
暴力を振るった理由とキレた理由
結婚するに当たって、お互いの親を会わせるための食事会を設けた日向と和彦。しかし、日向は仕事のトラブルで、来られなくなってしまう。ずっと待っていた母・尚子(手塚理美)に電話で罵倒された日向は、そのことで和彦に愚痴をこぼす。仕事のことには一定の理解を示す和彦だったが、親を悪くいう日向に暴力を振るってしまう。
ずっと良い人で、ずっと日向の言葉を尊重してきた和彦が、なぜいきなりDVを行ってしまったのか。公式ホームページのキャラ紹介の欄に「兄の家庭内暴力を目の当たりにする」とある。おそらく和彦は、兄の生で暴力というものが脳裏に焼き付いてしまったのではないだろうか。和彦は、兄の暴力に強い嫌悪感を示していたはずだが、日向に本気で怒りを感じてしまったことで、暴力という間違った説得方法を思い出してしまったのだ。
とてつもない良い人がたまに怒ると、キレ方がわからずにグダグダになるということがあるが、和彦の場合は、兄を見て暴力というキレ方だけ脳にこびり付いてしまっていて、それを実践してしまったのだろう。これがDVを行ってしまった理由だと思う。
では、なぜキレてしまったのか?これも和彦と兄の関係性から来るものだと思う。
このことから、両親は兄には過干渉で、和彦を放置児のように扱っていた可能性が高い。愛情を満足に貰えなかった和彦は、例え形は歪んでいても尚子から愛情を受け取り、その愛情を鬱陶しがる日向を許せなかったのだ。和彦の「良い母親じゃないか」と日向をなだめるために言った言葉は、和彦にとって本気の言葉だったのだ。
二重人格説
このDVを行ってしまった理由に加え、和彦は二重人格の可能性も秘めている。これも前話になるが日向が和彦の実家に来たシーンで、明らかに不自然なやりとりがあった。
和彦・母「ほんと素敵なお嫁さん見つけたわね、和彦。早く会わせたいいうだけあるわ」
和彦「え?会わせろって言ったのそっちでしょ?」
和彦・母「何言ってんのよ。急に予定空けろって電話してきておいて」
この不自然な会話の原因は、二重人格くらいしか想像つかない。母が二重人格の可能性もゼロではないが、この場合、和彦が記憶を無くしていた可能性が高いと見るのが普通な気がする。
過干渉と放置児
二重人格説は置いておいたとしても、過干渉と放置児という関係は、圭吾(遠藤健慎)と英美里(竹内愛紗)にも通じる。圭吾の死の原因はまだわからないが、母・真紀子(仲間由紀恵)が圭吾に過干渉だったことは間違いない事実。
このことから英美里は、自分を傷つけるために、援助交際に走ってしまう。それがバレた英美里は「お願いだから親にこのことを言わないで下さい」と日向に懇願する。親にバレたくないというのは普通の女子中学生の心理に見えるのだが、これの理由がまた辛い。
「それでも迎えに来てくれなかったら、あの人にとって私は本当に……」
放置児が1番恐れるのが、援助交際をしようとする見知らぬおじさんではなく、母親の無関心ということだろう。第7話はこのセリフが全てな気もする。和彦も英美里と同じような心境で育っていたとしたら、日向にキレてしまった理由は、わからなくもない気もする。
毒親、歪んだ愛情を受けた子、そのせいで放っておかれた子、この三角関係が真紀子家と和彦家の共通点でキーポイントだ。この二家族が日向と尚子の関係にも何かしらの良い影響を与えて、ハッピーエンドになってくれれば観ているこっちもスッキリするのだが、「明日の約束」も次で8話。あとたった3話でこの闇だらけのお話をどう畳むのだろう。まだミッチーの闇も浮かび上がってないし。
(沢野奈津夫)