
そういえば、大山はずっとおせっかいだった
三枝が事実を知ったのは、2018年だ。大山の父親に遺体発見を報告した際、大山の部屋である居酒屋の名刺を発見した。
1999年、兄・亮太(神尾楓珠)を亡くし、世間の眼から避けるために、三枝少年は親戚の家に預けられていた。しかし、その家でも豊かな暮らしは出来ず、「夕食はなにか買いなさい」という手紙に貼り付けられた500円玉をぼーっと見つめる健人少年。1000円ではなく、500円なのが、絶妙に悲しい。
食べるものに困った三枝少年は、ある居酒屋に入り、オムライスを注文する。子どもが1人で来ていることを女将(濱田マリ)は不審がるが、三枝少年を不憫に思った大山(北村一輝)がそこに助け舟を出した。三枝少年にはバレないよう女将に手間賃を渡し、オムライスを作るよう頼んだ。これ以降、三枝少年はたびたびこの店に訪れてはオムライスを食べ、大山はこれを見守った。
思えば、連続殺人事件(3〜5話)の被害者・北野みどり(佐久間由衣)も、後に誘拐事件を起こしてしまう工藤(平田満)もそうだった。大山は、事件によって生まれた不幸な人間を、いつも支えてきた。ギャーギャー叫んで事件に立ち向かう熱血刑事のもう一つの顔は、こういう無骨なおせっかい者なのだ。
ちなみに、三枝がオムライス好きになった理由は、GYAO!で配信中のチェインストーリー7.5話で見ることが出来る。
あの交信を紐解く
異常な老けメイクを施された女将(濱田マリ)に全てを聞かされた三枝は、大山に無線機で交信を試みる。
三枝「俺は、あなたには幸せでいてほしいんです。あなたが大切な人と一緒にいる方が、事件を解決することよりも、大事なことだと思います」
「あなたには」の「には」に、全ての思いが詰め込まれている。事件に関わった人間や、強いては自分をないがしろにしてまで、大山の幸せを強く願う三枝の気持ちが明確に示されている。そして「あなたが大切な人」の部分には、三枝の桜井(吉瀬美智子)への思いも含まれているように見える。
大山と桜井が深い関係にあったのかどうかは、三枝は知らない。しかし、大山の白骨遺体を見つけたときの反応で、三枝は桜井の気持ちを理解知ったのだろう。「あなたが大切な人と一緒にいる方が」という言葉には、「大山が大切な人と一緒にいて欲しい」の他に、「桜井が大山と一緒にいて欲しい」という思いがあったことが透けて見える。
いつも事件についての交信をしているだけに、大山からすれば三枝の急な言動は驚くべきもののはずだ。しかし、それでも大山は真っ向から思いを返す。
大山「俺も、三枝警部補の幸せを願っています。貧しくても、家族でひとつ屋根の下で暮らす。温かい食卓を囲む、家族で食事をする。
おそらく大山は、自分が少年時代の三枝をサポートしていたことを、三枝が知ったと気づいたのではないだろうか? だから、「貧しくても」「寂しさとは無縁の暮らし」といった三枝少年を思わせる言葉を使ったのだ。あえて接触していたことには触れずに、お互いがお互いへの思いを伝えるシーンとなった。大山はもちろん、三枝もなかなかに無骨で不器用な男だ。
それを受け三枝は、2000年に大山が死ぬこと、それが武蔵野事件に関わっていたことが原因だということを、大山に伝える。しかしそれでも大山は、三枝少年に寂しい思いをさせ、三枝の兄・亮太をえん罪で亡くした武蔵野事件の解決を諦めなかった。
最終回は、亮太が全てを握りそう
武蔵野事件の被害者である井口奈々(過去・山田愛奈 現・映美くらら)に会いに行った三枝は、そこで亮太の無実、さらには他殺の線があることを知る。メンタルがグッチャグチャになった三枝だったが、桜井の前で大山と無線機で交信、全てをさらけ出し、事件解決に挑む。関係ないが、今話の三枝は力が入りまくったシーンしかなかった。なので坂口健太郎の首筋には、ずっと太くて青い血管が浮いていた。女性が見ればさぞかしセクシーだったんだろうなぁと思う。
今夜放送の最終話は、亮太の死の真相が明かされそう。中本(渡部篤郎)、野沢(西岡徳馬)ら悪党の結末も気になる。
(沢野奈津夫)
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