山本昌から学ぶ「デキる男の“大人の趣味”との付き合い方」

あなたの趣味は何ですか?

就活中の面接、転職先での新しい同僚との挨拶、キャバクラでの探り合いの会話と、大人になるとあらゆるシーンで聞かれるこの質問。映画鑑賞や音楽鑑賞じゃベタすぎるし、スポーツジムも平日夜はなかなか行けないし、旅行というほど最近は出掛けていない。
というわけで、友人は一時期「趣味は風呂掃除です」と答えていたらしい。いや意味不明だ。ガチなのかギャグなのかすら分からない。それくらい、“大人の趣味”の定義は難しい。毎日規則正しく自炊するとか酒を飲むとか毎晩エロ動画を観ていますって、それは趣味じゃなく日常生活の一部だし、なにより社会人になると趣味の為に一定の時間を確保するのが難しくなってくる。いったい大人は己の“仕事と趣味”とどう付き合えばいいのだろうか?

今回、なぜいきなり趣味について書いているかと言うと、元中日ドラゴンズの219勝サウスポー山本昌の新刊『笑顔の習慣34 ~仕事と趣味と僕と野球~』(内外出版社)を読んだからだ。
50歳まで32年間に渡り現役生活を続けた山本昌は、とにかく多趣味で知られている。クワガタのブリーダー、競馬、さらにゲームも好きで以前出演したTV番組では「ドラクエはレベル99まで上げないと気がすまない」なんてクレイジーな発言をして話題となった。高校時代まではプロ野球ファンの1人として、授業中にこっそりドラフト会議のラジオ中継を聴きながら12球団の1・2位指名表を作って楽しんでいた意外な一面も。83年秋、あぁ今年のドラフトも楽しかったなあ……なんつって下校する直前に、自身が中日から5位指名されたことを知ったという。


趣味のラジコンで変わった野球人生


そんな球界きってのマニア気質で凝り性の昌さん(タモさん風に)が最もハマったのがラジコンだ。2年連続最多勝に輝いた翌95年、故障して失意のリハビリ生活を送っていた時、近所を散歩していたらラジコンサーキットを見つけて何気なく立ち寄る。そこで愛好家たちに誘われ、試しにやってみると瞬く間にラジコンの奥深さに魅かれていくのである。
愛好家たちは他に本職の仕事を持ったアマチュアにも関らず、ラジコンノートに詳細な走行データを記録する。その求道者のような姿勢に昌さんは「俺はプロにも関わらず、彼らのラジコンほど野球を追究していないんじゃないのか」と気付かされ愕然とするわけだ。そして、それからはひとつ上のレベルで野球と向き合えるようになったという。
山本昌から学ぶ「デキる男の“大人の趣味”との付き合い方」
画像出典:Amazon.co.jp「山本昌という生き方

趣味のラジコンをきっかけに本職の野球人生を変えた男。一度好きになったらとことん突き詰める性分の昌さんは、2002年には約2000人が参加したラジコンの全日本選手権で4位入賞を果たす。だが現役晩年はラジコンを封印していたため、引退後に久々に復帰した大会では50人中39位と惨敗を喫する(なんと優勝は中学生)。しかし、ここで折れないのが50歳まで現役を続けた山本昌の真骨頂だ。かつてのチームメイト山崎武司とラジコン大会“山山杯”を復活させ、CS放送フジテレビONEでは『山本昌のラジ魂道場』という冠番組まで始まった。中学生に負けたことにより再び火がついたラジコン熱。地元東海テレビでは、こちらも趣味を生かした昆虫採集で子ども達と野外ロケに出かけ、カブトムシとクワガタを捕りまくる姿も話題に。さらに野球解説の合間を縫って、食レポや講演会にも飛び回る日々。


大人の趣味を楽しむために必要なもの


そのいつ何時、誰とでも戦う山本昌イズムあふれる一冊を読みながら、以前自分がトークイベントで共演した元ロッテの里崎智也氏を思い出した。
彼らに共通するのは“とりあえず何でもやってみる”という前向きな姿勢である。野球解説だけではなかなか食べていけないこの時代、元プロ野球選手に必要なのは“プライド”よりも、“好奇心”だ。

そうか、大人の趣味に対してひとつの結論が出た気がする。年齢を重ねるとどうしても「今さらこんなことできねぇよなあ」なんて思いがち。いや格好付けたってしょうがない。筋トレ、ロードバイク、野球観戦とか少しでも興味を持ったらとりあえずなんでもいいから一度やってみた方がいい。昌さんの本にも「初体験をやってみる」という章があるくらいだ。いや下ネタじゃなくて、「なにか面白そうなものを見つけたとき、まずは気楽にやってみてほしい」と。

気軽に始めた趣味で自分の世界が一気に広がる可能性だってある。というわけで、俺もこれから後楽園ホールへ唯一の趣味のプロレスを観に行ってきまーす。
(死亡遊戯)


【プロ野球から学ぶ社会人に役立つ教え】
大人の趣味を楽しむには、“プライド”よりも“好奇心”。
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