「だから高所恐怖症だと言ったのに~うぃ~!」

木村拓哉主演のドラマ『BG~身辺警護人~』。丸腰でクライアントを守る民間警備会社のボディガードたちの物語だ。


先週放送された第3話の視聴率は13.4%。前回よりやや下がっているが、それでも高値安定。さすがキムタクといったところだろうか。
木村拓哉「BG〜身辺警護人〜」はツッコんだら負けだ、脱力エンタメドラマとして楽しむが吉
『Lily ──日々のカケラ ──』石田ゆり子/文藝春秋
今夜放送の第4話はワガママ大臣、石田ゆり子をめぐってキムタクと江口洋介が火花を散らす!

木村拓哉と斎藤工の身長差約8センチコンビ


第3話のクライアントは芸能プロダクションの社長・坂東(西村まさ彦)と彼が所持する1億円。このお金は、誘拐された彼の事務所の人気タレント・かのん(三吉彩花)の身代金だった。坂東は犯人の要求どおり警察に通報せず、民間警備会社に身辺警護を依頼してきたというわけ。

島崎章(木村)は身辺警護課に復帰してきた高梨(斎藤工)とコンビを組み、坂東の警護にあたる。
この木村と斎藤のコンビが良かった。長身の斎藤(184センチ)と並ぶと、木村(176センチ)はいかにも小柄だ。だが、その小柄な感じがキムタクの普通のおっさんっぽさを強調していた。

画面で繰り広げられているのは(今回も)キムタクワンマンショーなのだが、斎藤を横に配置することで“キムタク様”感が減少しているのだ。斎藤演じる高梨は、木村演じる島崎の過去(具体的には描かれていないが、大きな失敗を経験した様子)を知っていて、基本的に島崎のことを軽蔑しているのだが、その緊張感も良かった。なんで1話からもっとこの2人を前に出さなかったんだろう? 斎藤工が忙しかったのだろうか?

ニャンニャン写真でアイドルを脅す男たち


かのんの誘拐は、偽装誘拐だった。主演映画の話もバックレて、地元の不良時代の彼氏・野々村(平埜生成)と一緒に1億円をゲットして逃げようとしていたのだ。


島崎の洞察力(犯人のことを「彼」と呼んでいた)と、かのんファンの身辺警護課の沢口(間宮祥太朗)が、かのんのツイッターの裏アカウントを見ることで偽装誘拐であることの確証を得るのだが、あんなバレバレの裏アカ持ってる芸能人なんていないよ!(「かのんサブ垢」と堂々と書いてある) そして、沢口はどうやって鍵のかかってる裏アカを見ることができたんだろう? 謎だ。

犯人の指示どおり、1億円の受け渡し場所に向かう島崎たち。偽装誘拐だとわかって、坂東は1億円を支払う気を失っていた。かのんの売り込み用プロフィールの紙束を袋に突っ込んで、島崎に渡す。これでかのんを取り返して来いというのだ。苦労人でありつつ、小物感を醸し出す西村まさ彦の演技はさすが。


「BGの任務は社長と1億円を守ることでしょう」

今回もスタンドプレーに走るキムタクだが、今回の理屈は合っていた。クライアントの坂東も1億円も車内にあるので、リーダーの高梨はその側にいなければならない。

一方、かのん側にも変化が生じていた。取引寸前、野々村の仲間のチンピラがかのんに偽装誘拐をする気がないことをバラす。彼らの目的は金だけであり、かのんのことなどどうでもよかったのだ。なんで肝心なときにバラすのよ!? 金を受け取ってからバラして、かのんをリリースすれば良いじゃないのよ!

「あのな、人前で裸見せたような女、本気で愛せるわけねーだろ!」という野々村の言葉は、偶然だが『きみが心に棲みついた』のクズ男、向井理のセリフと一致していた。
どっちもクズだ。結局、野々村たちは今風に言えばリベンジポルノ、昔の言葉で表現するとニャンニャン写真(写真のテイストは完全に後者だった)でかのんを脅す。相手が大手芸能事務所だったら、BGの手を煩わせることなく彼らは抹殺されるだろう。

島崎の武器は「丸腰」と「傷」


取引現場で指輪を投げつけられた島崎はかのんの異変を察知し、いきなり高さ50メートルの橋から飛び降りるというトリッキーすぎるアクション(よく出来たCGだった)で野々村たちをおびき寄せることに成功する。何度見返しても島崎が手錠を柵にかけるタイミングはないと思うのだが、そのあたりは突っ込んだら負けなのだろう。あと、あのキムタクの叫び声の語尾(「に~うぃ~」)も謎だった。

キムタク逮捕術であっという間にチンピラ2人を制圧して、警察に引き渡した島崎。
かのんは坂東のもとに戻り、映画にも出演する気になって一件落着とあいなった。

なお、クランクインの際、木村は脚本の井上由美子に「あなたの武器は“丸腰”と“傷”です」と言われたそうだ。それ以来、木村は台本が届くたびに、1ページ目に「丸腰」と「傷」という言葉を毎回書き入れているのだという。

「丸腰」とは何度も強調されているとおり、島崎たちボディガードは武器を持っていないということだ。では、「傷」とは何かというと、丸腰ゆえに敵にボコボコにされるという物理的な「傷」と、過去の失敗という精神的な「傷」の両方を意味している。過去の失敗という経験こそが島崎の武器だと井上は言っているのだ。
どのような経験だったのかは、今後明らかになっていくだろう。「丸腰」と「傷」が現在のキムタクを現す状況を示しているような気がするのはうがちすぎだろうか?

第3話の謎シーン


第3話まで進んで、だんだん画面にキムタクが馴染んできたような気がする。細かいところに突っ込みながら、小柄(でもないのだが)な中年男が頑張る様子を肩の力を抜いて楽しむエンタメドラマになってきた。

ただし、かのんが縛られている様子を撮影した後、ナイフで脅されるというシーンがあるのだが、あれはおかしい。あの時点では偽装誘拐だったわけだから写真は和気あいあいと撮られているはずなので、ナイフで脅されるという行為そのものがない(遊びでやったとしても、かのんのおびえ具合は本気だった)。誰かの妄想が映像化されて視聴者に提示されているのだが、あまり質の良いミスリードとはいえない。ドラマのルール違反だ。

さて、今後はキムタクと彼の過去のことを知っている斎藤工、そして警視庁SPの江口洋介との確執をどう盛り上げていくかに注目したいが、シリーズ化を狙っているのだとしたら、決定的な対立はせず、モヤモヤしたまま進んでいくのかもしれない。今夜放送の第4話はワガママ大臣、石田ゆり子をめぐってキムタクと江口洋介が火花を散らす! 夜9時から。
(大山くまお)

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