帯ドラマ劇場・第3弾『越路吹雪物語』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)第2週。

とにかく勉強が嫌いなコーちゃんこと河野美保子(瀧本美織)は、父親(尾美としのり)からの勧めで「勤め先のすっごく偉い人がやっている歌劇団」の音楽学校を受験することに。


もう少し新潟での生活が描かれるのかなと思いきや、第6話でサクッと宝塚編に突入。

前作『トットちゃん!』では、黒柳徹子がNHKの入社試験を受けたのは第34話(全60話なのに!)。……どうりで後半、ダイジェストみたいにやたらバタバタした展開だったわけだ。

『越路吹雪物語』では、肝心の宝塚歌劇団時代、その後のシャンソン歌手時代をじっくりと見せてもらえそうだ。

ちなみに、コーちゃんの父親は東京電燈株式会社のエンジニアをやっていたので、「勤め先のすっごく偉い人」というのは宝塚歌劇団を作った小林一三のこと(当時、東京電燈株式会社の取締役もやっていた)。

小林一三は今の朝ドラ『わろてんか』で高橋一生が演じている伊能栞のモデルとされている人物でもある。


どちらも関西のエンタメ業界を描くドラマということで、今後も何かリンクするようなことがあるのかも?
「越路吹雪物語」第2週。八重子の父親が熊に殺されたというのに、ビフテキの歌を歌ってる場合かコーちゃん
イラスト/北村ヂン

八重子の境遇がド不幸すぎて観ていられない!


華やかなスターへの道を歩みはじめたコーちゃんと対照的に描かれていたのが、新潟での親友・八重子(市川由衣)だ。

高等女学校に進んだのにロクに勉強もせず、しまいにゃ「歌って踊って足を上げる!? たのしみだなー!」と、宝塚音楽学校を受けることにしたコーちゃん。

一方、勉強が好きだったのに、家が貧しいため高等女学校には進めず、畑仕事をして家族を支えている八重子。

この段階でもう、だいぶ胸が痛い!

コーちゃんから「やりたいことやるのがいいよ!」なんて空気読めな過ぎな発言をされた八重子が、父親にダメ元で「進学したい」と頼んでみたところ「大きな仕事が入ったから」とまさかのオッケー。……しかし、その直後に父親が熊に襲われて死んでしまうというド不幸っぷりだ。

片や、コーちゃんは父親の「ビフテキ食べて帰るか」という言葉に浮かれて「ビッフテッキビッフテッキ!」というビフテキの歌を歌っているというのに……。

その後も、せっかく宝塚音楽学校に入学したのに、歌の授業以外には身が入らずにいるコーちゃんと、『カイジ』の地下強制労働施設みたいなところ(秋田の炭問屋)でキツい仕事をさせられている八重子の姿がカットバックで映し出され、つらすぎる格差社会をビシビシ見せつけられた。


天真爛漫過ぎるコーちゃんは確かにかわいいんだけど……さすがに八重子がかわいそ過ぎるよ!

今後、コーちゃんの方はますます華やかな世界へと突き進んで行くわけだが、秋田の炭問屋へ働きに出た八重子がどんな人生を送り、コーちゃんとどう絡んでいくのかが気になる。

「やりたいこと」をやれる人とやれない人


今週は、宝塚時代以降のコーちゃんを支える存在となる、岩谷時子(木南晴夏)との出会いもあった。

今で言う「ヅカオタ」な母親と一緒に劇場に通う中で、宝塚音楽学校を受験しに来たコーちゃんと出会い、その後も観劇のたびにちょいちょい見かけて気になる存在となっていったようだ(劇場の前で巨大なおにぎりを食っている子がいたら、そりゃあ気になる!)。

今週の段階ではほとんど言葉を交わしていなかったが、実際にふたりが出会ったのは、時子が宝塚歌劇団出版部に就職してからのことらしいので、本格的な交流は来週以降にはじまるのだろう。

そんな時子は、身体の弱い父親の代わりに働くため、父親の知り合いから紹介された会社への就職が決まっていたのだが、そこへ宝塚歌劇団の出版部から編集の仕事をしないかという電話がかかってくる。

一度は就職先が決まっているからと断った時子だったが、父親から「やりたいことをやりなさい」と言われ、宝塚歌劇団の出版部へ就職することに。

また出たぞ「やりたいこと」という言葉。


「やりたいこと」をやるために新しい道を進みはじめたコーちゃんと時子。「やりたいこと」を諦めて秋田の炭屋で働く八重子。

おそらく実在のモデルはいないと思われる八重子を、あえて主要キャラとして登場させているのは、コーちゃん、時子との対比を見せようという制作側の意図があるのだと思うが……でもこれ以上、八重子をひどい目に遭わせないで!

来週は「越路吹雪」誕生!


さて、来週はコーちゃんが宝塚歌劇団に入団し、「越路吹雪」という芸名も生まれるようだ。

宝塚音楽学校での、先輩、後輩入り乱れたキャッキャした雰囲気もよかったけど、宝塚歌劇団の表舞台&裏舞台がどんな風に描かれていくのかも楽しみだ。

今のところ、後の男役トップスターの片鱗はほぼ皆無な、ザ・天然といった感じのコーちゃんだが、どんなきっかけで覚醒していくのだろうか?
(イラストと文/北村ヂン)