今週のコーちゃん(瀧本美織)は、初恋の相手とチョイチョイ遭遇してドキドキしたり、アッサリ失恋したりと色々あったものの、相変わらず周囲の人たちの不幸エピソードが強烈過ぎて、主人公なのに影が薄い!

もしかして、越路吹雪が宝塚歌劇団に入ってからブレイクするまでの間って、あんまり情報ないの? と思ってしまうくらいだ。
「越路吹雪物語」第4週。身売りされても、父親が死んでも気丈な親友たち。一方コーちゃんは失恋で号泣
イラスト/北村ヂン

どうしていっつも八重ちゃんばっかりそんな目に!?


先々週から引き続き、疫病神に取り憑かれたかのように、不幸エピソードを連発していたのが、コーちゃんの新潟時代の親友・八重子(市川由衣)だ。

コーちゃんの舞台デビューの日には休みがもらえず見に来ることができなかった八重子。
このまま当分、奉公先の秋田から出ることも出来ず、コーちゃんとも会えないのかな……と思っていたら、今週はアッサリと宝塚にやって来ていた。

せっかく宝塚まで出てきたのに、コーちゃんが出演しない日だったので、結局コーちゃんの舞台は見られず……というプチ不幸をいきなり披露していたが。

それでも、喫茶店に行ったり、一緒に寝たり、コーちゃんの初恋話でキャッキャウフフと盛り上がったりと、楽しそうにしていたのだが、そこにいきなり最大級の不幸をぶっ込んできた。

「実家の借金を肩代わりしてもらう代わりに、満州に住んでいる知らない人の所にお嫁に行く」とのこと。

うわー……。ツルゲーネフの『初恋』を読んで恋に浮かれ、歌って踊ってたコーちゃんと比べてなんちゅう深刻さ。

色々と覚悟を決めた上でコーちゃんに会いに来ていた八重子は、涙も見せず淡々と報告していたが、「八重ちゃん、泣いていいんだよ」と言われると「イヤだー、知らねえ人と結婚なんかしたくねぇよ!」と感情を爆発させて号泣してしまう。そりゃそうだろう。

コーちゃんが「どうしていっつも八重ちゃんばっかりそんな目に遭わなくちゃいけないのよ!」と言っていたが、ホントにこのドラマはどうして八重ちゃんばっかに不幸エピソードを背負わせてしまうのか……。

自分がそんな状況なのにも関わらず、次の日、別れ際に「あの学生さんにち〜ゃんと言いなね、好きって。それは素敵な、とっても大切なことだから」とコーちゃんを気遣っていた八重ちゃん。

初恋もクソもなく、借金のせいで知らないおっさん(かどうか知らないが)のところに嫁に行かざるを得ないのに、友達の恋を応援するとは、なんちゅういい子なんだ。


そんな八重ちゃんの健気な姿を見て、コーちゃんの方も、もうちょい色々思うところがあってもよさそうなものだが、満面の笑みで「うん!」と答えていた感じからすると……あんまり深いこと考えてないな、こいつ。

両親のキスをガン見する時子


宝塚歌劇団の出版部で働く岩谷時子(木南晴夏)も、長らく心臓の病気を患っていた父親(佐戸井けん太)との別れを迎えた。

「今晩もつかどうか」と医者から言われ、父を真ん中に、母(原日出子)と時子が川の字になって寝ながら静かに死を迎えていく。

最後の最後、「目つむっててくれる。親のキスなんか見たくないでしょう? 大好きよ、さようなら」と亡くなった夫にキスをした母だったが、時子はガン見していた。

普段は気弱で頼りなさそうに見えるが、肝心なところはそつなくバッチリ押さえている、この辺りが時子らしいなと。

父が亡くなり、さびしい2人暮らしとなってしまった岩谷家だが、史実ではこの後、コーちゃんが居候として転がり込んできて、宝塚の仲間たちもしばしば時子の家を訪れていたようだ。

ヅカファンの母子にとってはザ・夢の状況。時子とコーちゃんの絆も、そこで育まれていくのだろうか。

ちょっと失恋したくらいで号泣するんじゃないよ!


八重子、時子のエピソードと比べ、イマイチ盛り上がりに欠けたのが、コーちゃんの失恋エピソードだ。

いつもの喫茶店で初恋の相手・帝大さんと遭遇し、「告白するぞー!」と意気込んでいると、帝大さんの恋人がやって来てズコー!

しかも、その恋人が宝塚ファンで、コーちゃんのファンでもあるということが判明。「アンタに好きになられても……」ズコー!

ツライはツライかも知れないけど、八重ちゃんの不幸エピソードと比べたら「なんじゃそれ」レベルの話。そんなことで大号泣してんじゃないよ、コーちゃん!

しかし、「初舞台の時からファンでしたの」という帝大さんの恋人から握手を求められると、いつものふにゃふにゃしたしゃべりかたとはまったく違う、宝塚の男役感あふれるイケメンボイスで対応。

普段のコーちゃんを見ていると「この人がホントに男役トップスターになるの!?」と不安になってしまうが、この変がキッチリと演じ分け出来ているので、男役として覚醒した越路吹雪にも期待が持てそうだ。


いい加減、宝塚のステージを見せて!


今週の最後には、宝塚の楽屋でいきなり浪曲「森の石松」を歌い出すコーちゃんという、なかなかどーかしているエピソードも放送されていた。

「なんでいきなり浪曲!?」と、かなり唐突な印象を受けたが、この歌声が演出家に気に入られて、宝塚での躍進のきっかけとなるようだ。

このエピソード、史実では、舞台の中で浪曲師・広沢虎造のモノマネを披露するシーンがあり、それが演出家の目にとまったということらしいのだが、どうして楽屋の中での出来事になったのか……やっぱり予算の都合か?

せっかく宝塚歌劇団が舞台なのに、なかなか宝塚のステージが出てこないこのドラマ。

時たま披露される瀧本美織の歌声も素敵なことだし、もうちょいステージのシーンを見せてもらいたいものだが。
(イラストと文/北村ヂン)
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