モノ、弱いんですよねぇ……。思わず立ち止まって見とれてしまいそうになります。
さらに会場を進むと…… えっ?! 銭湯?!

の、精巧なジオラマ。おなじみ富士山の銭湯画から壁の広告まで、見事に再現されています。
テーブルに案内されると、そこにはウェルカムドリンクならぬ「ウェルカム石鹸」が。

ううむ、湯気のごとくムンムンただようお風呂愛にはやくも圧倒されそうだ……
コテコテ関西弁の開発者が繰り出す「牛乳石鹸トリビア」
ウェルカム石鹸もほどほどに、イベントがスタート。
トークゲストとして登場したのは、「♪牛乳石鹸、よいせっけん」のCMソングでおなじみの「牛乳石鹸」製造元・牛乳石鹸共進社(大阪市)で開発担当を務める春名洋至さん。
コテコテの関西弁で繰り出すトリビア満載のトークに、会場の空気がいっきに持っていかれます。

春名さん「牛のマークでおなじみの牛乳石鹸ですが、製品には『赤箱』と『青箱』とふたつのタイプがあるんですよ。
会社にお問い合わせの電話をいただくことがあるんですが、そのなかでも特に多かったのが『赤箱と青箱、どこがどう違うの?!』というお電話で。もう“殺到”という勢いで」
ああ、たしかに……。
実際のところ、赤箱と青箱、何がちがうの??

春名さん「赤箱と青箱、どちらもミルク成分配合なのは同じですが、赤箱は『しっとり』とした洗いあがり、青箱は『さっぱり』とした洗い上がりになります。
香りや泡立ちも違います。赤箱にはローズの香りでクリーミーな泡。うるおい成分のスクワランが配合されています。対する青箱はジャスミンの香りでソフトな泡。
おもしろいことに、関西では赤箱が人気で、関東では青箱が人気なんです」
こんなところで東西のちがいが出るのか……
春名さん「これまで赤箱も青箱もおなじ牛のロゴしか書いていなかったので、『どこがどう違うの?!』という問い合わせが殺到してたんです。そこで両者のちがいをパッケージに書くようにしたら、問いあわせの件数自体が激減しました」
箱のちがいが問いあわせの大半だったというのもスゴい話です。みんなモヤモヤしてたんですねぇ……。
春名さん「そんな牛乳石鹸のパッケージなんですが、実は1928年の発売開始からかなりのマイナーチェンジを繰り返しているんです」

春名さん「トレードマークの牛ですが、初代のパッケージでは乳をドバドバ垂れ流すイラストでした。『せっけんなのに不衛生に見える!』というクレームが出て、高度成長期の1967年からは都会的な、ちょっとスマートな牛になりました。『Beauty Soap』というキャッチコピーもこのころから添えられています」


(都会的……)
春名さん「1974年、オイルショックのころには『不景気な時代に華やかさを提供しよう』ということで、赤箱の赤色を明るくして発売していたことがあるんです。

たった2年だけ存在したまぼろしのパッケージ。いま持っている人がいたら相当な価値になりそうですね。
なにげなく使っているせっけんに隠された意外なストーリーの数々に、会場からはおどろきと感心の声があがっていました。
銭湯絵のライブペインティング、お風呂謎かけ…
そんなトークが繰りひろげられている横では、「銭湯絵師」中島盛夫さんによる「銭湯絵」のライブペインティング。
銭湯といえば思いうかぶ、湯船の向こうの大きな富士山の絵をイベント中に描いてしまおう、という試みです。

ほとんど下描きなし。まるで何かを書き写しているかのように、一切の迷いなくカンバスに富士の景色を描いていきます。



ものの1時間で、見事な富士山が姿をあらわしました!


さすがは熟練の技。描き始めるときにはもう、頭の中では完成しているんでしょうね。
中島さんをふくめ、銭湯絵師はいま日本に2人しかいないそうです。
どうか次を担う人が現れて、湯船につかりながらずっとこの絵を見られるようになってほしいです……。
そのほか、イベントではお笑い芸人・ねづっちさんによる「お風呂謎かけ」に、「銭湯ののれん」が当たるじゃんけん大会も。


「お風呂が好き」という気持ちで集まった人々が、休日の昼下がり、渋谷のどまんなかでいいお湯かげんの空気に包まれました。
(天谷窓大)