「東洋初の地下鉄」として現在の銀座線が開通したのが、1927年の12月30日。地下鉄開通90周年にあたる当たる今年はさまざまな記念イベントが行われています。


その一環の「銀座線タイムスリップ~地下鉄開通当時にタイムスリップしよう!~」は、90年前をイメージした特別仕様車に乗り、タイムスリップ気分を味わうスペシャルイベント。普段は何気なく乗っている地下鉄の秘密に触れてきました。

90年前にタイムスリップ


やってきたのは上野駅にほど近い東京メトロの車両基地・上野検車区。地下鉄の車両基地ですが、地上にあります。冬の寒さが一段と厳しくなり冷え込む日曜の朝にも関わらず、大勢の人が集まっていました。なんと4000人以上の応募の中から、90人という狭き門をくぐり抜けて招待されたそうです。
地下鉄開通した90年前の銀座線に「タイムスリップ」してきた


銀座線は1927年に上野~浅草間が開通したことに始まる、日本で一番古い地下鉄。それから90年を記念して、当時走っていた「旧1000形車両」を模した特別車両が造られました。車両自体は最新式ですが、外観や内装の至るところにレトロなデザインが見られます。
地下鉄開通した90年前の銀座線に「タイムスリップ」してきた

地下鉄開通した90年前の銀座線に「タイムスリップ」してきた


運転士、車掌も当時の復刻制服を着て乗務をします。今となってはレトロな感じもしますが、無駄をそぎ落としたシンプルなデザインが当時最先端の「モダン」の表れだったかもしれません。さらに大正浪漫を思わせる袴、和装姿の社員・スタッフの方が各車両でアテンドし、雰囲気を盛り上げてくれます。
地下鉄開通した90年前の銀座線に「タイムスリップ」してきた


回送区間を体験できるのも隠れた魅力


いよいよ出発進行。「東京メトロ唯一の踏切」を渡って、検車区から上野駅の構内へと入って行きます。
普段は回送電車だけが走る区間なので、タイムスリップとは関係無くともプレミア感がある体験です。
地下鉄開通した90年前の銀座線に「タイムスリップ」してきた


今回のイベント車両は通常ダイヤの合間をぬって走ります。数分に一本という非常に過密なダイヤですが、通常運行は変更することなく時刻通りに走り、それを邪魔することなく合間をぬってイベント車両が走るという、魔術のようなことをやってのけているのだとか。

車両編成は銀座線おなじみの6両編成。他の地下鉄路線に比べると短い編成ですが、当時は現在のような大量輸送が見込まれておらず、低予算で駅のホームの長さも短く造られたからなのだそうです。

開通時の区間である上野―浅草間を走り浅草駅の構内に入ると、ホームの奥にある引き込み線へ。ここで先頭車両が1号車から6号車へ交代し、改めて終点の渋谷駅に向けて走り出します。


幻想的な予備灯点灯


このイベントの目玉のひとつは、「非常予備灯の点灯」です。昔の銀座線では万が一停電が起きた場合の被害を最小限に抑えるために、ポイントの近くで電気の供給レールが途切れていました。そのため、運行中何度も車両内の照明が消えてしまう時間がありました。このときにバッテリー駆動の非常灯が代わりに点灯をしました。現在の車両ではこういうことはありませんが、平成の初め頃まではまだ残っていたのだそうです。
地下鉄開通した90年前の銀座線に「タイムスリップ」してきた


特別仕様車両ではこの様子を擬似的に再現。
駅の手前あたりに差し掛かると、前方の車両から順々に照明がパッと消えて側面に備え付けられた非常灯が点灯します。ランプのような淡い光でどこか幻想的な雰囲気。
地下鉄開通した90年前の銀座線に「タイムスリップ」してきた


もうひとつの注目は「幻の駅」こと、銀座線萬世橋駅のライトアップです。銀座線には萬世橋(末広町~神田間)、神宮前(表参道~渋谷間)という現在は使われていない駅があります。90周年を記念してライトアップされている区間を徐行運転。青白く浮き上がったホームは、幻想的というより廃墟感がありちょっとホラーな風情がありますが、かなり貴重な体験!
地下鉄開通した90年前の銀座線に「タイムスリップ」してきた


あっという間の乗車体験


イベント車両は駅には停まらないので、意外と早く進んでいきます。参加した人たちも非常灯点灯の瞬間を上手くカメラに収めようと何度もトライをしているのですが、そうこうしているうちに表参道の駅を過ぎてしまいました。

地下から地上に出て来ました。銀座線名物の「地下鉄が高架の上を走る」区間。もう終点の渋谷駅です。
地下鉄開通した90年前の銀座線に「タイムスリップ」してきた


渋谷駅のホームから引き込み線へ引き上げたところで、クイズ大会が始まりました。東京メトロ各駅の「発車ベルクイズ」です。メロディを聴いて、どの駅の発車メロディか二択で答えるという難易度の高いクイズ。
しかし、よくよく聞いてみると全部、銀座線の駅を選べば正解のようです。
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まだまだ続く90周年イベント


名残惜しく終了した今回のタイムスリップイベント。普段は早く目的地に着いてほしいと思う地下鉄。他の鉄道ならいざ知らず、地下鉄で乗っている時間が楽しみと感じたのは初めての体験でした。
地下鉄開通した90年前の銀座線に「タイムスリップ」してきた


非常予備灯の点灯はイベントでしか行われませんが、90周年の特別車両は普段の銀座線でも走っているとのこと。運行数は少ないものの運がよければ乗れるかもしれません。90周年イベントは年が明けた1月24日まで続き、スタンプラリーなどさまざまなイベントや展示が行われます。知られざる地下鉄の魅力と歴史に触れてみてください。
(山根大地/イベニア)
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