こんな会話を交わしていた1999年が、まるで昨日のことのように思い出されます。
振り返れば、18年前の今頃。
高揚感と緊張感があった1999年
日本では平安時代以来となる節目の年越しを迎えられる幸運に偶然にも立ち会えるのです。ついつい気分が高まる気持ちも分からないではありません。
それと同時に、誰にとっても未体験な瞬間を迎えるに当たり、不安感のようなものも微かにありました。
それは、1999年の大晦日。時計の針が「0:00」を差すたびに、1995年12月23日の朝へ逆戻りしてしまう「リフレインプレイヤー」のドラマ『君といた未来のために~I'll be back~』(日本テレビ系・1999年1月放送)で描かれていた、その瞬間を境に、どこか異世界に突入するかのような得体の知れない不安です。
今まで続いてきた1000年間が終わった時、果たして、何が起こるのだろうか……。「ノストラダムスの大予言」は7月に回避済みとはいえ、この時期は、高揚感と緊張感が交錯した不思議な心持ちで過ごしていたのを記憶しています。
この恐怖の大王到来やリフレインプレイヤー化することよりも、ことさら現実的な危機として指摘されていたのが、「2000年問題」でした。
「2000年」をコンピューターが「1900年」と誤認!?
「いつもの年末と、ちょっと違った準備をお願いします」
1999年の暮れ、時の首相・故・小渕恵三氏が出演していたこんなメッセージ入りの政府広報のテレビCMが、盛んに放送されていたものです。
2000年問題……。別名「ミレニアム・バグ」「Y2K問題(Yはyear=年、Kはkilo=千の意味)」などと呼ばれていたこの問題は、「2000年」をコンピューターが「1900年」と認識してしまうことによって生じるとされていた誤作動の総称。
1960年代から1980年代にかけて制作されたコンピューターのプログラムというのは、年計算などの負担を減らす目的で、西暦を下2桁で処理する設定になっていました。たとえば、1986年を「86年」といった具合に。
プログラムを懸命に修正し、危機を回避していた
しかし、気付けば1999年を迎えてしまい、大慌てすることとなったのです。当時から既にさまざまな産業へIT技術が導入されていたため、どんな不具合が生じるのかと世間は戦々恐々。
電気・水道・ガスといったライフラインの停止から、鉄道、航空管制など各種交通機関の乱れ、果ては、弾道ミサイルの誤発射までが想定され、毎日のようにニュース・情報番組で危機感をあおるような報道がされていました。
特にライフラインに関しては、先述の政府広報のテレビCMで「念のため、2~3日分の水や食料を確認してください」と注意勧告までされていたものだから、非常食を買い込む人が続出。万が一の備えも整えて、国民全員が固唾を飲み、1000年に1度のカウントダウンを見守ったのです。
しかし、ご存じの通り何も起きず。「何だよ…さんざんビビらせやがって…」。当時はそう思ったものですが、実はこれ、裏で懸命にプログラムを書き換えてくれたエンジニアさんたちの努力のたまものなのだとか。まさに名もなき英雄です。
おそらく、次にこうした危機が生じるのは7982年後。桁が5つになる「10000年問題」で、未来人たちはきっと、18年前と同じようにワチャワチャしていることでしょう。
(こじへい)