「ちょっと1年~!」と先輩の口調ものまねをする中学生の娘と一緒になって、「それヤバくない!?」とゲラゲラ笑ってくれるママ。めっちゃ良い女じゃん、大切にしたい。


5月3日(金)放送の、金曜ドラマあなたには帰る家がある(TBS系列)。
きっと浮気された妻の多くが通る「私が悪かったのでは」という疑念や自責。第4話、サレ妻である真弓(中谷美紀)が不倫の原因と自分の責任に悩み、1つの答えを叩き出した。
「あなたには帰る家がある」中谷美紀「浮気されたほうにも原因があるわけないだろ!」不倫サレ妻決意の咆哮
イラスト/Morimori no moRi

見る者の迷いを断ち切る中谷美紀の咆哮


3話で、綾子(木村多江)との不倫を真弓に指摘された秀明(玉木宏)。一瞬「雨降って地固まる」と楽観視したが、真弓の表情で簡単に許されることではないと知る。
真弓の願望を叶えようとしたり、ほぼ丸投げしていた家事を担当したり。秀明は、妻の顔色をうかがいながら信用を取り戻そうとする。

さらに真弓を安心させるため、秀明は茄子田家の担当を外れることにした。それが綾子の気に障り、綾子は揚げたてのメンチカツを真弓の職場に差し入れる。
どう考えても100%嫌がらせ。真弓が茄子田家を訪れ、綾子に一言言ってやりたくなっても仕方ない。

真弓「私、夫を許せるかどうかわかりません。でも、夫と別れるつもりはありません」

見上げた根性である。
言うことない、100点! と思いきや、綾子が言葉尻をとらえて反論してくる。

綾子「そもそも、許すとか許さないとか、あなたは誰かを許せるような人間なの? 人に赦しを与えられるようなご立派な人間なの?」

真弓が茄子田(ユースケ・サンタマリア)に「もっと妻の気持ちをわかれ」と愚痴を言っていたことまで持ち出す綾子。「あなたはどうなの。夫の気持ちをわかっているって言えるの?」と責める。屁理屈である。
さらには「かわいそう、秀明さんかわいそう」と、悲劇のヒロインよろしく嘆く。

真弓は、綾子以外の人にも似たようなことを言われていた。
茄子田には「浮気なんてお互い様。要は、浮気されるほうにも原因があるってこと」と叱られる。会社の同期で上司の由紀(笛木優子)には、家庭では愛や癒しがもらえないから外でもらおうとしているだけだと不倫を肯定される。

聞いていると、人それぞれ多様な価値観があるね~、というふわっとした気持ちになってくる。じゃあ不倫も仕方ないか、と考え始めてしまいそうになる。

しかし、真弓は屈しなかった。

真弓「浮気されたほうにも、原因が、あるわけないだろっ!!!」

事情があれば不倫も仕方ない、と思いそうになっていた我々の迷いを吹っ飛ばし断ち切る真弓の咆哮。家庭内コミュニケーションの問題と不倫をするか否かの問題は別なのだ。ハッとした。

真弓「うちの夫、言ってました。私と麗奈がいなくなるなんて耐えられないって。夫は私を選んだんです。二度とうちの家族に近づかないで!」

もう他の誰の言葉でもない、秀明の言葉だけを信じて突き進んでいる。許せるかわからない相手をも、好きだと認めて信じる。それが結婚であり家族。真弓の大きな目からこぼれた涙は、信じた道を行こうと奮い立つ真弓の意思が溢れたものに見えた。

後半戦で描かれる茄子田家の異常性


それにしても、サレ妻(=不倫・浮気を“され”た妻)のその後がリアルだった。

ストレスが原因の急性胃炎で倒れた真弓。そんな大げさなと思うかもしれないけれど、筆者も以前、パートナーの浮気がわかってから胃が痛くなり連日吐いていたことがある。

いろいろな人の意見を聞き、自分を責めたり悩んだりする期間があったうえで「やはり浮気はする人が悪い」と思えるようになる。別れるにせよ続けるにせよ、まずは「私は私を傷付けた相手をまだ好きなのだ」と認めないと始まらないというつらさもよくわかる。
たった1話の間に、ここまで自分や秀明と向き合った真弓はえらい。えらすぎる。

不倫ドラマというものは、ここまで来たらほぼクライマックスだ。あとは、真弓と秀明が夫婦としてどんな形に収まっていくか描けば良いだけ。
ところが、そうはさせないのが茄子田夫妻。まだ4話なのである。前クールの『アンナチュラル』と同じく全10話だとしたら、まだ6話もある! 後半戦で何を描くのかというと、それは茄子田家の問題だろう。

真弓が寝込んでいるときは、秀明はミルク粥をつくり、麗奈は心配していた。
後輩や母親も見守ってくれている。
一方、綾子が寝込んでいると、姑が「良いご身分よねえ」と嫌味を言う。舅は我関せず。息子の慎吾(萩原利久)は少し気にかけていたようだが、心配とまではいかない。
真弓と秀明の家庭が絆を取り戻せば取り戻すほど、茄子田家の冷たさや異常さがより鮮明に炙り出されていく構図になってきた。

いつも食べやすいようほぐしてあった弁当の鮭が、切り身そのままで入っていた。茄子田も、自分が綾子にないがしろにされつつあることに気付く。綾子が、その日使うはずのないピクニック用のバスケットを出し入れしていたことも不審がっていた。
綾子の裏切りに、茄子田の心も少しずつ傷付いているはずだ。彼も真弓のように、自分の傷付いた心を認めることができるだろうか。負けを認めれば、どうにかハッピーエンドに近づけると思うのだけど。

第5話は、今夜10時から放送予定。


(むらたえりか)

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金曜ドラマあなたには帰る家がある(TBS系列)
原作:山本文緒『あなたには帰る家がある』(角川文庫)
脚本:大島里美
プロデューサー:高成麻畝子、大高さえ子
演出:平野俊一、吉田健、松田礼人
編成:高橋正尚
音楽:兼松衆
主題歌:Superfly「Fall」(ワーナーミュージック・ジャパン)
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