
繰り返される1日の中で、娘を救い出せ
国際的な名医ジュンヨンは、海外での仕事から韓国へと帰ってくる。その日は、以前すっぽかした娘ウンジョンの誕生日祝いをする日でもあった。ウンジョンはジュンヨンに対する寂しい気持ちからつっけんどんな態度をとっており、父親からのメールへの返事もそっけない。
用意した誕生日プレゼントとともに飛行機を降り、娘の元に向かおうとするジュンヨン。その道中で飴玉を詰まらせた子供を助けたり緊急の記者会見に対応したりしつつ、待ち合わせ場所に車で向かう。その道中、事故を起こしたタクシーを発見し、ジュンヨンは瀕死の運転手を助ける。するとそのタクシーの向こう側にはもうひとつの人だかりが。そこに行ったジュンヨンが見つけたのは、タクシーに撥ねられて死んだ自分の娘の姿だった。
と、ここでジュンヨンは飛行機の中で目覚める。娘の死は夢だったのか……。しかし飴玉を詰まらせる子供や記者会見の様子がまったく同じであることから、状況がループしていることにジュンヨンは気づく。大急ぎで待ち合わせ場所に向かうが娘は死亡、またしても飛行機の中で目覚めることに……。何度ループを繰り返しても娘を助けられないことに絶望するジュンヨンだったが、そこに同じタクシーの事故で妻を亡くした男ミンチョルが現れ、自分も同じ時間軸を繰り返していることを告げる。
『バタフライ・エフェクト』『ミッション:8ミニッツ』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』『時をかける少女』などなど、ループものの映画はとにかくたくさんある。で、どれも面白い。だいたいどの作品も「なんとかしてループを脱出する」という目的がはっきりしていて、そのために達成しなくてはいけない条件が提示されるという、見ていてわかりやすくて気持ちいいストーリーになるのでハズレがないのだ。さらに言えば、用意するセットや衣装の数が少なくて済んだりとか、そういう撮影する側の経済的な面でのありがたさもある。
『エンドレス』でもその面白さは踏襲されている。「娘が死ぬ→飛行機の中に戻る」のループの中で、ジュンヨンはけっこう惜しいところまで行く。このくだりはさながらクリアの難しいゲームを何度もプレイしているような雰囲気で、これぞループものの醍醐味という感じ。そして惜しいところまでたどり着いた結果、娘がタクシーで跳ね飛ばされる現場を生で目撃してしまうのが痛々しい。
一人で悪戦苦闘していたところに「お前もループしてるのか?」と別の人間が登場するのもループものによくある展開だが、『エンドレス』ではその登場の仕方がけっこう「えっ!?お前も!?」という感じなのも見どころ。そして娘と妻、それぞれの大切な人を救うため協力する2人……というところまでは普通に想像がつくのだけど、そこから先で予想以上の展開に持っていくのが『エンドレス』のすごいところなのである。
後半の展開についてはなんも言えません!
と、ここまで書いておいてアレなんだけど、この映画の後半の展開についてはネタバレが怖くて具体的な記述をすることができない……!が、けっこうびっくりするような、よくできた展開になっているので本当に各自見て欲しい! ストーリーが進むにつれてある男の過去に焦点が移り、一連のループの原因である事件が徐々に判明してくるまでの流れは非常にスリリングで、よく練られている。
そして驚くべきことに、娘と妻を取り戻すための何百回にも及ぶトライは、いつしかカーチェイス&血みどろバイオレンス祭りになっていくのである。最初はそんな話じゃなかったのに、いつしか「殺すしかねえ……!」というところまで登場人物たちを追い込んでいく手並みは本当に鮮やか、かつグルーヴ感がある。情念と因果と暴力がループものに実にうまく絡まっていく流れは、本当に韓国映画らしくてホクホクしてしまった。いやほんと、よくできているんですよ……。
上映時間が90分とタイトな『エンドレス』だが、そこに目一杯バランスよくスピーディーな構成をぶち込んで煮詰めたような一作だ。ここでどこが面白いのかを全部伝えることができないのが本当に歯がゆい! とりあえず見てくれ! 話はそれからだ!!
【作品データ】
「エンドレス 繰り返される悪夢」公式サイト
監督 チョ・ソンホ
出演 キム・ミョンミン ピョン・ヨハン チョ・ウニョン シン・ヘソン ほか
12月9日より公開
STORY
国際的な外科医ジュンヨンは出張から韓国に戻り、娘ウンジョンと待ち合わせるが、その途中で娘がタクシーとの事故で死亡してしまう。次の瞬間、ジュンヨンの時間は事故の2時間前まで巻き戻り、ジュンヨンはそれを利用して娘をなんとか助けようとするが……
(しげる)