斎藤工、間宮祥太朗らの旬の若手俳優を脇に配し、山口智子、萩原聖人らの90年代組、矢沢永吉らの豪華ゲスト陣を次々と投入する物量作戦が功を奏したようにも見えるが、成功の理由は後半にかけての巧みなストーリー展開にもあったと思う。
スタンドプレー期とチームプレイ形成期
『BG』最終回は、村田(上川隆也)の死をめぐり、大臣を辞職した立原愛子(石田ゆり子)が島崎(木村拓哉)の手を借りて与党幹部の不祥事を暴露するというもの。現実でも政権中枢と官僚組織がかかわる公文書の改竄が話題になっており、かなりタイムリーなストーリーとなった。
『BG』全体を振り返ってみると、すでに木俣冬さんが指摘しているが(dmenu映画「木村拓哉のドラマ「BG」好調! その理由を解く鍵は“チームプレイ”!?」)、このドラマは大きく前半と後半に分けられる。
第1話から第6話までの前半はキムタクのスタンドプレー期。ワンマンショー期と言ってもいいかもしれない。事件は木村演じる島崎がほぼ一人で解決しており、他の身辺警護課のメンバーは非常に影が薄く、対立する警視庁SPの江口洋介、大臣の石田ゆり子(新刊も好調)もひたすら無能だった。ここまでは1話完結で描かれている。

後半は元妻の山口智子が登場した第7話から最終回の第9話まで。銃撃事件をめぐる一連のエピソードは、チームプレー形成期と言っていいだろう。上川隆也演じる課長の村田が命を落とすことによって、身辺警護課のメンバーたちがお互いの距離をグッと縮める展開となった。
その中で、前半は対立していた島崎と斎藤工演じる高梨のバディ感が醸成され、間宮祥太朗演じる若手メンバー・沢口のボディガードとしての自覚、菜々緒演じる女性メンバー・菅沼の素の感情も見られるようになってきた。身辺警護課にチーム感が出てくるのだ。
「目をつぶってボールを蹴ってみるといいよ。自分が何もできないってわかったら、肩の力が抜けるから」
最終回で島崎は河野純也(満島真之介)の言葉を思い出す。これは純也が語ったサッカーのコツなのだが、同時にスタンドプレーで事件を解決してきた島崎がチームプレーに転換するための言葉にもなっている。実際、マスコミに取り囲まれた島崎たちは、沢口たちに指示を与えて村田の息子・庸一(堀家一路)を逃がすことに成功する。
島崎がケガをした後の民事党大会の警護は、まさに身辺警護課の総力を結集したチームプレーだ。島崎は高梨を信頼し、BGを任せる。「誤差なし」の決め台詞の際は、村田の不在を強く感じさせる演出がなされており、村田の死が身辺警護課の結束を強固なものにしたことがよくわかる。
身辺警護課とSMAP
脚本の井上由美子による、島崎章に木村拓哉をオーバーラップさせるようなセリフも冴えていた。
第5話の「人に夢を与えてきた人間は、どんなことがあっても逃げちゃいけないと思うんです」、第7話の「地位も権力も武器もない我々が、唯一持っていたものを奪われたんです!」などがそうだ。最終回には、こんなセリフがあった。
「謝るのは、本当に心から頭を下げられるときだけでいいんです」
2017年1月、『SMAP×SMAP』の生放送でSMAPの5人が「公開謝罪」を行ったことがあるが、井上から木村へのメッセージのような気がしたのは穿ち過ぎだろうか? その後、SMAPは解散し、木村は一人になった。
こうして見ると、『BG』というドラマはSMAPというチームを失った木村拓哉が新しいチームを取り戻す物語だったということができるんじゃないだろうか? どっちも5人だし。
『BG』のラスト、身辺警護課に新人の新川(健太郎)が加入。これでチームは再び5人となった。高視聴率だったことで、きっと続編が考えられているだろう。よりチーム感を強く押し出した『BG』に会える機会もそう遠くはないはずだ。
(大山くまお)
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