「デュエル」
遊戯王世代としては懐かしいこの言葉、12月9日にフジテレビ系列で放送されたサッカー東アジア選手権において、さかんに連呼されていました。意味としては「競り合いにおける球際の強さ」のことです。


思えば、歴代のサッカー日本代表というのは、こうした戦術的特徴を一言で表す言葉によってある種のキャラ付けがされてきたものです。
そこで今回、サムライブルーが過去にどんなキーワードで語られてきたのかを、振り返っていきたいと思います。

ゾーンプレス(加茂ジャパン)


「ゾーンプレス」とは、一言で表すと、積極的で組織的な守備のこと。ボールを持つ相手選手に複数人数でプレッシャーをかける「プレスディフェンス」と、味方同士で相手選手のマークを受け渡す「ゾーンディフェンス」の2つを組み合わせた、加茂周監督オリジナルの戦術です。

当時このキーワードはメディアでさかんに喧伝されましたが、結果がついてこず。加茂監督がワールドカップ最終予選の最中に解任されたことで、死語と化しました。

フラット・スリー(トルシエジャパン)


日本がまず着手すべきは攻撃面の強化ではなく、守備戦術の徹底……。
そこは加茂監督と一緒ですが、フランス人監督・トルシエは、まったく別のアプローチを展開しました。


その名も「フラット・スリー」。最終ラインに3人のディフェンダーを水平に配置する戦術であり、「オフサイドトラップを積極的に仕掛ける」「ゾーンディフェンスをする」「スイーパーを置かない」などの特徴があります。それ以外にも、ラインの上げ下げに関する約束事、ボールの位置に応じた身体の向き、バックステップの踏み方などが事細かに決まっており、これまでにない緻密な戦術でした。

4バック全盛の時代に、徹底して3バックにこだわっていたため、当時多くのサッカー識者から「トルシエでは勝てない」と批判されていたものです。

黄金のカルテット(ジーコジャパン)


そして、「フラット・スリー」を一番批判していたのが、ジーコその人でした。彼はトルシエがやっていたオフサイドトラップ狙いの守備を「間抜けのディフェンス」と痛罵。
ジーコ曰く、「一流選手にかかれば、オフサイドトラップを掻い潜ることなど朝飯前」とのこと。
いかにも、元世界的スーパースターらしいコメントです。

じゃあ、ジーコがやったサッカーは何なのかといえば、攻撃は最大の防御とばかりに、代表監督就任最初の親善試合・ジャマイカ戦で、中田英寿、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一の攻撃的な選手4人を中盤に配置。自らが選手として出場したブラジル代表の「黄金のカルテット」を再現したのです。

これには、メディアもファンも大喜び。しかしまったく実用性のない布陣だったため、すぐに黄金のカルテットは解体。話題性はあっても戦術性に乏しかったジーコジャパンは、W杯で惨敗を喫したのでした。


考えて走るサッカー(オシムジャパン)


W杯で攻撃偏重の采配を振るった挙句、無様な1次リーグ敗退へと至ったジーコジャパン。この結果を受けて「“日本は弱小国”だと自覚する必要がある」という強烈なアンチテーゼと共に「“考えて走るサッカー”を実践すべき」との理念を掲げていたのが、オシムでした。

考えて走るサッカーに欠かせないのが、運動量と状況判断力に優れた選手。そのため、守備にも献身的なアタッカーや、複数のポジションをこなせるユーティリティープレイヤーなどが優先的に召集されていました。

このように各時代の代表を彩ってきた戦術的キーワード。果たしてハリルの「デュエル」は、言葉倒れになるのか、それとも勝利へ導く金言となるのか、注目していきたいところです。

(こじへい)