原作は、直木賞作家・山本文緒の同名小説。
初回放送を約1週間後に控え、出演者によるトークショーがおこなわれた。登壇したのは、中谷美紀、玉木宏、高橋メアリージュン、藤本敏史(FUJIWARA)、ユースケ・サンタマリア、木村多江。

中谷「結婚願望がさらになくなっていきそうです」
まずは、出演者たちが演じていての感想をコメントしてくれた。
中谷美紀が演じる佐藤真弓は、結婚13年目の専業主婦。家事は苦手でおおざっぱ、良く言えばおおらかな女性。夫を愛しているけれど、長年の生活で小さな不満が溜まっていて、顔を見るとつい小言を言ってしまう。娘の中学入学を機に職場復帰にチャレンジする。
中谷 朝から賞味期限の切れた納豆を食べてきた中谷美紀です。真弓と同じように、3日や4日なら大丈夫かなと思って食べてしまいます。私は“行かず後家”と言われて久しいのですが、この作品で真弓という役を演じれば演じるほど、結婚願望がさらになくなっていきそうです。どうぞよろしくお願いいたします。

玉木宏は、真弓の夫で住宅販売会社の営業マン・秀明を演じる。几帳面で真面目な性格で、おおざっぱな真弓の行動に不満が溜まっている。真弓が職場復帰したことで夫婦のすれ違いが大きくなっているときに出会った良妻賢母・綾子(木村多江)に惹かれていってしまう。
玉木 僕が演じる秀明は妻以外の女性に惹かれているので、能動的になってしまうと本当に悪い男になってしまいます。なので、「生活に疲れてたまたま落とし穴に落ちてしまったのだ」という匙加減に気をつけながら演じております。人間の色々な側面、色んな顔を見られるドラマですので、そこを楽しみに見ていただければと思います。

高橋メアリージュンは、秀明とともに働く住宅販売会社の後輩・森永桃を演じる。そして、秀明と桃の上司・竹田邦男役は、連ドラ初出演のFUJIWARA藤本敏史だ。
高橋 森永桃は秀明に憧れる小悪魔的女子ですが、私自身は人生でさりげないボディータッチすらしたことがありません。なので、小悪魔の振る舞いを研究しながら、高橋メアリージュンの私生活にも生かせるようにしたいです。

藤本 ちょっと、いきなりなんですけど、今日僕要ります!? このそうそうたるメンバーに、僕要らないでしょう。そないに主要キャストでもないですし、俺だけめっちゃ顔デカいし、並ぶのが恥ずかしいんですよ。
ユースケ だから呼んだのよ、顔デカいから。みんなが小っちゃく見えるでしょ。
藤本 小顔効果がありますね、ありがとうございます(笑)。僕は各話ワンポイントしか出ていないんですけれども、お笑い芸人なので、みなさんがクスっと笑えたらいいなあと、そんな演技をしています。よろしくお願いします。

ユースケ・サンタマリアは「男は外で働くもの、女は男を支えるもの」という時代錯誤な家族観の持ち主・茄子田太郎を演じる。家を建て替えるため妻の綾子とともに住宅展示場に行き、秀明と出会う。所かまわず堂々とモラルハラスメントやセクシャルハラスメントをおこなう、絵に描いたような「嫌な夫」だ。
ユースケ この茄子田太郎という男は、最初にプロットにも書かれていましたが、男の嫌な部分を全て持った人です。でも「嫌だなあ」っていう“やだみ”の中にね、キュートさをちょっとだけ混ぜ込むっていうことを目指していて。難しくてまだできていませんが……。人間にはたくさんの面がありますから、太郎だって最後までただ単に嫌なやつなのか、どういう風に違う面が出てくるのかってことに注目してほしいと思います。
藤本 そんなサスペンスドラマじゃないですよ!
ユースケ 主題歌のSuperflyも怒るわな、そんなのは。
藤本 Superflyは怒らないと思います、別に。

最後に、太郎の妻であり秀明に運命を感じてしまう専業主婦・綾子を演じる木村多江がコメントした。綾子は、太郎、息子の慎吾、太郎の両親と同居している。家族にひたすら従順で、太郎のモラハラに遭っていても「自分は幸せだ」と納得していた。秀明に出会うことで、自分の中の孤独に気づいてしまう。
木村 私は従順な役柄で、みなさんも「またちょっと幸薄い系だな」と思いながらご覧になったんじゃないかと思います(笑)。でも、ここからだんだんと変化を起こしていきます。どうなるか楽しみに見ていただければと。現場では、ユースケさんの冗談を「また言っているなあ」とずっと聞いています。
藤本 つらいですね。
ユースケ 慣れてるから。
木村 そう、慣れてる。楽しくやらせていただいております。

トークイベント中、座ろうとして「椅子が熱い! ファントムペインだ!」と叫び観客を驚かせたり、「ブラックペアン、よろしくね!」「アンナチュラル2、お楽しみに!」「みんな! エスパーだよ!」と他のドラマのタイトルを叫んだりしていたユースケ。自由なユースケにすかさず藤本がツッコみ、それを聞いて木村が声を立てず控えめに笑っている様子が微笑ましかった。
雑さ、逃げたさ、無知さ、弱さ。人のマイナス面を大切にする
本ドラマの制作にあたり、製作スタッフは100人以上の女性に「オンナの本音」をリサーチ。1話では、その「夫婦あるある」エピソードを盛り込んだと思われれる中谷と玉木の掛け合いシーンに笑ってしまった。夫婦関係に悩む人が共感できる台詞もかなり多い。
出演者たちは、自分の役柄や「夫婦あるある」に共感するところはあったのだろうか。
中谷 綾子はおせち料理もすべて手作りするような「理想の主婦」。真弓は、冷凍ブロッコリーをチンするような主婦。
中谷は、本人が「変顔みたいな感じですみません」というほど、喜怒哀楽の表情豊かな主婦を演じている。いつも感情を隠しニコニコしている綾子と気持ちに素直な真弓、どちらにも魅力的な部分がある。
玉木 秀明と綾子の恋は、誰でも落ちてしまいそうなことでもあり、そういう意味では共感できます。秀明はのびのびできる場所がすごく少ないけれど、綾子さんは好きな映画の話も根掘り葉掘り広げて聞いてくれる。だから、彼にとってすごく居心地のいい、のびのびできる場所なんだなっていう。彼のそういう気持ちを大切にしたいですね。

モラルハラッサーを演じるユースケは、役に対して考えることが多かったようだ。
ユースケ さすがに太郎ほどの人はいないでしょ、と思うけど、ああいう気質の人はいますよね。1話はインパクトも大事なので、お芝居として「キツく言ったろう」と盛って演技しました。
客観的な太郎像から、さらに彼の精神的な強さと弱さについても言及した。
ユースケ 彼は「妻は自分のことを愛している」「家族も俺を頼りにしている」「自分はまっとうなことを言っている」と信じ込んでいる。そういう人間って、変な言い方だけどやっぱり一番強いし、まあ傍から見たら怖い。彼はすごい幸せなんですよね、嫌われているけど気付いてないから。いま高圧的に発言している分、「一生平安だ」と思っていた自分の生活が崩れたときの太郎がどうなってしまうのか。俺はたぶん、殺人鬼に変貌すると思うね。
藤本 いいですよもう、殺人は!

木村は、夫以外の男性に傾いていってしまう綾子について、少し冷静な見方をしている。
木村 綾子は「完璧」に見える女性ですが、心にものすごく孤独を抱えていて。いまが幸せと思い込もうとしているけれど、秀明が出てくることによって「この人なら違う場所に連れていってくれるんじゃないか」と思うようになります。でも、もしかしたら秀明じゃなくても、何か違うものでもすがれるものがあったら行っちゃうんだろうなっていう危うさを持っている女性ですね。
綾子は秀明に運命を感じるが、演じる木村は「秀明じゃなくても、すがれるものがあれば行ってしまう人」と分析している。ドラマでも、事故のように2人の恋が始まってしまう。不倫をする人のきっかけは、その相手の魅力ではなくただのタイミングなのかもしれない。
演者たちがそれぞれの役柄の弱さに共感したり、弱さを大切にしようとしたりしてることが印象的だった。大人の弱さへの憐れみとも受容とも感じるような目線が、演技にどう生かされていくのか注目したい。
目指せ『金妻』、切ないブラックコメディ
最後に、主演の中谷が代表して観客と視聴者にメッセージを送ってくれた。
中谷 1話をご覧いただいて、おそらく、秀明と綾子のなまめかしいお姿にきっとドキドキされたのではないでしょうか。この2人の道ならぬ恋の行方をぜひ楽しみにご覧いただきたいです。それにともなって、秀明と真弓、そして綾子と太郎の夫婦関係がどのようにひび割れていくのか楽しみにご覧いただきたいと思います。切ないお話ではありますが、ブラックコメディなので、きっと笑って最後までご覧いただけると思うので、ぜひ楽しみにご覧ください。どうぞよろしくお願いいたします!

世の中の妻たちの間に共感と興奮を巻き起こし、ドラマ『金曜日の妻たちへ』や『昼顔』のような社会現象となることができるか。試写で第1話を拝見したが、そのポテンシャルが十分ある作品だと感じた。
『あなたには帰る家がある』、初回は15分拡大で放送予定だ。
(むらたえりか)
2018年4月13日(金)よる10時スタート
金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS系列)
原作:山本文緒『あなたには帰る家がある』(角川文庫)
脚本:大島里美
プロデューサー:高成麻畝子、大高さえ子
演出:平野俊一、吉田健、松田礼人
編成:高橋正尚
音楽:兼松衆
主題歌:Superfly「Fall」(ワーナーミュージック・ジャパン)