連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第4週「夢見たい!」第24回4月28日(土)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:土井祥平

24話はこんな話


秋風羽織(豊川悦司)が行う名古屋でのトークショーを、鈴愛(永野芽郁)と律(佐藤健)は連れ立って見に行く。
秋風は、鈴愛が差し入れた五平餅を「真実の食べ物だ」と気に入って・・・。


あの素晴らしい愛をもう一度


岐阜の東美濃梟町に生まれ育った楡野鈴愛は、幼い頃、左耳を失聴し、生活に不便を感じることもあるものの、持ち前の明るさで気分を切り替え過ごしながら高校3年の秋を迎えた。
就職も農協に決まり、オーダーメイドの制服も作り、実家のつくし食堂で祝の会を開いてもらう。
「半分、青い。」24話「なぜ君が名乗るんだ?」「なんとなく」
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2004年公開の、60年代の京都を舞台にした日本人と在日コリアンの青春ラブストーリー。監督は井筒和幸。脚本は、監督と朝ドラ「マッサン」の羽原大介の共同執筆になっている。エンディングは「あの素晴らしい愛をもう一度」。ヒロインは「別に」(24話で、秋風も言ってた)でお馴染みの沢尻エリカ。

祖父・仙吉(中村雅俊)が昔取った杵柄と、鈴愛が生まれた71年のヒット曲「あの素晴らしい愛をもう一度」のギター弾き語りを行う。最近の朝ドラは、土曜日に、何かイベント的なことがある。
幼い頃の回想シーンも挿入されて、鈴愛の目の涙が。彼女の旅立ちのときが静かに近づいてきていることを描く。

仙吉のコーラス隊として歌ってる律と目があう鈴愛。
会が終わったあと、鈴愛が律に「忘れんなよ 京都に行っても」と声をかけると、「赤とんぼの歌を〜♪」と歌で返す律。
「なんで歌う」のあとはばさっと次のシーン(羽織のトークショー)に切り替わるが、なんだか余韻の残る良い場面だった。

農協への就職は仙吉のコネで決まったものだったが、それを鈴愛には秘密にしている家族たち。
余計なコンプレックスを抱かせないようにしているのだ。
幼い頃、鈴愛が、学校で自分のなまえをからかわれたとき、命名者である母・晴(松雪泰子)を傷つけないように気を使っていたことも同じ。お互い思い合っている、いい家族だ。


「じいちゃんの旧制中学校のギター部の後輩が西村さんやなかったら農協なんか受からん」と宇太郎(滝藤賢一)が珍しく説明台詞を言っているなあと思ったが、ここは、楡野家の思いやりのように、「見ざる言わざる聞かざる」でスルーしたい(と言いつつ書いていますが)。
「半分、青い。」24話「なぜ君が名乗るんだ?」「なんとなく」
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「あの素晴らしい愛をもう一度」がエンディングに流れるなか、主人公の少女たち(そのうちのひとりは、朝ドラ「花子とアン」の蓮子さま役・仲間由紀恵であった)が渋谷川の浅瀬をざぶざぶと歩く姿が印象的。1998年に公開された庵野秀明監督作。原作は村上春樹ではなく村上龍。

秋風羽織、顔出し


岐阜の鈴愛の世界をちょっと広げてくれたのが、東京で生まれた漫画。
遠く大都会・東京で生きる漫画家・秋風羽織が、ふいに鈴愛の近くに現れた。
これまで、その存在をミステリアスにしていた秋風が、読者とじかにふれあいたくなって、全国でトークショーをすることにする。そのひとつに名古屋があった。
新聞記事でその情報を知った、羽織ファンの和子(原田知世)はさっそく応募する。
「けっこういってる(年齢のことだろう)よね これ でもハンサム」
はじめて見た、羽織の顔写真に、意外と冷静な反応する和子だった。

鈴愛の反応も冷静。「おっさんやん」。
トークショー参加券は、律に手渡され、就職祝いとして律は鈴愛を誘って出かける。
実物の羽織を見た鈴愛は「かっこいい おとうちゃんとは違う」とうっとり。

トークショーの羽織は、司会(元フジテレビアナウンサー加藤綾子)の質問にけんもほろろ。傍若無人な発言でみなを煙に巻き、「あのキャラクター 損はあっても得はないかと」と編集者を困惑させるが、
マネージャーの菱本若菜(井川遥)は「(ファンに直接会ってみたくなったのよ)生きてるうちに」と、なんだか意味深な台詞をぶっコンでくる。
ドラマや映画によくある、余命わずか設定か? 単なる釣り餌か? 

なぜ君が名乗るんだ?


差し入れの五平餅が気に入った羽織は、若菜に鈴愛を連れてくるよう頼む。
羽織の控室に通された鈴愛。楽屋には律もついてくる。

羽織「なぜ君が名乗るんだ?」
律「なんとなく」
漫画になりそうな場面だ。

いよいよ5週は、鈴愛が東京に行くターン。漫画家生活、楽しみだ。
(木俣冬)
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