第3週「恋したい!」第14回4月17日(火)放送より。
脚本:北川悦吏子 演出:田中健二

律の回想で「助けてください」の場面がパロディ化されたこの作品。
小説から、映画、テレビドラマ、舞台、漫画・・・とさまざまな展開された巨弾ヒットであった。
「半分、青い。」との共通点は、80年代の地方都市を舞台にしていること。
ドラマ版は堤幸彦演出。北川悦吏子とは、「イロドリヒムラ」の1話「小さな恋の物語」~非モテ男子のささやかな恋 ^^,~」で脚本×演出のタッグを組んだ。
14話はこんな話
バブルまっさかりの1989年(平成元年)、平和な岐阜・梟町に、土地開発の手が伸びて来て・・・。
閑話休題
13話のレビューでも褒めまくったように、見どころ満載で、快調に飛ばしてきた「半分、青い。」であったが、14話にして、ちょっと休憩という印象。
成長編になったらいきなりぐだぐだ・・・なんてことにならないことを祈る。
13話の終わりの、鈴愛(永野芽郁)と晴(松雪泰子)それぞれの恋のはじまりかと思わせた振りは、想像どおり、あっさりとオチがついた。
律(佐藤健)に耳が「かわいい」と言われ、え? となったが、鈴愛は律がそんな「しゃれたことを言うわけがない」と見抜いていた。
食堂の客・トオル(鈴木伸之)に「きれい」と言われてときめいた晴は、「ご主人は?」→「おります」「子供もいます」→「いえ、ご主人ご在宅ではないかと」と無残に夢を散らす。
トオルの目的は、近隣の土地開発(テーマパーク建設)だった。
涅槃の苦しみ
律の「かわいい」発言は、ブッチャー(矢本悠馬)のパクリだったことが判明。あれだ、13話の「キュート」だ。
そこから話はブッチャーと律の関係を改めて考える方向に舵をきる。
「親友だよ いっそ きっと 唯一の」
「親友なのに 好きな子も打ち明けてもらってないのか」
「大丈夫だ 律にはフランソワが」「みなまで言うな」
とか、こういう台詞群が面白い。
そして、話はいったん、優秀な律が、ふつうのレベルの高校にいることへの回答に。
受験に向かう途中、轢かれた犬を助けたことで、試験に間に合わなかったという悲劇が、風吹ジュンのナレーションで語られた。
「涅槃を見た彼は社会性を身に着けまわりとの調和を尊ぶようになりました」(ナレーション)
ここまでの課程がすべてモノクロ写真で解説される。
写真で紹介されることは、律のお父さん・弥一(谷原章介)が写真館を営んでいることとつながっているので、唐突感は若干解消された。弥一が撮った、鈴愛、律、ブッチャー、菜生(奈緒)の写真がすてき。
それぞれの道
ブッチャーは、小学校のときから想いをよせていた、まな(静麻波 25代トリンプ・イメージガール NEWSポストセブンの記事によると、歯科衛生師として働きながらモデル活動中らしい)を追って、バドミントン部に。でも失恋。
菜生は弓道部に入るも、センスなし。
鈴愛は美術部で、マイペースに、鯨のうえに小人が乗った絵を描いている(のんの描いた鯨の絵をどうしても思い出してしまうんだが・・・)。
それぞれの進路を描きつつ、それがうまく絡み合って、ひとつの筋になっていくのは、さすが巧い。
しかも、「世界の中心で、愛をさけぶ」や「時をかける少女」など、いろいろな映画やドラマのオマージュやら、律とブッチャーの甘酸っぱい(?)友情も散りばめて。
律、鈴愛、ブッチャーがなおの試合を見に行き、そこで律は試合に出ていた他校の少女・伊藤清(古畑星夏)と視線が合う。
ふたりの視線の軌跡に鈴愛は気づいてしまう。
清の矢が放たれみごとに的を射て、律の心は清に釘(矢)付けに・・・。
「3秒以上みつめあうと恋になる」と、「ごごナマ」では美保純が再放送受け。
こういう豊かな「ベタファー」をいろんなドラマからアーカイブしていきたい。
たとえば、古沢良太の月9「デート〜恋とはどんなものかしら〜」で「生殖能力」についての会話をしながら、主人公がピザに食らいつき「濃厚で美味しいです」と言うとか、井上由美子の「昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜」で、ヒロインが対岸の火事(不倫なんて他人事と思ってたヒロインがそののち不倫にハマってしまうことを暗示)を見ているとか、ですね。
サンバにはいやな予感しかしない
萩尾写真館に、ボディコンミニを着た瞳(佐藤江梨子)がやってくる。
「官能的な匂いを振りまいている」とナレーション。
そのときちらっと、ほんのちらっと目線が下にいく谷原章介の表情がナイス。田中健二演出は、繊細な目線に気を配っているように感じる。
こうして楡野家、萩尾家、各々に、あやしい話が舞い込んだ。
近くにテーマパークをつくるためのビジネスのお誘い。テーマパークは「ぎふサンバランド」。
……いやな予感。
なぜなら、低視聴率に喘いだ過去の朝ドラ「つばさ」(07年)は、突然、サンバダンサーが出てきて踊り狂う場面が不評の一端を担ったと言われているからだ。
サンバに罪はないが、なぜか朝ドラでは、胡散臭い存在と化してしまう。
(木俣冬)