第21週「ちっちゃな恋の物語」第121回 2月24日(土)放送より。
脚本:吉田智子 演出:東山充裕

121話はこんな話
栞(高橋一生)マーチン・ショウを正式にやれることになったり、リリコ(広瀬アリス)とシロー(松尾諭)がつきあうことになったりと上向くことがある一方で、隼也(成田凌)とつばき(水上京香)はまだ想いを吹っ切れないようで・・・。
マーチン・ショウの代わりに藤吉登場
「『わろてんか』の恋のゆくえ、それとマーチン・ショウ そろそろいい加減に見たいなあって感じなんですけど どうでしょうか」という「おはよう日本」関東版の高瀬耕造アナの願いも虚しく、マーチン・ショウはまだ見ることができない。
おおかたの視聴者はたぶん、ナレーションで「成功した」と言われて見ることはないと思っている。
代わって、土曜日の定番になったのは、藤吉(松坂桃李)の幽霊である。なんというか画期的な。視聴率は順調に20%台だが、土曜日だけたいてい19%台に落ちるので、松坂桃李ドーピングという狙いか、はたまた、幽霊のセミレギュラーという受け入れがたい人もいそうな実験を土曜日にやってみているのか。
いずれにしても、松坂桃李は、“幽霊”というつかみどころのない役割が気楽なのか、とてもいい存在感を醸している。
2月24日に松坂桃李はツイッターで「無事アップしました」と報告。ということは、幽霊藤吉はけっこう最後のほうまで楽しませてくれそうだ。
一方、息子は・・・
椿のペンダントを「いろいろ助けてもらったお礼」と強がりを言うところや、「面白いショウやレビューを作ってください」とつばきに励まされて「はい」とだけ返事するところ、その間、終始、上を向いて、涙がこぼれないようにして、最後に両手で目の涙を払う仕草など、隼也役の成田凌はなかなか“見せる”。
恋のゆくえ リリコ、シロー編
成田凌の情感あふれる悲恋シーンのあとは、リリコとシローのおもろい恋。
「君と僕との間に思いもよらん出来事が起こったらどう思う?」「お粥さんだけやのうて ごはん炊いてもらうとか・・・」とか「ぼくにみそし(る)・・・み・・・み・・・」とか要領を得ないことを言うシローに「ええで あんたと恋仲になったっても」ときっぱり。凛々しいわあ、リリコ。ベテランにもかかわらず、発声練習が初々しいのはご愛嬌だ。本来、ベテランのおばさん女優が熟練の発声練習しているところは、脅威ですから。
「ええ〜っ」とシローが大喜びで、盛り上がる音楽は残って、場面が切りかわり、栞と風太(濱田岳)が事務所に駆け込んでくるので、まさか「リリコとシローがつきあうことになった!」と報告するのかと思ったら、マーチン・ショウの話だった。
身勝手な親になるしかあらへん
隼也はかわいそうだけれど、取引銀行の頭取の娘の結婚を邪魔できないと、てん(葵わかな)は、あくまで隼也とつばきを引き離す考えだ。でも、自分が過去、親の反対を押し切って藤吉と駆け落ちしたことを棚にあげていることは重々承知。藤吉の幽霊も、今更、てんの父や母の気持ちがわかる と言い出す。
てんと藤吉は、あとになって、自分たちのしたことを反省しているのであった。
「身勝手な親」といえば、栞に「僕たちはパートナー」「マーチン・ショウにとんでもない投資をした運命共同体だ」と言われ、てんがまんざらではない感じであること。夫の幽霊と夜な夜な(土曜日だけだが)会話しているにもかかわらず、栞ともなんとなくいい感じのてんはやっぱり少し身勝手かも。
あと、朝ごはんの汁物が、関西風に白味噌仕立てのお味噌汁というよりは、京風白味噌お雑煮に見えたのだけれど、身勝手だけど朝ごはんにお雑煮つくりましたみたいなことだったのか。それとも隼也の好物か。
何気ない日常描写が、同じ日本でも白味噌に慣れない地域だと違和感を覚えるという、誰もに等しく伝わることの難しさであり、面白さ(やりがい)だとも感じた。
ものづくりには、たとえ身勝手と言われても、おもねらず、貫くしかないことがある。
(木俣冬)