連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第21週「ちっちゃな恋の物語」第119回 2月23日(金)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:東山充裕
「わろてんか」120話「マーチン・ショウ、そろそろいい加減見たいなあって感じなんですけど」と高瀬アナ
イラスト/まつもとりえこ

120話はこんな話


隼也(成田凌)の恋の相手・つばき(水上京香)は、北村笑店の取引銀行のお嬢さんだった。もうすぐ嫁ぐ予定のある彼女に横恋慕するとは、会社の経営に差し障ると風太(濱田岳)は猛反対。


高瀬耕造アナに期待


「おはよう日本」関東版の高瀬耕造アナの朝ドラ前の朝ドラ推しが、絶好調だ。
「『わろてんか』の恋のゆくえ、それとマーチン・ショウ そろそろいい加減に見たいなあって感じなんですけど どうでしょうか」と視聴者の気持ちを端的に代弁してくれた。
かつて、朝ドラの昼の再放送のあとのニュースを担当していたとき、朝ドラから切り替わった瞬間の表情が豊かで、視聴者が勝手に「今日は微笑んでいた」などと想像して共感していたこともあった。
朝ドラ受けを伝統芸のようにした「あさイチ」の有働由美子とイノッチが卒業してしまういま、朝ドラを応援するのは高瀬耕造アナしかいない。
これからも期待しています。

「なんでふたりしてずぶ濡れなんや」


風太は、隼也を家につれていき、融資を止められたら大変なんだと説教する。
「中から鍵かけても意味ないやんか! 恥ずかしな」
「修行中の身で何してんねん」
「なんでふたりしてずぶ濡れなんや」
「結婚なんかするもんちゃうで」
「(トキにプロポーズのときのことを蒸し返されて)俺の顔立ててくれ」
などと順調に、空回りキャラを演じる濱田岳。

トキは「昔の藤吉とてんのようだ」となつかしむが、てんの生まれ育った薬種問屋よりも、いまや北村笑店はずいぶん巨大な企業になっていて、芸人、社員の人数も多い。
融資を止められたら、大変なことになると風太は頭を抱えるのだった。

最初で最後の晩餐


隼也とつばきの道ならぬ恋に、風太がガミガミ怒っている頃、
てんは飄々と「お腹すかへん?」と言い出す。
「緊張したらお腹すいた」と、夕飯を作り出し、つばきも手伝う。

隼也が風太の家から戻ってきて、三人で晩御飯(卵焼き、焼き魚、きんぴらごぼう、ご飯、味噌汁。卵焼きの黄色がだし巻きのやわらかな黄色をしていた)。

「笑顔はうそつかへん」
「おいしいもん食べると自然とほっぺたがゆるむもんや」
「悲しいことやいやなことあっても おなかいっぱい食べてわろたら また元気出て来る」
と、てんが良い台詞を連打した。
この台詞は、その前に、隼也が風太の家で、トキにおまんじゅうをご馳走になって、ニコニコしていた表情ともつながっている。

ご飯作ったり、ご飯食べたりして、ニコニコしている三人は、自然な表情でほっこりした。

どうやら、深窓のご令嬢のつばきは、母と子で料理とか家族団らんとかの経験がないようで、はじめての喜びに浸る。
その晩、縁側で隼也と月を見て、隼也につばきのネックレスをもらう。
こんなにいい思いを味わったら、簡単には別れられないであろう。

若く見えるお母さんのリアル


隼也、つばき、てん。この3人、実年齢では、てん役の葵わかなが最年少。

成田凌は93年生まれ。水上京香は95年生まれ。葵わかなは98年生まれだ。
葵わかなが小柄なので、よけいに一番可愛らしく見えるという、なんとも不思議な感じではあるが、こういう小さくていつまでも老けないお母ちゃんは実際にもいる。
先日、てんと同じ京都に生まれ育った、現在45歳で3人の子どものお母さんでもある、ギャラリーの経営者の方にお会いする機会があった。その方は、おしゃれで、しわひとつない肌をして、黒目がくりくりして可愛らしかった。
京都のひとを表すときよく使われる「はんなり」は、「落ちついたはなやかさ」「上品な明るさ」という意味で、まさにそんな言動をする方で、葵わかなの雰囲気はそれに近いものを感じる。
まだ十代にもかかわらず、これだけ落ち着いた口調をキープできる葵の精神力はたいしたもの。
成田凌のくだけた喋り方や態度こそ、若さである。
水上京香が119話で浴衣を着たが、浴衣と着物の違いはあるとはいえ、てんの襟足の美しさとは段違いで、そこに風格の違い(役の話です)が滲む。
葵わかなはうなじが凛として、清潔感がある。
俳優もがんばっているし、スタッフも工夫していると思う。
あと一ヶ月、最終回まで駆け抜けてほしい。
(木俣冬)